薬草採取とメシマズの克服
【薬草採取とメシマズの克服】
「みんな、集合!」
私は孤児院の子供たちを集合させた。
「私、これから薬師として活躍するからみんなに手伝ってほしい」
「何するの?」
「薬草集め」
「へ、ちょろいぜ。俺たち、もうすぐゴブリン戦組だぜ」
「あま~い。薬草初級編はたしかに楽だけど、奥は深いぞ」
普通、薬師用の薬草は森の周囲に生えていることが多い。
だから、小さい子や女性はそういう薬草を摘んで
生計をたてていることが多い。
でも、森の中にしか生えていない薬草もある。
そうなると、ゴブリンだけじゃなく、
せめてホブゴブリン程度の敵に勝つ実力がいる。
「えー、いきなりホブゴブリンかよ。ムリじゃん」
「だから私は防御魔導具を作りました。ジャジャジャーン!」
形は普通の鉄の盾。
でも、そこには物理防御魔法と対魔結界魔法が
込められている。
しかも、自動的に魔力が充填されるという。
この点が私の最新の研究成果だ。
「これ、みんなに持ってもらう」
「またまた、軍部がよってきそうなものを」
「ていうか、普通に盗みにくるんじゃね?」
「使うときには個人登録が必要だから、登録された人以外には使えない。だとしても、なくさないように。というか、盾の内容を漏らさないように」
「おー!」
「じゃあ、みんなで森へ行こうか」
「えー、わたしたちも?」
「そうよ。大丈夫。ゴブリンぐらいしか出てこないから」
「そのゴブリンが怖いのに」
ゴブリンは体格は子供みたいであるが、
力が人間の大人よりも強く、残忍である。
だから、普通はゴブリンに出会ったら逃げよ、
と言われている。
(みんな静かに。盾のスイッチは入れたよね?)
(はい)
(では、私のあとについてきて。ゴブリンエリアに近づくから)
(ドキドキ)
(よし、ゴブリン1匹接近。みんな、私が盾の性能を見せるから)
私はおもむろに立ち上がると、前に出てゴブリンを挑発した。
途端に歯をむき出して怒り声をあげ、
私の方に猛突進してきた。
「バチン!」
ゴブリンは私の盾にぶちかましてきた。
しかし、ゴブリンは弾き飛ばされて、
動かなくなったと思うと、霧散した。
(わかったかしら。この盾の実力。ゴブリン程度なら全く通用しないどころか、攻撃もしちゃうのよ)
(おお、すげー)
(じゃあ、◯くん。次は君の番)
(ええ、ちょっとお腹の調子が……)
(大丈夫。ゴブリンを見たらすぐ治るから)
(酷くなるってーの!)
その調子で子供たちに盾の実力を確認してもらった。
(いいかしら。3人一組でチームを組んで。前と後ろに盾組を配置、真ん中は採取組)
(横から攻撃を受けたら?)
(この盾は半径3m程度のドームを形成します。方向は関係ありません)
(すげー)
盾に依存してしまうことを避けるために、
子供同士での対戦ゲームをすることになった。
盾を構えて、お互いに魔法を撃ち合うのだ。
魔法が当たったら死亡判定で負けとする。
これで対戦前の位置取りや
戦術の組み立ても学んでもらった。
薬草採取は子供たちの稼ぎとして採用した。
より難易度の高い薬草を狙わせることで、
孤児院も潤うというわけだ。
勿論、私の薬製造も捗る。
【メシマズの克服】
さて、私は孤児院に戻ってきて、
ある決意を固めていた。
料理上手になるのだ。
私の最大の弱点は、致命的な料理下手。
普通の人には理解できないだろう。
物凄くこじれているのだ。
「レシピ通りにやればいいじゃない」
みんな、そういう。
私はそれができない。
私は強い決心をもってレシピ遵守を誓う。
ところが、いざ料理に向かうとレシピを壊したくなる。
病気か何かかと思って、先生に見てもらったことがある。
診断は。
■愛情が深すぎる
つまり、美味しい料理を食べてもらうために、
手間暇をかけて料理したい、という感情が強すぎる。
だから、
やりすぎる
焼きすぎる、煮すぎる……
■強迫観念
学校でこう習う。
しっかり火を通しましょう。
そうじゃないと、細菌・寄生虫などの侵入を許してしまう。
結果⇒料理に火を通しすぎて炭化する。
情報番組で
焦げたものはガンの原因となる
⇒料理が半生
■貧乏性1
もったいないから、余り物を混ぜてしまう。
これが高じるとアレンジャーとなる。
できあがった料理は闇鍋。
■貧乏性2
金をかけたくない。
⇒節約しすぎる
これらの要素が複雑に入り組んだ形で
私の料理に反映されるという。
出来上がった料理は私も食べられない。
「いいこと?レシピをこの紙に書きました。この通りにやらなかったら、この電気棒で私を攻撃するのよ」
「いいけどさ。エミリ、俺たちに反撃しないよな?」
「絶対にしない」
「絶対だな?」
「絶対」
料理が終わると、
台所には額にコブをこさえた大量の屍(気絶)が
ならぶのであった。
そして、私の料理には2度と手を付けてくれなくなった。
料理に関する私の信用は地の底に落ちたのだった。




