魔法高等学院入学
【魔法高等学院入学】
魔法高等学院に入学した。
場所は領都の郊外にある。
アジャン街からは歩いて3時間程度の距離だ。
本日は入寮の日。
「試験のとき以来だけど、本当にキレイなところよね」
私の前の歩く新入生らしき学院生が二人、
楽しそうに話し合っている。
「校庭がすっごく広いわ」
サッカー場と野球場と陸上競技場、
3つを観覧席込で設置しても、
まだ余裕でスペースがある。
「花壇もいろんな花が咲いていてキレイよね」
私達の入学式とか新学期と言えば、桜だけど、
この世界は9月。
まだ残暑が厳しい。
シンメトリーに区画された花壇には
様々な花が植えられている。
ただ、やはり春のほうが花の種類は多いそうだ。
ところどころに東屋のような建物と、
噴水を備えたくつろぎスペースがある。
「建物もお城みたい」
前世でいうと、ベルサイユ宮殿みたいな建物だ。
これが校舎ということだろう。
「ガラスがたくさん使われているのも凄いよね」
この世界、窓ガラスなんて滅多に見られない。
超高級品。
品質は低く分厚くて、完全に透明じゃないし、
向こう側が歪んで見えるけれど。
遠くには体育館のような建物も見える。
「あれは魔法の実技用の訓練場ね」
本日の入学式が行われる場所だ。
バスケットボールコート2面分とステージ。
その程度の広さがある。
訓練場には窓ガラスはない。
全面魔法防御壁で囲われている。
日が差さないけれど、明かりはばっちり。
照明魔導具が煌々と室内を照らす。
訓練場の隣に、わたしたちの住む寮がある。
魔法高等学院は完全寮生活だ。
しかも、完全個室という豪華さ。
私に割り当てられた部屋に行くと、
制服とか着替えの服、靴等が置かれてあった。
それぞれ2セットね。
サイズは測っていないんだけど、
私にピッタリだった。
洗濯はしてもらえるし、
破損したら替えてもらえる。
勉強道具も机や本棚に収まっていた。
食事は朝昼晩、食堂で。
まあ、あんまり美味しくはない。
でも、この世界基準だと美味しいほうかも。
孤児院の料理は美味しかったわね。
私も少し関わったけど。
お風呂はシャワーがある。
温水じゃないのが辛い。
私は体が汚れないので、
シャワーの必要がないんだけど、
気分の問題で毎日体は拭いている。
それに、私には温水魔法がある。
頭髪は温水で洗いたい。
石鹸は相変わらずない。
この世界では高級品だ。
流石の学院でも常備できないようだ。
さて、入寮の翌日が入学式。
訓練場の中に入る。
ありきたりな学院長その他の挨拶とかと、
首席が生徒を代表して入学の挨拶を行った。
首席は領主の次男坊とかだ。
高慢そうな顔をしていて、不安になる。
入学式が終わるとクラスに向かう。
1年は生徒数100人。
成績順に20人ずつ、1組から5組まである。
2年も3年も同じ。
3年が終わると、卒業するか、
一部は魔法研究所に残って魔法の修練を重ねる。
こういう人たちは学院の講師も兼ねる。
私は1年1組。
一番成績のいいクラスに配属された。
席も決まっていた。
名前のアルファベット順みたいだ。
というのは、姓は貴族にしか与えられていないからだ。
富裕層でも貴族でないと姓はない。
ただし、通称の姓はある。
屋号+名前みたいな感じで。
私は窓側前から4番目。一番うしろだ。
その列が5つある。
私は椅子に座ると、大人しくしていた。
することがない。
なんとなく、視線が私に向けられている気がする。
「おまえが噂の孤児か。4属性持ちかなんだかしれねーけど、いばるんじゃないぞ」
入学席で首席として挨拶した領主の次男坊、
彼が私にいい放った。
高慢そうな印象だったが、やはりその通りの性格のようだ。
「……」
「だんまりかよ」
私は驚いて黙っていたけど、
大人しくするしかない。
多分、魔法力は彼よりはずっと上だと思うし、
拳を使ったら、この学院が破壊される。
そんなことをしたら、私はお尋ね者になってしまう。
私は貝のように大人しくするって決めたんだ。




