魔法実践練習
【魔法実践練習】
私も子供たちもそれなりに魔法が使えるようになってきた。
確かに私の魔法は飛び抜けているんだけど、
子供たちも実戦で使える程度には強力だ。
「ボス、いよいよゴブリン戦だな」
私達は森の少し奥にまで入り込んでいた。
ゴブリンが多くいるとされるエリアである。
多分、この奥に行くとゴブリンの巣がある。
「私がソリッドエアを展開するから。守備はまかせて」
ソリッドエアは、守備型の風魔法。
前方にスクリーンのような風のバリアをはる。
これも初級風魔法ではあるのだけど、
私のは防御力が高いし、大きなバリアを張れる。
「よし、みんな、準備は大丈夫か」
連れてきているのは、
孤児院でも攻撃的な魔法を使える4人だ。
ガキ大将、初日に私にやられて泣き叫んだジャンは
一番の有望株で、火魔法ファイアボールを得意とする。
他の子達も、空刃やら氷槍、サンドショットといった
攻撃的初級魔法の使える子供たちだ。
「いつでもいいぜ!」
私達は慎重に前進する。
もちろん、風下からだ。
ここで活躍するのが私の5感。
私は身体強化スキルがあるせいか、
5感が鋭くなっている。
視力だと100m先の木の実を見分けられる。
耳や鼻も強力になったせいか、
おかしなものが近づいてくると距離が離れていても
すぐに探知できる。
「ボスは犬並だからな」
「いや、犬以上だぜ」
「人間やめてるからな」
いちど、正座させて説教しなくちゃ、
と思いつつ、周りに注意を飛ばす。
「みんな、ストップ。臭いのがこっちに歩いてくるわ」
魔物も獣もそれぞれニオイがある。
「ゴブリンよ」
私達は木陰に潜み、敵を待つ。
風下にいる私達はまだ敵に気取られていない。
(来た!)
私達は小声で合図し合う。
私はさっそくソリッドエアを展開する。
子どもたちもいつでも魔法を発動できるように待機する。
(ゴブリンが私達に気づいた。こちらに向かってくるわ)
(よーし、発射合図は俺様がするからな)
ジャンが指揮官気取りになっていて頼もしい。
ゴブリンが私達の目の前10m程度にまで接近する。
「発射!」
一斉に魔法を浴びせる。
「グオー!」
ゴブリンは耳障りな悲鳴をあげて消滅した。
ゴブリンは倒されると霧散してしまうのだ。
「あ、まずい。仲間がやってくるわよ!」
「状況は?」
「前方約50m。2匹いるわね。どうする?」
「おし、2マンセルで1匹ずつ攻撃すっぞ。打ち合わせどおりな」
子どもたちは最低限二人1組で動くようにしている。
「よし、発射!」
魔法が2匹のゴブリンに襲いかかった。
ゴブリンは消滅した。
「だいぶ魔法の威力が強くなってきたな。ひょっとしたら、ゴブリンなら一人でもやっつけられるかもね」
「そうかもしれないけど、安全マージンはたくさん取らなくちゃ。油断大敵よ。必ず集団で敵にあたること。そうじゃなかったら逃げなさい」
「オーケー、わかったよ。ボス」
どうも嫌な予感がするので、
私は一人ずつの攻撃でゴブリンが倒せるかどうか
試してみることにした。
私のソリッドエアはゴブリンごときでは破れない。
それは実証済だ。
ソリッドエアで子どもたちを守りつつ、
魔法を発動してもらう。
まずは、調子に乗りやすいジャンからだ。
「へ、俺様の魔法にかかったらゴブリンの1匹や2匹」
「きたわよ」
「うっしゃー」
ゴブリンは私達に気づくと、棍棒をふりあげ、
醜悪な怒声を喚き散らしながら突進してきた。
「発射!」
ジャンのファイアーボールは見事ゴブリンに命中した。
だが、倒れない。
さらに凶悪な怒気をおびて突進してくる。
「うわわ」
ジャンは引きつって尻もちをついた。
どうやらもらしたようだ。
「ドガッ!」
ゴブリンはそのまま私のソリッドエアまで突っ込んできた。
棍棒を打ち下ろそうとしたところで、ようやく霧散した。
ソリッドエアには防御だけではなく、攻撃力もある。
「みんな、今の見た?」
「おお」
「獣は攻撃を受けると物凄く獰猛になるって聞いたことがあるけど、今のそれだったな」
「そうね。魔物や獣と正対しないってのは注意しなくちゃいけないわね」
このできごとはみんなのトラウマになったようで、
以後は驕ったことを言わなくなった。
なんにしても、
私達は安定的に食糧を手に入れられるようになった。
これで商人のアンドレさんにお礼ができる。
アンドレさんは孤児院教会と取引があって、
定期的に教会を訪問する。




