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奥様、村の経済を立て直す

【奥様、村の経済を立て直す】


 わざわざバロー家を掌握した理由は。

 この村をどうにかしたいからだ。

 村の実態が酷い。


 一言で言えば、非常に貧しい。

 前世の江戸時代貧村におきたようなことが

 普通に起きている。


「豊かにしないと」


 これは私の甘さなんだろうか。

 困っている人を見ると、

 手を差しのべたくなってしまうのだ。



 私は地下室の本を改めて読み漁った。


 これだ。


「魔石肥料と魔石飼料」


 魔石を使った肥料と飼料。


 水牛のかわりは私がやる。

 畑を耕したり、荒れ地を開墾するのは。


 畑には魔石肥料。

 家畜には魔石飼料。

  

 村人たちは畑の作物や家畜を育ててほしい。



 私は村の主だったものを集めた。

 まず最初に私は村人に食事を保証した。


 魔石は作り放題だ。

 ほうぼうの街を回り、魔石を売って食べ物を買った。


 そして、村人に食糧倉庫を見せた。


「奥様が、これを準備なされたので?」


「そうよ。村全員が1年は楽に食べていける量よ」


「これを頂けるのですか?」


「勿論。お金は不要よ。ただ、私の言うことを聞くこと」


 村はあっという間に私に帰順した。


 もっとも、地割れ騒ぎ以来、

 とんでもなく乱暴者の奥様という評価は得ていた。

 言うことを聞かないと、おっかないぞと。


 そして、作戦会議を開いた。


「ここに私の作った肥料と飼料があります。魔法をこめたので、作物も家畜もずっと成長するはずよ」


 私はこの魔石肥料と魔石飼料に自信があるわけではない。

 それでも、本には書いてあった。

 従来の肥料や飼料よりも数倍の効果があると。


「使い方は皆さんにおまかせします。飼料はすぐに効果が出るでしょ?肥料にしても、芽の出た段階である程度の見込みをつけられるはず」


 この国では『魔法』という言葉に過大に反応する。

 無論、いい意味でだ。


 魔法によって作られた肥料と飼料。

 村人の目が光った。



 魔石飼料はまず水牛に与えてみた。

 水牛は見る間に健康が促進され、

 活力がみなぎるのが見て取れた。


 お乳を絞ってみると、味が濃い。

 しかも量がすごく出る。


「水牛は耕作に出さずに、お乳専門にしてほしい。耕作や荒れ地開拓は私が続けて行うから」


 実際、耕作・開拓は私のほうが水牛よりも圧倒的に速い。

 しかも私はほとんど疲れない。

 数日もあれば村を1周してしまう。


「奥様の馬力は半端ありやせんな」


「流石は地震を起こすお方です」


「奥様一人で牛千頭ぐらいの力がありそうですな」


「牛千頭様ですか」


 おかしなあだ名をつけるのはやめて。

 そんな身も蓋もない。

 面白みもないわ。



「水牛で効果が出たら、次は鶏ね」


 鶏と言っても、前世のような家畜ではない。

 野生の鳥で鶏のようなのを捕まえて飼育するのだ。


「鶏も穀物にこの飼料を混ぜて与えると、実に喜んで食べます」


 卵にはなかなか効果が現れなかった。

 しかし、鶏の卵を孵化させて育ててみると、

 卵を産む回数が飛躍的に増えた。


「卵はどこへ言っても高級品で通ります。これは村の特産品でやすな」


「で、麦の生育状況はどう?」


「小麦、ライ麦とも成長が速いです」


「倍近い成長速度ですね。収穫が楽しみです」


 数カ月後、麦も収穫時期を迎えた。

 成長速度も速いが、収穫量が驚きだった。


 従来よりも数倍もあったのだ。


「農業ギルドで見てもらったんですけど、味も最高級のお墨付きを得られやした」


 農業ギルドの試験は実際に味わった感想と、

 もうひとつは粘り気でみる。

 粘り気はおそらくグルテン量の多寡だろう。


 半年もたたずに村の経営は順調に伸びていった。


 勿論、上手くいかない農家もいる。

 彼らにはちゃんと無料の食糧を与えている。


 私には農業指導はできないけど、

 そこは周りのみんなのバックアップが得られる。

 村のいいところだ。


 中には健康なのに働かないような輩もいる。

 そういうのは努力を促して、

 それでもぐーたらなら追放している。


 余計な人はいらない。



 魔石肥料と魔石飼料に関しては、

 秘匿することを誓わせた。


 やがて、村の周囲から見学にくる人が増えた。

 村が急に景気が良くなったからだ。


 商人もやってくる。

 だが、昔から村との付き合いのある商人を優先させた。


 知らない商人など怖くて使えない。



 注意が必要なのは、

 盗みだ。

 

 近隣の村から普通にやってくる。

 食糧が不足すれば盗む。

 これがこの世界の常識だ。


 私は、そのために攻勢の魔導具を作った。

 かかしのようなもので、

 不審者がエリアに入ると、電気ショックを与えるのだ。


 そのショックにも関わらず盗みを続行しようとする輩には、

 更に強い電気ショックが与えられる。

 まあ、黒焦げになるんだけど。


「あの村には雷を呼ぶ神がついている」


 そういう噂が駆け巡った。

 不審者はぐっと少なくなった。



 私は暇を見つけては、

 転移魔法陣の研究を進めることにした。


「問題は、この膨大な魔法式。どうにかならないかしら」


 前世日本の私ならばお手上げだったろう。

 ところが、この世界では私はすこし賢くなっていた。

 魔法式を見て、いろいろな案が浮かんでくるのだ。


「身体強化スキルのお陰?頭の回転がすごく良くなった気がするし、記憶力もめちゃいいのよね」


 転移魔法式はあれもこれも様々な式が混ぜてあった。

 なんでもできる転移魔法。

 私は極力無駄を省いていった。

 そして、単純に往復するだけの魔法式にまで簡易化した。


 それをもとに転移魔法陣を書き上げる。

 魔法陣は丈夫な紙に書くことにした。

 2m四方ぐらいのものだ。

 書き上げたらそれを永久化し、紙を結界で覆う。

 転移魔法陣の魔導具化だ。


 これをいくつか作り、マジックバッグに詰め込む。

 この転移魔法陣を各街と孤児院のそばに置くことにした。


 もちろん、バレないように地下室を作り、

 入り口をステルス化してある。

 


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