困った人たち1
【困った人たち1】
さて、孤児院病院の話。
前にも言ったけど、忙しい割に儲からない。
教会傘下の薬師ギルドの手前、
薬は数を売れない。
その割に、教会有力者への寄進が必要になる。
さらに、困った人がどんどん増えている。
【その1 スパイ】
「アジャン街の聖教会製の薬。どうにかなりませんか」
「どうにかなりませんかって言われてもなあ」
「効果が良すぎて、私どもの薬が効かないって苦情が入るようになってますし、売上もどんどん減っています!」
「あの薬は教会主要部に根回しされているからな。我々も簡単に手を出せんのだ」
「そこをなんとか」
「ふむふむ、寄進を増やしたいとな。仕方がない。神からのご信託があるやもしれんの」
などという会話がそこかしこで。
結果、薬の秘密を探る輩が不定期に現れる。
「グワッ」
「また現れたわ、こそこそ探る輩」
「ボス、森に捨ててきますか?」
「いや、そこまでは。しっかり背後関係をしゃべらせて。後はまかせるわ」
スパイは簡単に捕まる。
そりゃ、見ず知らずの人が
教会の中をうろついているんだもの。
私とか孤児たちって、感度が高い。
魔物相手に数十m~百m単位の探り合いをしている。
こんな鈍いスパイなんてすぐにわかる。
サクッと捕まえる。
白状させて、その証言を録画し、
依頼元の館に裸でスパイをくくりつけてる。
「教会のお世話になっている人たちから注意してもらおうかしら」
スパイの雇用主とか依頼者へは薬を売らない。
商人たちや関係者たちにもその旨伝える。
売った場合は、彼らも制裁の対象となる。
「くそっ、小娘ごときが舐めくさりやがって!」
教会関係者とは思えない汚い言葉を羅列する。
「おい、例の組織を動かせ」
「よろしいのですか、血が降って大騒動になりますが」
「構うものか。教会上層部には工作をしておく」
私の制裁に怒り、恫喝してくるような輩もいる。
というか、たいていはそうなる。
そういうのは、こっそり伺って、
依頼主の人間に威圧をかけてやる。
どこにいようとお構いなしだ。
「誰だっ、どこから入ってきた!」
「闇の仕置人よ」
「誰か!賊……うぐぐぐ」
強めに威圧をかけると、
社会復帰できるか微妙なラインになる。
精神崩壊の一歩手前だ。
100%教会を引退することになる。
【その2 権威を振りかざす人たち】
「どこそこの偉い◯様が及びである。ありがたく診察にこい」
本当にこんな上から目線で呼びつける
勘違い野郎がいる。
それも一人じゃない。
「エミリ、そんな手紙に騙されちゃ駄目よ」
「そうよ、そのまま拉致られたりするから」
「私、一応教会関係者だよね?」
「シスターとかじゃないでしょ。エミリは教会の下働きみたいなポジションだから。教会の看板は使えないよ」
「下手すると殺されるし」
「え、なんで」
「病気であることを隠す人は多いのよ」
「弱みを見せたら、敵が襲ってくるからね」
ああ、権力の世界。
恐ろしい。
まあ、スルー。
ブラックリスト入り。
「まあ、エミリの場合はいろいろ大丈夫だと思うけど」
確かに。
大抵は威圧。
睨みを効かすと、大人しくなる。
中にはもっと強行手段を取る輩がいる。
そういうのはそいつの館までいって、
館ごと吹き飛ばしている。
大丈夫。
攻撃前に人は退避するように警告するから。
一応、警告攻撃もするし。
退避を確認してから、館を吹き飛ばす。
このように、私に群がる困った人々を
退治しているうちに、
私には大賢者の弟子、聖女様という二つ名の他に、
闇の怒り
聖女様の怒り
大賢者様の怒り
という渾名もつくようになった。
私がやったなんて証拠は残していないんだけど。
最近では、不思議なことがあると私がやった、
みたいな風評が出ている。
ちょっと困る。
晴れても雨が降っても私のせい、みたいな。
まあ、人を治しているのか、破壊しているのか。
難しいところではある。
敬意とともに、アンタッチャブルな場所、
という評価は得られているんじゃないかと思う。




