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学園生活2

【学園生活2】


 私は次男の言葉に我慢できなかった。

 瞬間湯沸かし器のように頭が沸騰すると、

 瞬時に次男坊に詰め寄り、

 胸ぐらを掴んで高い高いしてしまった。


「な…に…を…す…る…」


 私の手を掴みながら顔が紅潮する次男坊。

 私はハッと気づいたがもう遅い。


 慌てて手を離す。


「ゲホゲホッ、このクソッタレ!」


 次男坊はいよいよ顔を真赤にして

 私になぐりかかってきた。


 なんだか昔にこんなことがあったな、

 と私は懐かしくなる。 

 ジャンは元気にやっているだろうか。


 カタツムリよりも遅いパンチが私に向かっている間、

 私はいろいろ考えた。


 もういっか。

 退学でもなんでも。

 しょせん、転生者。

 この世界とは合わないのよ。


 私は拳を握りしめた。

 

「ただの拳!」


 私にも理性はあった。 

 まともに私の拳を使うと、学院が消滅する。


 最も威力が小さくなるよう力をセーブして、

 拳を壁にむかって放った。


「ボガッ!」


 学院の壁は全部に防御魔法がかかっている。

 耐魔耐物防御だ。

 体育館ほどガチガチではないが、

 それでも学生の喧嘩程度ならばびくともしない。


 しかし、私の拳はそんなものでは防ぎようがない。

 直径2mほどの大穴が空いてしまい、

 青空が向こう側に見えた。


 そして、私の殺気を次男坊に向けた。


「ヒィッ!」


 私の殺気はいわゆる威圧と呼ばれるもの。

 精神的な圧力を相手に与える。

 これも強度を間違えると、相手の精神を破壊してしまう。


 実際、私は最弱の威圧をかけただけなのに、

 次男坊は腰をぬかし、泡を拭いて気絶した。

 おもらし付きで。


 

 ああ。終わった。

 その場には、私の他には数名しかいなかったけど、

 これは大問題になるわね。


 ところが、大問題にならなかった。

 問題にさえならなかった。


 私の開けた大穴はあっという間に修復された。

 次男坊以下現場にいたいじめっ子たちは

 以前とうって変わって大人しくなった。



「聞きましたか、例の」


「ええ。学院の壁を破壊するとは」


「学院の壁など、私達でも破壊するのはかなり難しい」


「ですね。全力で魔法を発動してなんとか、というところ」


「現場にいたものによると、彼女は本当に何気なく壁を破壊したそうです。全力には見えなかったと」


「私、結構離れたところにいましたけど、衝撃波を感知しました」


「あれで全力ではないのか?ソレーヌ閣下が逸材だと騒いでおられたが、とんでもないな」


「しかも、どうやって破壊したのかが謎なんですよ。魔法の痕跡が検知されません」


「なんだと?じゃあ、物理で壊したのか?」


「だから、わからないんですよ」



「で、その場にいた者共の処分は?」


「ええ。実家ともども、よーく言い聞かせてあります」


「領主の次男坊もいたそうだが」


「問題ないでしょう。以前から次男坊の素行の悪さは問題になっていました。領主家のものということと成績の良さで見逃されていましたが、ソレーヌ閣下がお怒りだ、と伝えましたところ、震え上がっているそうです」


「次男坊はもらして気絶したそうだな。恥ずかしくて、私なら学校を辞めるレベルだな」



 それ以降、私への意地悪な振る舞いは影を潜めた。

 かわりに腫れ物に触るような丁寧さに置き換わった。

 ダビドを除いて。


 ダビドは、まるで私を崇めるような態度で

 私に接するようになった。


 私も自然と彼に添うようになった。


 彼は本当に優しい人だ。

 いつも私の意見を尋ね、

 そして、私の意見を尊重してくれる


「結婚しよう」


 ある日、彼は跪くと私に指輪を差し出しながら、

 そう言ってくれた。


「はい」


 前世日本を含めて初めて到来した私の幸せ。


 ちなみに、この世界では15歳が成人年齢。

 だいたいその辺りから結婚し始める。

 女性の場合、ピークは18歳で、

 20歳を過ぎて独身だとおかしな目で見られる。


 ところが、この結婚が大変なことになるのだった。



【領主次男】


 なんでだよ。

 僕はいつものように「軽い」冗談で

 やつをからかっただけじゃないか。


 それがいきなり怒り出して、

 僕を信じられないような怪力でつるしあげた。


 腹のたった僕は彼女に殴り返そうとした。

 でも、彼女のその後の行動といったら!


 全く気のない風に構えたと思ったら、

 壁に大穴があいたのだ!


 そして、僕を見つめたあの目。

 猛獣かと思った。

 いや、凶悪な魔物の目だ。

 死の世界がそこにあった。

 たちどころに全身が硬直して僕は気を失った。



 気づいたら、学校の保健室だった。

 すると担任がやってきて、さんざん怒られた。


 やがて、父もやってきた。

 父は領主だ。

 少なくとも政治面ではこの領で一番偉い人だ。


 その父が恐ろしい勢いで僕を叱った。

 こんな父を見たことがない。


 話によると、彼女はソレーヌ閣下のお気に入りだという。

 閣下は魔法・物理戦闘力も抜きん出ているうえに、

 指導力・指揮力等で非常に高い評価を受けている

 スーパーレディだ。


 しかも家柄が凄い。

 教会の上層部につながる家系で、

 うちよりも力がある。



 実は僕は悔しかった。

 ずっと、本当の首席は彼女だって。

 そう言われ続けてきた。

 孤児だから力を隠しているんだと。


 だから、僕は必死に勉強したし、

 魔法の特訓も半端なかったはずだ。


 だけど、僕は理解した。

 彼女の力を。


 少なくとも、僕には学院の壁を壊すことはムリだ。

 学院の先生でも難しいとされている。


 それを彼女はいとも簡単に破壊した。

 しかも、あれは魔法じゃない。

 そう先生たちが証言している。

 調査の結果、魔法の痕跡がないのだ。


 校内にて無断で魔法を放てば退学だ。

 しかし、その主張ができない。


 どうやってあの壁を破壊したのだ。

 僕の目にはただ手を伸ばしただけに見えた。

 本気で彼女が力を振るったらどうなるんだ。


 僕は恐ろしい。

 彼女が力を隠していたのがよくわかった。

 未だにあの目が頭から離れない。

 夜一人にされるのが怖い。


 それに、恥ずかしくて誰にも言えないのだが、

 失禁する癖がついてしまった。

 どうすりゃいいんだ。



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