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魔法の訓練1

【魔法の訓練1】


「なあ、ボス。魔法ってどうやったら使えるんだ?」


「そうだよ。俺もボスみたいに鳥を魔法で狩ってみたいぜ」


 子どもたちは、というか私も外見は子供なんだけど、

 私へのボス呼びは直してくれない。

 最近はあきらめている。


「わかんない。シスターに聞いてみようか」


 …………


「魔法はまず文字を覚えることから始まります」


「えー、俺たちいつも勉強させられてるじゃん」


 シスターは一冊の本を取り出した。


「この本を読んでみなさい」


「……なんだこれ。知らない単語ばっかりじゃねえか」


「それは古代語です。文字そのものはだいたい同じだけど、単語がまるで違うの。しかも、文章がものすごく難しいわけ」


「読めると魔法がつかえるということ?」


「そうですよ。そのために、みんな魔法高等学院にいくのよ」


「じゃあ、ボス…エミリが魔法を使えるのは凄いんだ」


「そう。学院に行く前に魔法が使える子なんて滅多にいません。しかも4属性魔法が使えるなんて、軽くパニックよ。だから、みんな、エミリの才能は内緒ですよ?」


「なんでだよ。自慢できていいじゃん」


「どっかのお金持ちとかがやってきてエミリを連れて行っちゃうのよ。エミリいないと、美味しいご飯、食べられなくなるわよ」


「あー、そりゃ困る」


「エミリ来てから魚が増えたしパンも美味しくなったもんな」


「でもさ、魔法高等学院って入学や学費にお金かかるんでしょ?」


「ええ。だから、ほんの一部しか行けないわけ」


「いかなくても勉強できる?」


「勿論よ!でも大変ですよ?」


「俺、勉強する」


「私も」


 ということで、孤児院魔法学習室ができた。

 講師はシスターと私。



「勉強の前にさ。エミリ、この難しい本よめるってことだよな?」


 私に差し出された魔法書。

 

「うん。初めて見たけど、難しくないよ」


「えー、なんでだよ。どこで勉強したんだよ」


「みんな、これが才能なのよ。たまに、生まれつき古代語と魔法を習得している子が生まれるっていうわ。それがエミリというわけね」


 多分マルチリンガルっていうチート能力のおかげだろう。

 読めなくても魔法は使えるっぽいけど。


「不公平だなー」


「羨んだりしないの。ほとんどの人は一生懸命勉強して覚えるんだから」


「学院に通ってる人も?」


「そうよ。大抵は小さい頃から家庭教師つけられて勉強漬けよ」


「ゲロゲロ」


「わかったら、一番簡単な火魔法ファイアー読んでみよっか。エミリ、お願いね」


 火魔法ファイア、通称チャッカマン。

 チャッカマンは私がそう呼んでるだけだけど。

 

「○%×$☆♭#▲!※……」


「ギャハハ、何言ってるんだよ、訳わかんなすぎる」


「□&○%$■☆♭*!:」


「アチチ!髪の毛が燃える!」


「ちゃんと真面目にやんないと、お仕置きよ」


「意味不明すぎる。どういう意味?」


「闇夜を照らす猛る炎よ、出でよ。って言ってるのよ」


「おー、かっこいいぞ」


「闇夜を照らす猛る炎よ、出でよ」


「出てこねーな」


「だから、私のいったとおりに発音してみて。単語ごとに区切るから。いい?」


「よしこい!」


「まずは闇夜を。○%×」


「○%×」


「私の発音をまねて。発音がおかしいと発動しないよ」


「まかせろ!」


 ということで、1時間ほど発音練習を続けた。



「ハー、ハー、めっちゃ疲れた。シスター、金持ち連中はこんなことを小さい時からやってるわけ?」


「そうよ。しかも1時間じゃないわね。1日中やってる子もいるわ」


「ウゲー」


「どうする?やめる?」


「シスター、馬鹿言うなよ」


「じゃあ夕ご飯食べたら自習よ。誰が一番最初に魔法を発動するか。でも、根気よくやらなきゃだめよ」


「根気よくって、どのくらい?」


「とびきり才能のある子だと一ヶ月かそこらよ」


「うへー」


「数年かかることもざらですよ」


「ギャー」


「だから言ったでしょ。並大抵の努力じゃないのよ」



 根気なんて続かないだろう、ということで、

 生活の様々な場面で魔法の呪文を唱えることにした。


 例えば、手を洗うときに水魔法の呪文を唱えたり。

 扉を開けるときに風魔法の呪文を唱えたり。

 狩りをするときに火魔法を唱えたり。


 遊んでるときもできる限り魔法を使えるような

 遊びを考案した。


 そんなこんなで一ヶ月。



「うわっ。水が飛び出た!」


 いつものように食事前に祈りの言葉を

 水魔法で唱えていると、

 最年少のマノンの指から水が吹き出した。


「おお、すげーじゃねえか」


 マノンは最年少ということもあり(推定6歳)、

 とても大人しい娘である。

 ただ、魔法の詠唱にはとても熱心で、

 暇さえあれば呪文を唱えていた。


「皆さん、見ましたか。マノンは誰よりも魔法の練習に熱心でした。訓練は裏切りません。他のみんなも続きましょう!」


「おお、やるぞー」


「次は俺だ!」



 子どもたちは俄然やる気を出し、

 さらに一ヶ月後には全員が何らかの魔法を

 発動させた。


「みなさん、とっても素晴らしいわ」


「俺たち、才能ある?」


「ありまくりですよ。一人二人ならともかく、これだけ大勢が一斉に魔法が使えるようになるなんて」


「俺たちも天才?」


「そうよ。とっても優秀。正直に言うけど、今までだって魔法を教えようとしたことはあったのよ。でも、魔法が発現したことなんて一度もなかった。子供たちもすぐに飽きちゃったし」


「ひょっとして、エミリのお陰?」


「そうかも。エミリは魔法の発音がすごくいいわ。それに、エミリが教えるとなぜだが私でも楽しくなってくるのよね」



 後年わかることだが、

 子どもたちがこれほど早期に魔法を発現させたのは

 決して不思議でもなんでもない。


 私には他者に自分の才能を伝達させる能力が

 備わっていた。

 現時点で言えば、私と接しているものは、

 魔法・格闘技・身体能力が少しずつ向上していくのである。


 勿論、なんらかの訓練が必要ではあるが、

 その訓練さえも楽しい気分にさせるのであった。



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