未来滅亡計画
行かない。ケイはそう言ったのだ。
「なんでだよ。未来を救ってヒーローになれるんだぞ。」
「そうさ、それに未来がどんな世界か気になるだろ?」
二人はそうケイを問い詰める。
「よく考えてみろ。ゼロとかいうやつにほとんどが支配されている未来だぞ。しかもそいつは破壊の限りを尽くして未来を滅亡させようとしてるやべー奴だ。そんなところに行ったら命の保障はない。それに、なぜ子供である俺達に接触したんだ。もっと武力を持った大人に頼むべきじゃないのか。マスターがずっと味方でいるという保証はないだろ。あまりにも怪しい。」
ケイのその言葉を聞いた二人は未来旅行などというチープな夢からはとりあえず目が覚めたようだった。
「そういう訳だからさ、他の大人とかを頼ってよ。僕ら子供にどうにかできる話じゃないんだ。」
と、なんだか機嫌が少し悪そうなマスターにケイはそう言ってお引き取り願おうとした。
しかし、マスターはこう言った。
「まあ・・・、君たちが、いやケイくんがそういう決断をすることはわかっていたし、サムくんにジャックくんがそれに賛同するところまで知っていたが。しかし敢えて言おう。君たちがこの誘いを断った世界の未来では、ゼロは未来を完全に滅ぼしたのちに過去へと侵攻を開始し、この時代までやってくることが確定している。」
「なんでそんなことが断言できるっていうんだ。」
そうケイは反論する。マスターはそれに対してあまりに冷たい声で、
「すべて見てきたからだ。」
そう言った。
「これまで私はあらゆる時代のあらゆる人間に協力を求め、ゼロの未来滅亡計画を阻止しようと戦った。しかし、それらは全て失敗に終わった。なぜそれで世界が無事かというと、私には特殊能力があってな。ある座標を始点として設定すると、どのような失敗をしてもその座標を破壊されない限り、その座標からやり直すことができるのだ。そうして数千兆回以上もやり直したが、何度やっても未来滅亡を止められなかった。」
「なあ、さっきから言ってるその未来滅亡計画っていったい何なんだ?」
ジャックの疑問にマスターが答える。
「ゼロが成し遂げようとしている未来滅亡計画、それは未来世界の人類を全滅させた後、未来世界に残る人類が存在した証拠が産まれる原因となる時代をすべて消滅させることだ。ゼロは3000年後の未来に人類がその痕跡も含めて一切存在しないという事実を作り上げ、人間以外の生物が分相応に慎ましく暮らす楽園を作ろうとしているのだ。」
「ゼロはなぜそこまで人間を憎むんだ?」
サムが問う。
「わからない。だが、どうやら奴は人間という種族が傲慢すぎると考えたようなのだ。自分たちが神の使徒であるかのごとく振舞っている、と奴がまだ未来滅亡計画を実行する前に語っていた。」
マスターの話を聞けば聞くほどに、どうもゼロとかいうやつの野望を阻止するのは、自分たち小学生のやることにしてはスケールがでかすぎるように思えた。だが、そんなスケールのでかい派手なこと、無謀とも思えるようなことに挑戦するのが大好きなやつを一人、ケイは知っていた。
「なんて勝手なやつだ。そんなやつ絶対に止めなきゃなんねえよ。ケイとサムがビビってるなら俺一人でだって止めてやる。マスター、連れて行ってくれよ。未来の世界へ。」
そう、ジャックだ。いつもこうやって突っ走るところがある。
しかし、いつものジャックとは少し違った。いつもならケイとサムに拒否権はないと言わんばかりに巻き込んでくるのだ。おかげでよく大変な目に合う。なのに今回は自分一人でもやると言っている。ジャックなりの気遣いというやつだろうか。だが、そんなジャックはどうも調子が狂う。
同じようなことを思ったのか、サムが
「おいなんだよジャック。一人で行って何ができるってんだよ。これまでも三人で色々な面倒ごとを乗り越えて来ただろ。そこはいつもみたく無理やり連れていくんじゃねーのかよ。」
とジャックを笑った。
「そうだぞ。一人でも行くさ、とかカッコつけちゃって。らしくねーぞ。」
ケイもサムに乗っかってジャックを笑う。
「お前ら好き放題言いやがって。ああそうかよ。じゃあついて来いよ。俺と一緒に未来まで!」
ジャックがそう叫んだのを聞いて、マスターは微笑んだ。
「決まりだな。」
するとトカゲサイズだった卵型宇宙船が、みるみる人間が何人も入るようなサイズまで大きくなった。
「すげえ!どうなってんだこれ!こんなのゲームでも見ないよ。」
未来技術のロマンはガキ三人組の心をがっちりと掴んだのだ。
「これが時空間航行装置。いわゆるタイムマシンだ。これに乗って三千年後の未来までひとっ飛びさ。トカゲ基準だと一時間だが人間換算だと数分だな。すべてに決着をつけても君たちの夜ご飯には間に合うさ。」マスターはタイムマシンについてそう説明してくれた。
「ゼロ!お前の野望は俺達が阻止する!出発だ!」




