なんとか森を抜け出した
【なんとか森を抜け出した】
フラフラと森をさまよってみた。
使いたくないけど、敵が現れるたびに、
何度か拳を振るった。
おかげで眼の前に道ができており、
そこをとぼとぼと歩いていくと、
「ああ、ちゃんとした道が!」
ようやく人の使っているような道に出た。
だって、道に轍ができている。
「とにかく、街に行けば」
なんとかなると思うのだけれど、
お腹がすいて力が入らない。
木陰でしばらく休んでいると、
「お嬢ちゃん、しっかりしろ」
肩を揺さぶられて目が覚めた。
「ああ、生きてたのか」
眼の前には心配そうな顔をしたおじさんが。
私は気を失っていたようだ。
こんな場所で。
獣に襲われていたらひとたまりもない。
「お嬢ちゃん、どこから来たんだ?」
と言われても困る。
「捨て子かな?おいていくわけにはいかない。街まではのせていってあげるよ」
捨て子って。ハードね。
「お嬢ちゃん、名前は?」
私はおじさんの馬車に乗せられ、
街に行くことになった。
「エミリです」
前世の名前を言ってみた。
不自然な名前ではないようだ。
「そうか、ワシは商人のアンドレじゃよ。お腹すいてないか?これ食べなよ」
おじさんは私にパンと水をくれた。
パンは固くて少し酸っぱかったけど、
もうガツガツと食べた。
おじさんは碧眼・ブルネット。
肌は日に焼けているけど、
地肌は日本人と似た感じ。
前世で言うと地中海系かな?
掘りが深い。
それと、当たり前に話をしていたけど、
会話は日本語じゃない。
聞いたことのない言葉だ。
でも、理解できるし、話ができる。
(これはマルチリンガルかしら)
マルチリンガルってというのは、
転生物語ではよくあるスキルで、
どんな言葉でもネイティブのように使える能力。
しばらく馬車で揺られると、高い壁が見えてきた。
「街についたぞ。ちょっと待ってな」
おじさんは私にそういうと、
入り口にいる門番?と話している。
この街はアジャン街というらしい。
眼の前に見える高い壁、
これがぐるりと街の周囲を囲っているという。
大きな門をくぐり、街の中に入ると、
薄ベージュの壁の建物がいくつも並んでいた。
屋根はオレンジっぽい。
見た目はすごくおしゃれ。
でも、ちょっと臭いニオイが漂っている。
私は顔をしかめながら、おじさんについていく。
「エミリ、さあついたぞ。ここは教会じゃ。君はしばらくここでお世話になれるよう話してくるから、待ってなさい」
銀行の小さな支店ほどの大きさの建物にやってきた。
中には長椅子の並べられた祭壇のような広い部屋が。
私はポツンと長椅子に座っていると、
年配の優しそうな女性をつれておじさんが戻ってきた。
「ようこそ、アジャン聖教会へ。私はシスターセリアです。ここの教会長よ。あなたの名前と年齢を言える?」
アジャン聖教会のアジャンはこの街の名前。
聖は教会が聖魔法を得意とするからだという。
「エミリです。年はわかりません」
「あらあら。12歳ぐらいかしら。他にもいろいろ質問するわね」
いくつかの質疑応答のあと、
「じゃあ、エミリ。あなたはしばらくここで住むことになります。いいですか?」
「はい、ありがとうございます」
私には他に選択肢がない。
というか、お腹がすいた。
「じゃあ、こちらに来なさい。アンドレさん、ありがとうございます。エミリもお礼を言いなさい」
アンドレさんは善意でこの教会に連れてきてくれたようだ。
というのは、この世界では捨て子は当たり前、
子供の誘拐も日常的なのだという。
やっぱりあのハゲ(神様)、
私をハードモードの世界に転生させたようだ。
「アンドレさん、本当にありがとうございました」
「いや、いいんじゃよ。ワシにも君と同じぐらいの娘がいるからね。他人事じゃないんじゃよ」




