イケメンと白ワイン
【イケメンと白ワイン】
「本日は白ワインを持ってまいりました」
週末になるとイケメンがやってくるようになった。
いつも素晴らしいお土産をもってきてくれることもあり、
教会の女性の目がハート型だ。
「ぶどう生産にチャレンジするって聞きましたので」
この話、おおっぴらに広めていないのに、
どこからネタを拾ってくるんだろう。
「耳が早いわね」
「僕、耳がいいんですよ」
「そう?」
なんだか、胡散臭い。
どうも、イケメンっていうだけで
信用度がだだ下がりになる。
それに、この人、笑顔が爽やかすぎる。
こんなの裏があるに決まってる。
「あと、おつまみに」
イケメンがそういって差し出したものに釘付けになった。
「それはフライドポテト!」
「ポテト?私の地元ではブランボリーっていいます」
「それって、地中にある丸くてゴツゴツしたもの?」
「ええ。このあたりにもありますか?」
「このあたりでは見たことはない。文献で知ったのよ」
「なるほど」
「しかも、油で揚げてるのね」
「ええ。それに塩と胡椒」
「素朴だけど、実にお金のかかった食べ物ね。油も胡椒も王国では高級品よ」
「地元ではありふれた食材なんですが」
「はー、なんだか嫌味に聞こえるわ。ひょっとしたら、あなたの地元って物凄く裕福か、それとも農業先進地?」
「普通だと思いますよ」
「全然、普通じゃない。でも、せっかくもってきてくれたんだから、フライドポテトと一緒に白ワインも飲んでみましょう」
白ワインはよく冷えている。
対して、フライドポテトはアツアツ。
不思議だ。
「!」
まず、白ワインの透明度に驚いた。
王国のワインには濁りや雑物が浮いていたりする。
これにはそんなものはない。
輝きのある金色がかった黄色。
透明度の高さはクリスタルのように光輝いている。
白ワインのグラスを口に近づけようとして、
再び驚いた。
あまりの香りの良さに。
まずはりんごのような香り。
次にパイナップルとメロンを合わせたような甘い香り。
そして、最後にハーブっぽい香り。
芳醇で複雑な香りにうっとりする。
グラスを口につけてみる。
ソフトで洗練された甘味。
すぐに爽やかな酸味。
舌を通り過ぎると十分に熟成された旨味が。
ワインを飲み込むと、
優雅な香りが鼻腔をくすぐる。
(このワイン凄い)
私は決してワイン通じゃない。
それでも、このワインが極上だってことはわかる。
それと、身体強化スキルのお陰で
嗅覚・味覚ともに前世より数段アップしている。
「いかがでした、ワイン」
「素晴らしかったわ。あんなに美味しい白ワインは初めてよ」
「それはよかった。うちは赤ワインも素晴らしいんですが、特に白ワインは地元では最高級と褒め称えられます」
「地元?あなたの地元ってどこなの?」
「はは、ここからはかなり距離がありますね。東の方ですよ」
「ふーん」
「また持ってきましょう」
「ああ、嬉しいわ」
「でも、ポジティブな返事をもらったのは初めてですね」
「そう?」
「願わくば、次回はワインをご一緒させていただくと嬉しいのですが」
「いいわよ。せっかく遠いところからワインを持ってきてくれるのだから。私もなにかあう料理を考えてみるわね」
「いかがでしょうか。台所を貸していただければ、私の地元で評判の高い料理を作ってみましょうか?」
「へー、あなたって料理もするんだ」
「地元の男性は誰でもしますよ」
「素晴らしいわね。ここいらの男どもにも聞かせてあげたいわ」
「じゃあ、さっそく台所をお借りしますね」
私はイケメンを台所に案内した。
イケメンが台所に立つと、
おもむろに懐から食材を取り出した。
「ちょっと待って、それってマジックバッグ?」
「そうですが」
ああ、だから温度が保たれているんだ。
マジックバッグに保存すると、
時間が停止し、料理が劣化しない。
「普通、そんなに堂々と出すもんじゃないんだけど」
「僕の地元では誰でも持っているもんですが」
「そうなの?」
「このあたりでは珍しいようで」
「珍しいどころじゃないわ。誰かが捕まえにくるわよ」
「あはは」
「冗談じゃないって。ちなみに、私も持ってるの」
「秘密にするんじゃないんですか?」
「いいわよ。あなたのオープンな姿を見たら、バカバカしくなったわ」
「もちろん、他の人には内緒にしておきますから」
「ありがとう。あなたも、王国では気軽に見せびらかさないほうがいいわよ」
間違いない。
この人、かなりのお金持ちだ。
それも成金じゃない。
料理をするっていうのが謎だけど、
そういう習慣のある場所なのかもしれない。




