開拓地の農業
【開拓地の農業】
開拓村の開拓がある程度終了した。
そこで周囲を外壁で囲い、結界の魔導具を設置した。
結界に入るには、専用の腕輪が必要となる。
それなしで結界内に入ると、猛烈に気分が悪くなる。
「どうかしら、小麦の生育は順調?」
「土壌がかなり肥沃ですから、今のところは順調以上ですね。適度に魔石肥料もまいてますし」
「今は、小麦とライ麦半々で植えてるのね?」
「ええ」
「冬はそれで行くとして、夏は大麦と大豆をやってみる予定です」
このエリアは古くから前世地球で言うところの
三圃式農業が盛んらしい。
春蒔き作物、秋蒔き作物、休耕地の3つを
順番に回していく耕作方法だ。
一つの作物を続けて植えると、
地中の栄養分がなくなってしまうかららしい。
どっちにしても農業のことはよくわからない。
バロー村の人達の言う通りにするしかない。
「後は、水牛と鶏ね」
「水牛はアッシたちのものも引っ張ってきますが、新たに購入してもいいのでは?」
バロー村の人たちは、水牛を育てることに自信を深めていた。
「そうね。管理できるのならば水牛はどれだけでも買ってきてかまわないわよ」
「鶏も以前のように野生種を捕まえてきて飼育ですか」
「ええ、お願い」
「水牛は魔石飼料のおかげですぐにミルクの出がよくなると思います。鶏は野生種の玉子から雛を育てて半年後ですかね」
このへんは、バロー村の経験がある。
◇
半年後。
村の経営が順調に伸びている。
何よりも、小麦が豊作だった。
この地では土壌が貧しい場所が多く、。
ライ麦が中心なんだけど、
やっぱり味は小麦のほうが上。
だから、小麦は貴族とか富裕層の食べ物になる。
牛乳や鶏の玉子も量産体制に入った。
いずれも高級品になる。
次はぶどうの生産にとりかかりたい。
孤児院教会でもぶどうを作っており、
技術協力がみこめるのだ。
「エミリ、凄いことになってますな」
そう言いながら笑顔で近づいてきたのは、
商人のアンドレさんだ。
私がこの世界に転生して森を彷徨っているところを
助けてくれた恩人だ。
「最初はちょっとした思いつきだったんだけど。あっという間に実現しちゃった」
「荒れ地の開拓だって大変なのに、森の開拓なんて普通は思いつきでできるもんじゃない」
森の木々を掘り起こしていくのも大変なんだけど、
やはり、濃い魔素と魔物が障害となる。
人間は長時間濃い魔素にさらされると
魔素酔いを起こす人がいる。
船酔いのような症状だ。
それに、魔物は魔素の濃いエリアに生息する。
簡単に人間が住める場所ではない。
魔素濃度に関しては、自動魔石生成装置を製作した。
その装置をあらゆる魔導具に組み込んである。
周囲の魔素を自動的に取り込んでいくので、
開拓村の魔素濃度はかなり低くなる。
「で、どうですか。うちの小麦は」
「素晴らしい出来だね。最高級の小麦だ」
「農民は土壌が素晴らしいと言ってるけど」
「森の腐葉土が素晴らしいことは昔から言われていたんだが、森は危険だからなかなか利用できなかったんだよ」
「魔物対策としては、魔素を減ずる魔導具を開発して、結界魔導具と一緒に村を覆ってます」
「素晴らしいね。魔石の使用量もすごいだろうに。街でも注目されてるよ。気をつけてな」
「ええ。ありがとう」
「まあ、聖女様の村にちょっかいを出す奴はいないだろうけどな」
「そんなことはないんですよ。輩は多いです。でも、腕輪なしでは村の結界に拒まれるし、仮に入り込んでも攻勢魔導具が侵入者を攻撃します」
「ああ、聞いてるよ。入村許可証のこの腕輪がないと、村に入った途端に気持ちが悪くなり、それでも進もうとすると体がビリビリしてくる。更に進もうとすると黒焦げになるって話だな」
「その通りですね」
「魔物よりもおっかないって評判だよ」
村の入口には国境として警備員をおいている。
でも、森の周囲から村に侵入を試みる人が後を絶たない。
今のところは村の境界を突破して、
国境内部に10m以上進めた人はいない。
村と積極的に関わる人の選定は進んでいる。
特に商人。
この世界では、商人は詐欺師と決まっている。
目先の利益にこだわる、それが商人だ。
その中で誠実な商売をしてきた人がいる。
孤児院教会ではそういう人を選別して取引相手としていた。
私を助けてくれたアンドレさんもその一人だ。
森で倒れている少女を助ける人がいないとは言わない。
でも、やっかいごとに進んで関わろうとする人は少ない。
それに、そのまま奴隷商人に売られてもおかしくはない。
ちなみに、アンドレさんの腕輪。
村人全員にも貸与してある。
この村にかかる結界、
これを無効化するのだ。
この腕輪のない人は中に入れない。




