お風呂問題
【お風呂問題】
孤児院は当たり前だけど、子供が多い。
毎日、泥んこで遊ぶ。
食糧調達でもかなり汚れる。
体は毎日拭くことになっているし、
服も各自が自分で洗う。
「ボス、全然体が汚れねーよな」
「だよな。服も泥がついたって、すぐにキレイになるもんな」
「私、魔法が使えるから」
本当は、魔法なしでも何故か体はキレイだ。
「えー、体をキレイにする魔法なんてあるんかよ」
「清浄魔法ってのがあるって」
「でも、そんなにキレイにならないって聞いたぞ」
「清浄魔法、かなり難易度高いわよ」
通りかかったシスターが説明してくれる。
「清浄魔法って、いわゆる生活魔法っていうことで軽く見る人が多いんだけど、回復魔法に次ぐ難しさよ」
「はー、そうなんだ」
「体の表面をキレイにするのっていうのは、複雑な魔法式になるし、非常に繊細な魔法操作が要求されるのよ。やりすぎると皮膚がボロボロになるし、おそるおそるだと、キレイにならないし」
「初級清浄魔法なんてのはないの?」
「ホコリをはたくとか、泥を落とす、というのならなんとかいけるかもね。私が使っている清浄魔法、練習しようか」
「する!」
「でもさ、ボスみたいにキレイになんないよな」
「洗濯とかめんどくさいぜ」
「冬とか超つめてーしな」
「私、温水魔法使えるよ」
「えー、ボス、ずっこいなー」
「水魔法使える子なら、練習でなんとかなるかも」
「おい、マノン。だってよ」
「私も使える」
「なんだよ、今まで黙っていたのかよ」
「マノンは聞かなきゃ口を開かないだろ」
「マノン、どうやるんだよ」
「こうするの。%△#?%◎&@□!」
「アチチ、ホントだ。お湯が出た」
「水魔法をすこし変えただけ」
「マノン、それを一人で考えたっていうのかよ。天才だな」
「えへへ」
水魔法を使える子たちがマノンに習いつつ、
温水魔法を習得していった。
スタッフの中にも学ぶ人が多い。
シスターたちにも手伝ってもらって
裏庭にお風呂場を作ることにした。
土魔法でいっきに建物を作り上げる。
男女別、脱衣所と洗濯場、乾燥部屋も作った。
「一気に高級になったな!」
「風呂場があるなんて、どこの貴族の館かよ」
この世界、風呂場は超高級な施設であった。
簡単に温水魔法を繰り出しているが、
この温水魔法、そんなに簡単な難易度ではない。
難易度も高いが、問題は消費魔力が多いことだ。
子供たちレベルではバケツ一杯がやっとである。
この風呂場建設には教会のスタッフも喜び、
みんなが温水魔法の習得に励んだり、
お風呂場の建設に携わったりした。
ただ、全員の温水魔法を束ねても、
大浴場の湯船をいっぱいにするには程遠かった。
結局、毎日私が駆り出されることになった。
私にとっても毎日の温水魔法発動は厳しく、
お陰で私の魔力が凄い勢いで伸びることになった。
他の人達も毎日の温水魔法が修行となり、
1年後には私なしで湯船を満タンにできるようになった。
「マノンとエミリのお陰ね。温水魔法って意外とみんな使えないのよね」
お風呂に使うから、と温水魔法に挑戦する人は少ない。
便利だとわかっていても、
生活を便利にするための魔法を軽く見る傾向にある。
それに、温水魔法は魔導具が普及していた。
エネルギーとなる魔石が高価なため、
魔導具は貴族などの富裕層しか使わないが、
だからこそ魔導具を使うのはステータスなのだ。
ところが、お風呂のために温水魔法を使うと馬鹿にする。
おかしなものである。
あとは石鹸。
石鹸は高級品だ。
石鹸自体は大昔からある。
いわる液体石鹸というかプヨプヨの石鹸だが。
灰汁に油を混ぜ熱する。
それだけだから、製法は自然とわかっていたのだ。
だって、焚き火をする。
そこに雨がふり灰汁ができる。
前日の炙った獣の油がそこに流れ込む。
石鹸ができる。
ただ、獣脂にせよ植物油にせよ、
たくさん採れない。
油が高いのだ。
もっとも、石鹸は必要ない、という人もいる。
少なくとも入浴には。
前世で超有名なコメディアン・司会者の人も
お風呂で石鹸を使わないという。
それでもさっぱりするし、体臭は匂わないし、
肌もむしろツヤツヤになるなんて言ってる。
私は敏感肌なこともあり、
石鹸には注意を払う。
でも無石鹸にチャレンジする勇気がなかった。
ニオイがしたら、と思ってしまうのだ。
この世界でまだ石鹸を使ったことがない。
この世界では何故か私は体が汚れないせいか、
体臭が気になったことはない。
教会のスタッフも子供たちは
体臭が気になったことがないわけではない。
でも、教会では朝晩体を拭くのが日課になっている。
石鹸なしで。
頭髪も洗い流している。
ちゃんと日課をこなしている人は清潔だ。
体臭も気になることはあまりない。
ただ、全員昼間はかなり汗をかく。
お風呂のいいところは毛穴を開いて老廃物を洗い流す
と言われている。
同じことが運動にもあるかもしれない。
汗をかくことで毛穴が開くのだ。
逆に部屋にこもっている人は
自然と老廃物が溜まりやすいかも。
つまり、体臭が酷くなりやすいのかもしれない。




