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アジャン聖教会孤児院

【アジャン聖教会孤児院】


 シスターは私を教会の裏の建物に連れて行った。


「ここがあなたのお家よ。お友達がたくさんいるわ」


 そこは孤児院だった。

 建物に入ると、

 ざっと20人ぐらいの子どもたちが私をチラリと見て、

 興味なさそうに顔を背けた。


「はい、みなさん。この子はエミリ。新しいお友達よ。仲良くしてあげてね。エミリ、わからないことはみんなに聞いてね」


 シスターは簡単に私を紹介すると、教会へ戻っていった。


 紹介はしてくれたのだけれど、ポツンと部屋に残されて

 何していいかわからない。



「よー、新入り」


 私よりも少し背の高い男の子が

 ニタニタしながら私に近づいてきた。


「俺はここのボス・ジャンだ。今後は俺の命令に従えよ。まずは床に跪いて俺を崇めな」


 その子供・ジャンは少し前世の会社の係長に似ていた。

 思わず、胸ぐらを掴んで高い高いしてしまった。


「うわー、何するんだよ!降ろせよ!」


 泣き出した男の子は必死に叫び始めた。

 うるさい。

 地面に下ろすと、その男の子は私に殴りかかってきた。


「ふざけやがって!」


 驚いたことに、男の子の挙動がスローモーションになった。

 そういえば身体強化のスキルが身についたんだっけ。

 目も随分とよくなったみたいね。


 ああ、男の子の目。

 半分涙目。

 血走っている。

 怒ってるのね。

 口も歪んでみっともない。

 でも少し滑稽ね。

 額に『肉』って落書きしたいわ。


 拳が私の顔まであと10cmぐらい。

 どうしよう。


(下手なことすると孤児院ごと消滅しちゃうわ。ソローッとやんなくちゃ)


『バガッ!』


 私は向かってきた男の子の額にデコピンした。


 男の子は派手な音をたてて後ろの壁に吹き飛ばされ、

 気絶してしまった。


『デコピン拳を取得しました』


 またもやがっくりするようなスキル名。

 でも、威力は特大。

 大丈夫かしら。


 男の子の額に大きなコブができたけど、

 それ以外は大丈夫のようだった。


「ボス!どこまでもついていきます!」


 周りの子供達が一斉に膝をついた。

 その時から、私は孤児院のボスになった。



【ジャン】


 女が孤児院にやってきた。

 背は俺より少し小さいチビだ。

 12才だという。

 俺の二個下だな。


 この孤児院に入ったら洗礼をしてもらう。

 俺様の前で跪いて俺を一心に崇めるのだ。

 だって、俺様は孤児院のボスだからな。


 歯向かったやつは全員俺様の拳の餌食にしてきた。

 ここでオレに逆らう奴はいない。

 こんな女ごときに威張っても仕方ないけどな。

 最初が肝心だからな。


 まあ、案外可愛い顔をしてるから、

 俺様の専属メイドにしてやってもいい。


「うわー、何するんだよ!降ろせよ!」


 俺様が女に仕きたりを教えた直後だ。

 いきなり女が俺様の胸ぐらを掴んで持ち上げやがった!


 俺様が少し抵抗したら

 女は俺を床に下ろした。

 俺様に怖れをなしたか。


 ふてー野郎だ。

 ああ、野郎は男か。

 ふてーメス犬野郎だ。


 え?俺が泣き叫んだって?

 馬鹿言うな。

 そんなことあるわけがない。


 俺は怒りがメラメラとわきおこり、

 拳を握りしめて女を制裁することにした。


『バガッ!』



 気がついたら、俺は床に寝転がっていた。


「イテテテ!」


 額が痛すぎる。

 思わず額に手をやると、なんだこれは?

 額にものすごい膨らみが。

 触るとジンジンする。


「ギャハハハ」


 俺様の周りでは俺様の子分共が囃し立てる。


「なんだよ、そのコブ!」


 額の膨らみはコブだっていうのか?


「おまえ、ボスにのされたんだよ!」


 ボスにのされたって。

 ボスは俺様じゃないか。


「弱っちいのにボスヅラすんなよ。今日から孤児院のボスはこちらのエミリーさんだよ」


 俺様は納得がいかなかった。

 だが、この女に俺様がのされたことは事実らしい。


 とりあえず、俺様は矛を収めることにした。

 だが、この女、とんでもないメス犬野郎だった。



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