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奥様、姑と小姑を退治する

【奥様、姑と小姑を退治する】


 私はというと地割れを起こしてから、

 バロー家の洗脳からすっきり目が覚めた。

 溜め込んだストレスが解消されて、

 開き直ったのが良かったのかもしれない。


「どうして、私はブラック環境に馴染むのかしら?」


 前世日本のときもブラック企業に2年務めた。

 最初の1年ちょっとはブラックであることに気づかず、

 ひたすら自分を責めて一生懸命働いた。


 この世界でも、ブラック環境に気づくまでに時間がかかった。

 少しのめりこめやすいのと、視野が狭い、

 というのはさすがの私も気づき始めている。



 何かを探ろうと思ったわけでもないのだけど、

 ふと姑たちの本音を知ろうと思い立った。


 私にはステルススキルがある。

 これを駆使した場合、暗いところではまず存在がばれない。


 私は自分にステルスをかけて、館に静かに忍び込んだ。



「本当にあの嫁ときたらグズね」


「本当よね。自分がだまされているとも知らず、この家に嫁にくるなんて」


 だまされた?


「ダビドが騙してあのグズを連れてきてくれたお陰でいろいろはかどるわ」


「まったく。なんの見返りもなく、よく働くこと。まさしく馬車馬ね」


「奴隷のつもりだったけど、ホント上手くいったわ」


 ダビドが騙した?奴隷?


「ダビドの愛人、どうするのよ」


「ああ。へんなのにつかまっちゃって。娼婦なのよね。こっそりと処分しようかしら」


「ダビドに遺産をわけなくちゃいけないんでしょ?」


「ただの口約束よ」


「まあ、お母様ったら。でも、私にもすこし残しておいてくださいね」


「あなたもしっかり働くのよ。少なくとも、あの嫁を手放さないように手綱を緩めちゃ駄目よ」


「はい、お母様」


 どういうこと?

 私は心臓の高まりを抑えきれなかった。

 このままだと、ステルスが切れてしまう。

 私は慌てて家の外に飛び出した。


 ◇


 その後、隠れて姑たちの話を盗み聞いた。

 結婚はバロー家が仕組んだ罠であった。

 4属性持ちの私を狙ったのだ。


 学院時代の私。

 様々な方面から狙われていた。

 ああ、就職させようってことね。

 特に、ソレーユ閣下の引きは強い。

 普通の扱いでは私を取得できない。


 そこで三男のダビドに白羽の矢がたった。


『4属性持ちを獲得せよ』


 実は彼には付き合っている女性がいた。

 彼女と付き合うのを認める。


 普通は三男坊など相続で優遇されないが、

 配慮する。


 そう条件を出した。


 彼はそれに乗ったのだ。

 彼に私への愛情はなかった。

 ひっかけるための優しさだったのだ。

 むしろ、孤児である私を毛嫌いしていた。


 結婚初日から彼は酔っ払っていた。

 しかし、それは彼の意思だ。

 関係を持ちたくない。

 それが彼の本音であり、

 実際、彼の愛人にはそう約束していた。


 姑たちは私を嫁として迎え入れたわけではなかった。

 メイドか体のいい奴隷としてだ。



 これが私が夢に描いた幸せだった。

 私は転生しても、ちっとも成長していなかった。

 前世日本のまま。

 甘っちょろいおバカさん。


 この世界は弱肉強食、

 私のようなスキル持ちは利用しようと

 みんなが群がってくる。


 私は前世日本を含めて最大のショックを感じていた。

 この世界に転生してきたことよりもずっとの衝撃だ。

 ずんと重力が私にのしかかってくる。

 立っていられない。


 お腹が痛い。

 胃が痛いのとは違う。

 ギュッと耐えているせいか、腹筋が痛い。


 悲しすぎて涙が出てこない。


 どうしようかしら。

 まずは、あの二人ね。

 姑と小姑。

 退席してもらうわ。



【姑退治】


 姑に関しては即効でネタを掴んだ。

 いや、真相を追う時点で次々とネタが舞い込んできたのだ。


「お金の使い込みか。定番ね」


 村民からの税や小作料を過大に請求し、

 そして、帳簿上は過小に申告する。

 浮いたお金をポッケないない、というわけだ。


 例によってステルスにて帳簿やら本人の証言を録画。



「その次は浮気。いい年して恥ずかしくないのかしら」


 姑はアラフォーである。

 この世界ではおばあさん世代といえる。


 でも、全然枯れていなかった。

 20代、30代、40代の3人の男と

 密会を繰り返している。


 もちろん、現場を録画

 男側の奥さんともがっちりタッグを組む予定。



「これは大事になりそうね。慎重に操作しないと」


 浮気相手のうち、30代男性。

 隣国のスパイであることが判明した。

 そして、姑はそれを知りながら、

 スパイに機密情報を流していた疑いがある。



 以上を関係者各位にたれ込んだ。

 録画魔法とは。

 などと驚かれたのだが、そこはスルーしてもらった。

 とくに最後の秘密漏洩に関しては領主が深刻にとらえた。


 領主とは、当家のような弱小領主を束ねる貴族のことである。


 結局、姑は機密漏洩罪にて捕縛された。

 しばらくは厳しい追求ー拷問にかけられ、

 最終的に火炙りに処せられた。


 姑は相当泣きわめいてうるさかったらしいのだが、

 この世界、売国奴には厳しい。


 領地没収とお家断絶は逃れることができたが、

 爵位は剥奪となった。


 この国では貴族はあまり気味だ。

 ちょっとしたことでも爵位は簡単に剥奪される。


 

 次に、小姑。

 大きな罪はない。


 でも、存在が不愉快。

 これには個人的に制裁を下した。

 威圧拳をぶちかましたのだ。


 威圧拳は殺気を拳に乗せ相手にぶつける

 通常の威圧でもいいのだが、気分の問題だ。


 最大級だと精神を破壊できるが、

 今回は多少威力を減じてぶっ放した。


 結局、小姑は恐怖を植え付けられ、

 トラウマを抱え引きこもりとなった。

 私を見ればコソコソと逃げ回り、

 会話をかわそうものなら泡をふいて失神した。



 夫。

 といっていいのかどうか。

 というのは、婚姻の届け出を教会に出していない。


 事実婚だとしても、

 騙して結婚にもちこんだ姑らの証言あり。

 二人の間にいわゆる結婚生活がない。

 こちらに来てから、会話を交わしたことも数回ある程度。

 事実婚の認定もできない。


 そもそも、バロー家としても孤児の私を家に入れたくない。

 事実上の奴隷として扱うつもりだったのだ。


 したがって、婚姻は法的にも事実上も認められなかった。



 ただ、ダビドは私にすり寄ってきた。

 彼は言う。


「学院での僕の思いは本物だった」


 だと。


「結婚を申し込んだのは、決して騙したからじゃない」


 だと。


 最初は確かに姑に言われて打算で近づいた。

 でも、途中で私の素晴らしさに気づいたんだと言う。


 ああ、領主次男をぶっとばしたあとから態度が変化した。

 私を崇めるようになったわね。


「でも、結婚が決まってから母上に言いくるめられたんだ。バロー家の嫁はこうあるべきってね」


 私が馬車馬になった瞬間だ。

 その時に、母親の言いなりになってしまって後悔してると弁明するのだが。



 私は理解した。

 この男はどうも強い方に依存する癖があるようだ。

 今は私が強いから、私にすり寄ってくる。


 それに冷静になればわかる。

 この男が優しいのは優柔不断だから。

 私の意見を聞いて、私の意思を尊重したのは、

 責任を負いたくないから。


 そして、強いものに自分の決定権を委ねる。

 それがこの男の生き方。


 なんだか、気が抜けたわ。

 ひたすら虚しい。



 ちなみに舅はただのお飾りだった。

 息子と性格が似ている。

 実権は姑が握っていたのだ。


 私はバロー家を掌握した。

 夫にも舅にも愛情はなかったし、

 バロー家を乗っ取る権利が私にあるのかどうかは不明だ。


 長男・次男は王国軍や領軍で修行中だったが、

 今回の一件で束縛が厳しくなったらしい。

 帰ってこない。


 でも、私はこの村をどうにかしたかった。

 このままではこの村は崩壊してしまうからだ。



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