つまらないプライドはゴミ箱に捨てよ!
今週も“月曜真っ黒シリーズ”の前倒し??(^^;)
この季節にピッタリ?な暑いお話です。
半袖の腕からボツボツと吹き出る汗を吸って手に持っているスーツはくたびれている。
強い日差しに焼け付くアスファルトの照り返しと顔に纏わりついた熱風が、吹き出す汗に拍車を掛け、ペシャンコな前髪が“危うい広さ”の額にもずくの様に張り付く。
カバンにパンパンに詰め込まれた『用品カタログ』さえ減らす事ができずに役所を出た。
時刻は午後3時過ぎ……停留所の時刻表を見ると、バスが来るまでに30分以上もある。
最低でもあと1軒は回らなければ、今日も“年下の係長”からどやされる……
そう!!
係長のデスク前に起立して、書いた日報を読み上げさせられ
「ふざけるなこのグズ!!無能者!!タダ飯食い!!」と……
ホワイトカラーのサラリーマンになりたくて『E級私立大学』の経営学部を卒業し、経理畑でひっそりと20代を過ごした。
ところが、三十路を迎えた昨年末に…身に覚えの無い“不正会計”の濡れ衣を着せられ、その結果、この春の人事で……戻れる当ての無い子会社出向を命じられた。
子会社の経理は……古株のお局様一人で充分だったので、栄えある????営業部へ“抜擢”。
その当日から『ノルマ達成・成約件数グラフ』の端っこに“名前を書かれた短冊”を貼り付けられ、OJTの名目でどっさりのカタログと共に独りで放り出された。
移動は専ら徒歩か、バス・電車の“お役所回り”
商品の現物さえろくに見た事がなく、移動中の電車内でカタログを読み込んだ。
こんなふざけた奴から物を買う程、世の中は甘くない。
当然の事ながら成約数は未だにゼロ。会社に帰れば係長の怒号と同僚の嘲笑は収まる事が無い。
バス停を離れ駅に向かって歩きながら……彼はこんな事を思い返していた。
ため息が出る。
次の訪問先……
行きたくない。
会社……
帰りたくない
歩を進める毎に視線は下がり、目は足元の割れたアスファルトから伸び出た痩せた雑草へと流れて行く。
チリリン!と風鈴みたいな音がして顔を上げると、錆びの浮き出たコーラの看板を掲げた食料品店があった。
引き戸を開け、中から出てきた子供の手にはアイスキャンディーが握られていて、否が応でもこちらの“渇き”を刺激する。
店の中からは貼り付いた“お線香”の匂いもして来たのだけどアイスへの“欲求”が勝り、“重いカバン”は道端に置きっぱなしで中へ入り“スイカバー”をゲットした。
縁石に腰を下ろし、“細長い二等辺三角形”の先端から齧りつく。
今が盛りと思われる暑さにスイカバーもドンドン溶け緩み、頭痛と闘いながら齧る速さでは追いつかず、緑の層の半分が木の棒から剝がれて地面にボトリ!と落ちた。
シャワシャワシャワシャワ
暑さに黙り込んでいたセミが不意に鳴き始める。
また、誰かが出入りしたのかドア鈴がチリリン!と鳴る。
「チョコ種も食べたし……ま、いいか」
虚しく木の棒を舐りながら独り言ちる。
現実がまた
目の前に押し寄せて来る。
きっと次の訪問先でも……
けんもほろろに断られるのだろう。
会社に帰れば……
「大学まで出て全く使い物にならないロクデナシ!!」と
年下の係長からなじられる。
そう言えば……係長のところは美人の奥さんに一姫二太郎……
オレは彼女居ない歴=年齢
大学時代に借りた奨学金の返済はあと13年も残っている。
それに引きかえ……係長は二十歳そこそこで結婚して子供もできて……しっかり“社会人”している。
まるでオレは……しがみ付いていた“レール”からボトリ!と落ちて、みっともなく潰れた、このアイスの残骸の様だ……
指の間から“木のレール”も地面に落ちて……
これ以上の道草は許されず
“男”は早々に立ち去った。
後に残されたスイカバーの残骸は
少しばかりのアリの慰みになったのかもしれない。
心の中のジリジリした感じが書き表せていれば良いのですが……
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