半年後、隣国の首都は
【半年後、隣国の首都は】
半年後。
隣国では大騒ぎが起きていた。
例の自称聖女様、結界石の古代語を読めなかった。
彼女的には私のメモがあれば十分だと思ったらしい。
私のことを詐欺だとか、陰謀だとか、
わめきちらしているとのこと。
だけど、私言ったよね?
結界の文字は変化するかもって。
ちゃんと古代語の専門家を育ててねって。
私のところにも使者がやってきたらしい。
お生憎様。
私は長期休暇をもらっていたので、
大騒動になっていることなんて知らなかった。
それに、私のことをバッタモン扱いしておいて。
どれだけ頭を下げられてもムリです。
結局、隣国の結界は消え去った。
消えるとともに、パニックが起きた。
兵士たちはすぐに逃げてしまった。
街の人々も。
背景には王室や偽聖女への不信感がある。
特に、偽聖女への怒りは大きいようだ。
偽聖女、聖女らしいこと、つまり回復業務とかは
全然しないで、
毎日キレイに着飾ってパーティとかに忙しかったらしい。
兵士の中には私に深刻な怪我を治してもらえて
感謝しているものも多い。
なのに、王国の聖女様(私)へのやり方はなんだと。
本当の聖女様になんたる失礼な振る舞いを、と。
早めに偽聖女を見切る流れが出ており、
王室への不信感もマックスだったらしい。
王室はあれだね。
腐敗しているんじゃなくて、
相当頭が弱いんだろうね。
だから、王室を見限る兵士も多いし、
街の人だって馬鹿じゃない。
これから起こる悲劇なんて容易に想像できる。
案の定、城のそばに急にダンジョンが現れた。
やがて、数多の魔物がダンジョンから溢れ出した。
スタンピードが起きたのだ。
大部分の魔物は首都を目指した。
首都は荒れに荒れた。
魔物はそのうち消え去った。
魔素の低い場所では魔物は長く生きられない。
ただ、王族はほぼ絶滅した。
なんとかスタンピードに対抗しようとしたのだ。
案外、王室はまともだった。
頭が弱かったけど。
でも統率力のないトップ、それだけで犯罪。
残念ながら、最後まで抵抗した王子は魔物に食い尽くされ、
この世に痕跡を残さなかった。
偽聖女は?
偽聖女もすぐに逃げようとしたのだけど、
どこかの兵士に足を切られ、
魔物の生贄に捧げられてしまったという。
自分たちが逃げるための時間稼ぎに使われたのだ。
何をしたら、そこまで憎まれるの?
その後の消息はわからない。
【奥様、ひたすら疲れる】
私が長期休暇から戻ってみると、
隣国は滅んでいた。
滅んだと言っても、
王室が滅んだだけで、
王国に連なる諸侯は健在だ。
この世界の王室は、
地方豪族のまとめ役みたいなもので、
絶対的な権力があるわけではない。
王室が滅んでも、
諸侯の政治経済に影響はあまりない。
王国は敵が襲ってきたときは一緒に防衛しようという、
軍事連合的な集まりなのだ。
だから、外交的には近隣諸国の餌場となる可能性はある。
旧王国を束ねる王室が消えたのだから、
まとまりのなさをつかれるかもしれない。
どっちにせよ、私にはあまり関係がない。
私は王国の影響下というよりも、
教会の影響下で暮らしている。
この世界のわかりにくい部分だ。
王国・諸侯という権威と、
教会という権威が並びたっている。
王国は王国内、
各諸侯は諸侯の領地内にのみ影響がある。
しかし、教会は各国にまたがっている。
超国家的な組織だ。
しかも、政治的・経済的にも独立している。
そして多くの場合、王国よりも力がある。
それにしても、私はつかれた。
王国が消滅したのは自業自得だ。
なんであんなわけの分からない女にたぶらかされたのか。
まあ、誘惑持ちというのはわかっていたのだが。
それにしても、あんなにあっさりひっかかるものなのか。
私はその女の誘惑スキルを感じたことがある。
確かにそこそこ強いスキルなのかもしれない。
でも、私は王子のスケベ心が破滅を生んだと思う。
単純に言って、王子はあの女に惹かれたのだ。
ちょっと前には私をお后に、なんて言ってたのに。
あまりにも軽い。
女も頭が悪い。
結界石の操作に関して、
あまりにも間抜けすぎる。
なぜ、自分が操作できると思ったのか。
私のメモ頼りだというが、
私は結界石への懸念もメモに残したはずだ。
まあ、私みたいなちんちくりんが
王子様から求婚されるなんて、おかしすぎるんだ。
身分も違いすぎるし。
多分、結界石の読める人なら誰でもよかったんだろう。
私が渋い返事ばかりしていたところに、
私よりもずっとキレイでスィートな女性が現れた。
結界石は読めるという。
まあ、ここは魅惑スキルで信じ込まされたのね。
そりゃ、鞍替えしますわ。
結局、王子様を疑いの目で見ていた私が正しかったわけで。
釈然としないし、なんとなく悲しい結果なんだけど。




