第13話: 「王都での決断」
ドラゴンとの激闘から数日後、俺たちは王都に帰還した。戦いで疲れ果てた身体を癒やす間もなく、王城へ向かい、今回の事件の報告をすることになった。
大広間に通された俺たちは、玉座に座る国王と重臣たちを前に立っていた。王の威厳ある視線が俺に向けられる。
「勇者よ、見事ドラゴンを討ち果たしたと聞いた。その勇姿に国民一同感謝している。しかし、事件の背景には謎が多い。何が起きたのか、詳しく話してくれ」
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俺は一呼吸置いてから、廃村での出来事をありのままに話した。魔法陣の存在、黒装束の男、そしてドラゴンの襲撃。しかし、剣聖の力については言及を避けた。
「黒装束の者が操っていたというのか……? 奴らの目的は何なのだ?」
国王が険しい表情で問う。俺は曖昧に答えた。
「奴らの真意はまだ掴めていません。ただ、異世界の力に何らかの執着があるように感じます」
その答えに、王の隣に座る宰相が不満げに眉をひそめた。
「勇者様。あなたの言葉だけでは証拠が不十分です。廃村や魔法陣について、具体的な調査結果を示さねば信憑性に欠けます。これが真実であれば、国の存亡に関わる問題です」
俺はその言葉に言い返そうとしたが、エリスが一歩前に出て助け舟を出してくれた。
「宰相殿、廃村には間違いなく強力な魔法陣がありました。証拠を固めるため、再度現地調査を行うべきだと考えます」
宰相は少し黙り込み、やがて渋々頷いた。
「ならば、調査隊を編成しよう。それまで勇者様は、王都で待機するように」
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王都での休息
その日の会議が終わり、俺は久々に自由な時間を得た。王都の宿屋に滞在することになり、少しだけ肩の力を抜けるようになったが、心の中にはモヤモヤが残っていた。
(ドラゴンを倒したとはいえ、根本的な問題は何一つ解決していない。黒装束の奴らの狙いが、俺自身に向けられている可能性だってあるんだ)
エリスや騎士たちがそれぞれの任務に散った後、俺は一人で王都を歩くことにした。
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出会い
夕暮れ時、王都の市場を歩いていると、不意に誰かが俺の腕を掴んだ。振り返ると、そこにはフードを深く被った少女が立っていた。
「……あんた、勇者でしょ?」
その声は幼いが、不思議と力強さを感じる。俺は一瞬警戒したが、周囲に危険な気配はない。
「ああ、そうだが……君は誰だ?」
「名前なんてどうでもいい。あたしが知りたいのは、あんたがどこまで本気でこの世界を救うつもりかってことだけ」
唐突な質問に、俺は面食らった。
「どういう意味だ? 俺はこの世界を救うために呼ばれたが、それが俺の意思とは限らない」
少女は溜息をつき、フードを外した。その下には、白銀の髪と鋭い赤い瞳を持つ異質な美しさがあった。
「やっぱり、覚悟が足りないね。だけど、そんなあんたでも重要な役割を果たすかもしれないから、教えておいてあげる」
「教える?」
「あたしの名前はルナ。この国に伝わる『滅びの予言』、それが今まさに現実になりつつある。あんたがどう動くかで、この世界が滅ぶかどうかが決まるんだよ」
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滅びの予言
ルナが語った予言はこうだ。
「この世界が闇に覆われし時、異世界より勇者が現れ、運命を選ぶ。剣か、逃避か。その選択により、世界の行方が決まる」
その予言の内容は、俺がここに召喚された状況と一致しているように思えた。
「それで、俺が何を選べばいいっていうんだ?」
「それはあんた次第。でも、黒装束の奴らがやろうとしていることを放置すれば、確実にこの世界は終わるよ」
ルナの言葉には、確信めいたものがあった。
「ちょっと待てよ。それなら、そいつらを止める方法を教えてくれよ」
「簡単に教えられるほど甘い話じゃない。だけど、一つだけヒントをあげる。『東の聖域』に向かうこと。それが次の鍵だよ」
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次の目的地
ルナが姿を消した後、俺はその場で立ち尽くしていた。
(東の聖域か……。また厄介ごとが増えたな)
だが、この世界の滅びを防ぐためには進むしかない。俺は覚悟を決め、王都を出発する準備を整え始めた。




