イケメンの料理指導
【イケメンの料理指導】
砂糖を大量にゲットした直後から、
イケメン・バーナの怒涛のスィーツ攻撃が
始まった。
アイスクリーム
チョコレートアイス
チョコレートケーキ
ホットチョコレート
チーズケーキ
フルーツタルト……
「どう?しばらく砂糖のストックがなかったから、スィーツ関係はあんまり用意できなかったんだけど」
「なんていうか、まるでパティシエね」
「パティシエ?」
「ああ、古代語でお菓子職人のこと」
「古代語か。やっぱりエミリは物知りなんだね」
「ねえ、バーナ。ちょっとお願いがあるんだけど」
「うん、なんだい?」
「私さ、ちゃん料理を作ってみたい」
私のメシマズ状態をバーナに説明してみた。
「ふーん、つまり、料理にこだわりがありすぎるのかな?」
「わかんないけど、そうかも」
前にも少し説明したことがあるのだが、再掲する。
【私のメシマズ】
私はレシピ通りに料理を作れない。
強い決心をもってレシピ遵守を誓う。
ところが、いざ料理に向かうとレシピを壊したくなる。
病気か何かかと思って、先生に見てもらったことがある。
診断は。
■愛情が深すぎる
つまり、美味しい料理を食べてもらうために、
手間暇をかけて料理したい、という感情が強すぎる。
だから、
やりすぎる
焼きすぎる、煮すぎる……
■強迫観念
学校でこう習う。
しっかり火を通しましょう。
そうじゃないと、細菌・寄生虫などの侵入を許してしまう。
⇒料理に火を通しすぎて炭化する。
情報番組で
焦げたものはガンの原因となる
⇒料理が半生。
■貧乏性1
もったいないから、余り物を混ぜてしまう。
これが高じるとアレンジャーとなる。
⇒闇鍋。
■貧乏性2
金をかけたくない。
⇒節約しすぎる
これらの要素が複雑に入り組んだ形で
私の料理に反映されるという。
出来上がった料理は私も食べられない。
「うーん、君の話を聞くと思い込みが強すぎるのかな」
「やりすぎちゃうのは確か」
「思いやりが深いのはいいことだと思う。でも、自分を基準にしすぎなのかな」
「そう?」
「例えばさ、君は目玉焼きはソース?醤油?塩?ケチャップ?」
「絶対ソース」
「僕はケチャップなんだけど」
「おかしい」
「やっぱり、その辺から治していく必要があるかもね」
「どういうこと?」
「味覚は人それぞれなんだよ」
「言ってることはわかる」
「目玉焼きにはいろいろな調味料を好む人がいる。それを自分の中に落とし込むこと」
「うーん」
「それができたら、次は分量だよね。塩だけでも薄口・濃い口ってのがある。人によって随分と差異があるんだけど、それを把握することは大事」
「そんなこと考えたこともなかった」
「じゃあさ、テスターを10人ほど呼んで好みの味を調べてみようよ」
◇
「えー、エミリの料理を食べるって?」
「そんな、地雷じゃん」
「おれ、死にたくない」
「あ、オレ、バッちゃまに言われてるんだ。今日は早く帰れって」
「いいから」
私のその一言で孤児10人が食堂に集められた。
みんな涙目なのがおかしい。
「今日は、君たちの味覚を調べます。眼の前のスープ。そこには塩が入れられていません。少しずつ塩を足していって、自分のベストの味加減になったら申告してください。ああ、ちゃんと塩の分量は計るように」
「エミリは、それぞれのベストのスープを飲み比べてご覧よ」
「うん……結構、みんな違うんだね」
「じゃあさ、そのスープと同じ味のを作ってご覧よ。そのとき、相手の顔を思い出しながら作ること。基準は相手だよ」
「わかった……相手の顔を思い出しながら……わっ、冷静に味加減ができた!」
「うまく行ったみたいだね。じゃあ、その練習を毎日やってみようか。ポイントは相手に合わせること」
この訓練は私には新たな視点を作ってくれた。
相手の好みに合わせること。
言われると当たり前だと言われそうだけど、
私は今までそんなことさえ頭になかった。
ただ単に、美味しいものを作る。
それだけに囚われすぎていた。
これって、料理だけじゃないよね。
いろいろなことで私は思い込みが強すぎたり、
独りよがりしているってことだ。
これは、すごく反省。
【バーナは公共物】
「エミリ、バーナさんは公共物ですよ!」
教会のスタッフに言われた。
「ちょっと、雰囲気が怪しすぎ」
「そうですよ。最近、二人っきりでいることが多いし」
「呼び方も、エミリ、バーナだし」
「えー、だって私にさん付けする人いる?」
「エミリはともかく、バーナ【さん】でしょ。それにバーナさんが呼び捨てで呼ぶのはエミリだけ」
「あなた達もバーナにそう言ったら?普通に喋ってくれって」
「ムリ」
「できるわけないでしょ!」
「何言ってるのよ。だいたい、どうみたって彼と私じゃ釣り合わない。こんなチンチクリンとじゃ」
「あー、エミリって自己評価低すぎ」
「あなた、いわゆる美形というよりも、いい意味で個性的なのよ」
「そう。人によってはエキゾチックって言われているのに」
私は黒目黒髪の細い目。
まぶたは腫れぼったいし。
ていうか、この世界の人、
堀が深くて、お目々ぱっちりな人多いし。
「エキゾティック?褒め言葉に聞こえないんだけど」
「エミリの切れ長の目に色気を感じる人多いですよ」
「え、そうなの?でも、やっぱり、微妙な評価のような気がする」
前世で私達には評価のあれなアジア人女性を
白人が嬉しそうに連れていることがある。
まさか、その線?
「とにかく、バーナさんは、公共物!」
「そういえば、バーナの友達連れてくるかも、って言ってたよ」
「嘘」
「イケメン?」
「わかんないけど、バーナは自分のこと、地元では普通の容姿だって言ってたから」
「えー、楽しみすぎる!」




