香水と砂糖の木2
【香水と砂糖の木2】
「星空がキレイね」
「そうだね」
「なんだか、吸い込まれそう」
「どうかな。月に向かって散歩してみる?」
「何言ってるの?」
「ムーンウォーキング」
「いや、横文字にしようが内容は同じ」
「僕、飛行魔法が使えるんだ。君を誘って夜空を飛び回れるんだよ」
「は、ひょっとしてそれがあなたの必殺口説き文句?」
「いや、僕の国では女性へのサービスの一環。冷暖完備」
「サービスの一環?あなたの国ではお姫様みたいな女性が多いのね。でも、お生憎様。私も飛行魔法使えるわ」
「え、この国で飛行魔法使える人、はじめて見た」
「そういうわけで誰か他の人を誘って頂戴。ああ、私の付近で女性をなかした場合は承知しないわよ」
「怖いんだね」
「私は、いい加減な恋愛する人、嫌いなの」
「いや、僕はいつだって女性には真摯な態度で接しているのに」
「いつもきゃあきゃあ言われているくせに。嬉しいんでしょ?」
「嬉しくないって言えば嘘になるけど、だとしても、僕は女性には最大の配慮を持って接しているよ」
うわっ。
そんな恥ずかしい言葉を照れもせず。
大物か大馬鹿かナルシストか。
でも、イケメンという以外に欠点がないのよね。
この人って。
こんもりと有益なことを教えてくれるし。
料理、上手だし。
ああ、私の気持ちが緩んでいる。
前ほど警戒心がなくなってるわ。
いけない。イケメンには注意よ。
「空飛べるんならさ、砂糖がちょっと遠くにあるんだけど」
「砂糖?このへんにあるの?」
「砂糖の木っていうのがあって。森の奥だけどね」
「行く!」
「待って。ちょっと危険なところなんだ。ワイバーンが屯してる」
「危険?」
「僕が結界をはるから問題ないよ。でも、1時間以上はかかるよ。それでも、行く?」
「絶対に行く!」
砂糖、と聞いたら行くっきゃない。
◇
というわけで飛行魔法で1時間ほど。
確かに、ワイバーンが空を飛んでいる。
夜なのに。
「エミリは魔力量も凄いね。1時間の飛行魔法に耐えられるなんて」
「半日ぐらいなら大丈夫」
「おお。僕より魔力量がありそうだ」
「ワイバーン、見えてきたんだけど」
「ここからは、僕が結界を張るから。大丈夫。気づかれないよ」
「向かってきたら?」
「無駄な殺生は避けたいし、そもそもここいらはワイバーンの縄張り。僕たちは侵入者だからね。逃げるさ」
なんだか、人格者って感じ。
拳を握りしめた私が恥ずかしい。
神様には拳なんていらないっ、て言ってたのに、
私、すぐに手が出ちゃう。
前世ではもっと優しい性格だったのに。
反省。
ワイバーンを横目で見ながら下に降りてみると、
砂糖の木が群生していた。
砂糖の木には赤い実がなっていた。
「食べてご覧よ」
「うわっ、すっごい甘い!」
「甘いだけじゃなくて、栄養分が豊富で僕の地元では生命の実とも呼ばれているんだよ」
「そう言われれば、豊穣な味がする」
「ワイバーンの主食なんだよ」
「彼らは肉食って聞いたけど」
「肉食っていうか、砂糖の木だけは特別みたいだ」
ふーん。と頷きつつ、私は赤い実採取に夢中だった。
「エミリ、取りすぎないようにね。まあ、すぐに新しい実が生えてくるけど」
「そうなんだ」
「1年中、実がなっているよ。季節ごとに生えてくる感じ」
夢のような木だ。




