「召喚された男」
「ただいま、、」
玄関の扉が開く音と共に男は言う、
男は部屋に入り、リビングのソファに力無く座り込む。
何も無い虚空を見る男の後ろには仏壇があった、写真に写るのは一人の女性と一人の少女、
「テレビでも、つけるか、、、」
男は力なくリモコンを持ちテレビをつけた、テレビではちょうど速報のニュースがやっている、
「今日朝八時頃、朝鳴市にある自衛隊駐屯地から戦車二台が消える事件が発生しました。尚、この事件が窃盗なのかどうかは未だ分かっておりません、これで朝鳴市での消失事件は12回目です」
───・・・
・・・・
「そんなことか、、」
戦車が消える、普通ならば市民は焦ったり怖がったりするものなのだろうが朝鳴市では、日常茶飯事だ、もうそんなことで驚いたりする者も消えてしまった、消えた物が何処へ行ったのか、誰が盗ったのかも分からない、だが、そんなことはどうでもいい、そんなこと、、
「くっ!!!うぅ、、ああ、、」
いつの間にか目から涙が流れる、
消失事件、それは物だけではない、者にも起きる事象である、俺の家族は四回目の消失事件で消えた、あの日はいつもと同じように玄関を開け『行ってきます』と言った、それだけだった、なのに何故だ、何故家族を奪うんだよ、、俺はただ平和な日常を歩みたかっただけだ、
「なのに何故、何で俺から奪うんだよ、、俺の日常を奪うんだよ、、」
全てが嫌になる、日常を壊したこの世界が憎い、死にたくなることだってある、実際、何回かリストカットをした時だってあった、だけど死ねなかった、意識が消えそうになると家族の顔が浮かぶ、
そしたら消えかけた意識が引っ張り戻されるようにハッキリする、そしてさっきまで無かった死への恐怖が急に浮き上がって、死にたくないって思っちまう、そのせいで今の今まで死ぬことはでき無かった、
そんなことを考えているうちに涙は消え、ただ脱力した体でソファに座る自分がいた、
「・・・もう寝よう、、」
そう言いながらベッドへ向かう男の後姿は力無くとても弱々しく見えた、、
──────
ピピピ!!ピピピ!!
「うぁ、、もう朝か、、」
男は、起きるとそのまま洗面所へ向かう、そして顔を洗い歯を磨いて、リビングでインスタントのカップ麵を食べて、スーツに着替えて玄関へ向かう、
「行ってきます、、あ、」
そう言いながら振り向く、、
今でもしてしまう家族がいた頃の癖、、今でも抜けないただの癖、、でも忘れてはいけない、忘れたくない癖、、あの二人が居たことを覚えている為にする癖、これは今の俺にとっては大事な儀式だ、
そう思いながら玄関を出る、外の景色は眩しい、日差しが地を照らし熱を与え、風が仄かに鼻をくすぐり身体で風を感じることで身体があることを実感させてくれる、
「行こう、」
男は、そう言いながら外の世界へ歩みを進める、、、瞬間
《適正有、転送開始》
謎の声が脳内に響く、
「…!、、何だ!」
振り返り確認するが声の主は確認出来ない、それどころかいつもの様に家があるだけだった、
然し安堵したのも束の間、地面に謎の紋様が刻み込まれる様に描かれていく、
「は?、、んだよこれ、」
身体が足先から段々と分解するように消えていく、
「おいまて、待ってくれ、なんだよこれ、」
男は怯えたが、それも一瞬で過ぎた、
そうだ、俺は死にたかったんだ、こんな世界で生きたくないと思って自殺までしようとしたじゃないか、なのに何故、どうして怯える?、やっと念願を叶えることが出来るのに
と、そう考えているとさっきの恐怖は何処へ行ったか、消えることを嬉しいとさえ思えた、
既に分解は腰の辺りまで来ている、やっとだ、やっと解放されるこの腐った世界から、
「ああ、終われる、」
男は、そう言って世界から姿を消した、
──────
死とはこのような感覚なのか、意識はあるのに視覚や聴覚、触覚に嗅覚、それに味覚、五感の全てが死んだように感じない、当たり前だ、俺は死んだのだから、
《召喚者の条件との合致率99.9%、召喚に対する最適化を開始、肉体を再構成、龍人へ構成開始…………完了。魔神因子の取り込みを試行、、失敗、肉体の強度不足が原因と推測、肉体の強度を上昇させ再試行、、失敗、肉体の魔力適正を上昇させ再試行、、失敗、全面的な能力を上昇、思考速度を上昇、肉体硬化・再生能力を付与、龍化変異能力を許可、この状態での再試行を開始、、成功、魔神因子の獲得に成功、魔神の加護を獲得。》
《召喚準備完了》
さっきからこの声はなんだ?聞こえないはずの声が響くように聞こえる、召喚者?肉体を再構成?何を言ってる?それに魔神因子ってなんだ?、、
《召喚実行開始》
その声が響いた直後、身体が引っ張られる感覚と共に、身体が軽くなった気がした、
『ああ、成功した、、救世主が来られた、』
瞼越しの視界が眩しい、それに何やら騒がしく声が聞こえる、なんだ?どうなった?、
そんな疑問もあるが一度目を開け確認しようと重い瞼をゆっくりと開く、開目一番に飛び込んできたのは、空だった、死ぬ前に見た空より少し光が弱く目が慣れやすい、
『おお!!目を御開けになられたぞ』
[[おお!!]]
周りからまた騒がしい声が聞こえる、
誰だろうか、俺は死んだのでは無いのだろうか、先程無かった五感は戻り、鼻を森の香りが通り抜ける、一度上体を起こしてみてもいいかもしれない、男は、そう思い体を起こす、然し男の眼前に広がる景色に男はそのまま固まるしか無かった、
見知らぬ森で、見知らぬ人々に囲まれている、それが今の自分自身の現状だった、そもそも自分を囲っている者達が人間であるかもわからない、ある者は額から角が生え、またある者は身体中が覆われる程体毛が生えている、他にも様々な特徴を持った奇怪な人型の生物が自分を取り囲んでいた、
暫くするとその人々?の中でも高齢であると思われる一人の角を持った老人が自分の元へ歩いてくるのが見えた、
「我らが救世主様、お初にお目にかかります、私は鬼人族の長老、、名を、レヴィ・センドルクスと申します。」
そう言って老人が跪くと、周りの者達もそれに続いて跪き始める
この老人は自己紹介をしているようだ、何故か言葉は分かる、然しここは何処なのか俺はどうなったのか、疑問は次々と湧いてくる、
「何かと分からない事も御有りでしょう救世主様、どうぞこちらへいらしてください。」
老人はそう言うと手招きをして男にこっちに来るよう伝える、男は、状況がよくわからないがついていくことにした、老人は男を何処かに案内する中で、男へ状況を説明し始める、
「救世主様に、まず我々が誰なのかを教えておきましょう、我々は,混じり人,と呼ばれる者です、」
「混じり、、人?」
男は知らぬ地で、知らない単語を言われ、混乱し掛けながら聞き返した、
「そうです、我々混じり人とは、様々なものと人間との狭間に位置する存在です、」
「様々なものと、、人間の狭間?」
「そうです、、生物から始まり事象や概念など様々なものと人間の間に位置する存在、人間共は、我々を,亜人,と呼びます、救世主様はお好きなように呼んでいただいて構いません」
唐突に知らない情報を伝えられて訳が分からないが、人間、共?こいつらは人間と対立してるのか?
「なあ、お前たちは人間をどう思ってるんだ?」
「人間?欲に駆られた神に狂信して言う通りに動くだけ動くただの傀儡のことですか?」
「そうだ、さっきお前が自分で人間に亜人と呼ばれてるって言ってたろ、、」
欲に駆られた神?傀儡?どういうことだ?
「なら俺だって人間なのに、どうして俺はいいんだ?」
「救世主様が人間?はっはっは!御冗談を、貴方は今は亡きはずであった誇り高き混じり人である、龍人族ではないですか、それに貴方様からは魔神様と同じ力を感じます、」
老人は微笑みながら答える、
魔神と同じ力?そういえばさっきここに来る前に聞こえた声が、魔神の加護を獲得って言ってたな、だが待て俺が龍、、人、?落ち着け、、落ち着け、まだ聞きたいことはある全てはそれを聞いてからだ、
「それともう一つ聞きたいんだが」
「何でしょうか?」
「俺がここに来た時、成功した、と言ってたな、それはどうゆうことだ、」
男は怒気を含んだ声色で問う、
「ああ、それは救世主様が召喚されるまでにも何度か召喚の儀を行っており──、、うッ!!───」
男の中で何かが切れる、咄嗟に老人の首に両腕を掛け、締め上げる、周りに居た者たちは急な男の変化に怯えて距離を取った、
「今なんつった?」
「・・ぅ、がっ!何を、、ぅう、がぁ、」
「今てめぇ何度か儀式をやったつったよな、てめぇらが璃花と舞里菜を誘拐したのかっ!!」
男の怒りと腕の締め上げる力が上がる、
「ぅ、、ぁ、何を、言っているか、、分かり、、ませんが、それは、きっと、人間の仕業、、だと、思われ、、ます、、」
「人間の、仕業?」
男の力が弱まり老人を降ろす、
「ごはっ!!げほっ、ゲホッ!!」
「何故、人間の仕業と言える、」
「それは、ゲホッ、これから話そうとしていた、ことともかぶさるのですが、人間共は戦いの中で見たこともない兵器を使うのです、」
「見たこともない兵器?」
「はい、弓よりも強く鎧をも貫く玉を飛ばす奇怪な形をした筒や、木を押し倒し弓も刃も通らない鉄の身体を持ち砲弾を飛ばす獅子など、この世界では見たこともない兵器を使うのです、」
鎧をも貫く玉を飛ばす奇怪な形をした筒、、スナイパーライフルのことか?
それに弓も刃も通らない鉄の身体で砲弾を飛ばす獅子って戦車か?
この世界の亜人とやらは面白い例えをする、だが何でこっちの世界にそんな物が、、
「それで、だからって何故、璃花と舞里菜を誘拐したのが、人間だって分かる、」
「それは、これから話そうとしていた、話しとも、より濃密に絡みますので先に最初に話そうとしていた事から話させていただきます、」
そう言うと老人はまた向かおうとしていた方向へ足を進めながら話し始めた、
「時は今から300年程前まで遡ります、この世界:メラエスには三人の神とそれに使える使徒がおりました、
この世界を創り上げた界創神:シネン
人間共に付く神、人神:ケファリニア、
混じり人側に付く神、魔神:ヴェラデッタ、
この時代に我々と人間との間に起きていた永き大戦にこの神々は心を痛め、双方の領域を侵略してはならないという神々の戒めを作り人と混じり人の争いを止め、そこから悠久に続く平和な時代を御作りになられた、、
はずでした、
100年が経とうとしたある日、我々の崇める魔神、ヴェラデッタ様が討たれたのです、」
「なあ、話の途中で済まないが、いいか、、」
「何でしょう?」
男は聞く中で感じた疑問をそのまま問うた、
「何故、神を認識する事ができるんだ?」
老人は男の問いに首を傾げ答える、
「はて?認識する事が出来る、とはどうゆうことでしょうか?」
「俺の元居た世界では神とは人間には見ることのできない天界に住まうものだと考えられていたからだ、」
それを聞いた老人は納得したように頷き、男の問いの答えを言う、
「なるほど、そうゆうわけでしたか、勿論我々も神々をこの眼で見たことはありません、然し我々の住まう、人間共が魔境と呼ぶこの地には魔神:ヴェラデッタ様の加護の力が満たされ、いつでも神に守られている事を実感できていました、、」
そこまで言うと一度言葉を切り老人は一瞬俯き直ぐに言葉を繋ぐ、
「然し、今はその加護の力が消えてしまったのです、それは、言ってしまえば我々を守っていた魔神:ヴェラデッタ様が討たれたと言っても過言ではございません、
そして、それからすぐのことでした、人間共がこの地へ進軍を開始し始めたのは、、
人間共は魔神の加護の消えたこの地をただの利用価値のある土地としか思わず、我々を邪魔な存在と判断し虐殺を始めたのです、」
男はそれを聞いて、驚愕する、人間という生物はこの世界では完全なる悪に成り果てたという事実に、
「最初は我々も何とか対話を試みようと、人類語が話せる者たちを人間共の地へ先遣隊として送り出しました、ですが、、帰って来たものは二人だけでした、、そしてその帰って来た二人のうち一人は、、亡くなりました、、」
老人は俯き、俯いたまま話し続ける、
「そして我々は改めて現実を叩き付けられました、最早、和解は不可能であることを、そしてそれと同時に我々も徹底抗戦する事を心に決めました、」
老人は顔を上げ、話を続ける
「そこからは我々が一気に優勢になりました、我々にも混じり人としての意地や実力があります、人間共は魔力適正が強い種ではありますが、それだけでは我々には敵いません、そしてその防戦をするに当たり、その筆頭を担う種族がおりました、それが貴方、救世主様の種です、破壊と伝説という二つの概念より出でた、混じり人の中でも最も強力と言っても過言ではない種族:龍人、」
「俺が?」
男は急に自分にスポットが当たった事に驚きながらも自分がそんな存在であることに混乱しながら答える、
「俺自身そんな力を得たつもりなんてないんだが、、」
「何をおっしゃる、、貴方様から漏れ出すその強者の気配、力を得たつもりがないなんて、謙遜しないでいたただきたいですぞ、」
そう言って老人は少しだけ口角を上げる、
「話しは戻りますが、そうして我々が優勢になってから百余年、突如その均衡は崩れました、人間共の中に勇者と呼ばれる存在が現れたのです、それは今までの人間と違い、生物全てを圧倒する力を持った人神器と呼ばれる兵器を持っておりました、そして今その勇者によって再び混じり人の虐殺が始まり混じり人はまた数を減らしています。」
そして歩き続けていた老人は足を止め、目の前に現れた緩やかな丘の頂きを見据える、
「救世主様ならば、あれを扱えるかもしれませんね、、」
その丘の上にあったのは、、
「あれは魔神:ヴェラデッタ様が作り上げ、この地に降ろされた、ヴェラデッタ様の最期の遺作、《霊壊双剣:セトメア》でございます、」
丘の上には己を扱える者を待つ様に石碑の前に鎮座した二つの剣があった、
「・・・つまり俺はあれを使えるかどうかを試される訳か?」
「誠に」
「だが何故、俺なんかがしなきゃいけない、俺が、その、、救世主?だからか?、」
「いえ、そうゆう訳ではございません、これまでもあの双剣を手にしようとした者は何人とおりました、然しその全員が剣に触れた数秒後に身体が燃え塵にされてしまったのです、ですが、救世主様からは、我々が今まで感じていた魔神の力を感じます、だからこそ貴方様なら扱えるのではないかと思い、案内した次第にございます」
老人はそう言うと跪き、双剣の元へ行くように促す、
「・・・」
男は急な話についていけてはいなかったが、とにかくあの剣を手に入れなければならないという思いが、己の身体の内からも現れ、衝動的に歩を剣へと進める、
「これを触るんだよな?、、」
男が目の前に鎮座する双剣に恐る恐る触れると、、光に身体全体が飮み込まれる感覚に落ちた、
──────
気付くと、視界には漆黒が広がっていた、
「ここは何処だ?」
男は辺りを見回すが全てが黒一色のまるで色が抜け落ちたような空間に居た、
「なんだ、、これ、身体はある、、」
下を向き体を見るが体はしっかりと確認できた、
『なんじゃ、また挑戦者でも現れたのか、、』
空間に声が響く、女性の声だ、、しかも幼い少女の声と例えるのが正しいような子供の声。
誰だ、と男は問うがその答えは帰ってこない、沈黙が続いていると正面に瞬きの内に何かが現れる、
「ほーぅ今度は龍人か、、珍しいのう、確か滅んだはずじゃなかったか?」
目の前の何かはそう言って近寄ってくる
「ああ、そうか、、通常の状態で我を視れる者などおらんかったわ、配慮が足りんくてすまんの、」
そう謝った何かは男が凝視を続けている内に何かから段々と形を変え、者へと姿を変えていく、
「ほれ、これでお前にも視れるかの?」
何かだった者は、そう言って、角を生やし、紫紺と蒼色の色違いの目に金色の虹彩を持ち、深紫の髪を持った美しい少女の姿へと形を変えた、
「・・・えっ、、ああ、」
急に現れた少女に呆気に取られながらもかろうじで気の抜けた反応を取る
「なんじゃ折角出てきてやったと言うのに、、、ん?、んんんんん!!」
急に顔を近づけ自分の顔を覗く少女に男は後ずさりしながら聞く、
「お、、おいなんだ、ジロジロと俺の顔を見て、なんかついてんのか?」
男の質問に少女は答える事無く男の顔を覗き続け、ある程度見たところで、少女は理解不能な事をい言い出した
「なるほど!!貴様、我の息子か!!」
───・・・
──────・・・
「は?」
男は固まった、何故も何も当たり前だろう、見知らぬ人、それも外見は自分よりも歳下に見える位小さい少女に,私の息子,とよく分からないことを言われたのだ混乱するのは当たり前だろう、
「お前何言ってんだ?」
「『何言ってんだ』、じゃと!お前は我の息子じゃと言っておるのじゃ!」
「いや、、俺はお前が母親だと思ったことは無いし、そもそも初対面だろ、」
「何?、、確かに貴様とあった、事はないが、、じゃがなあ貴様からは我と同じ気配を感じるんじゃがのお、」
「というか、お前さっきから喋ってるが誰だ?」
「ん?ああ、我はヴェラデッタ、魔神じゃよ!!」
少女は胸を張り威張る様にドヤ顔を見せながらこちらチラチラ見ている
「・・・やっぱりか、、」
「え、、なんじゃ、魔神じゃよ、ま・じ・ん!、もっとこぉなんかないのか!!」
男の薄い、というか、ほぼ呆れ半分の様な反応に、少女は顔を赤面させ半泣きなりながら必死にリアクションを求めるが男は無情にそのお願いを突っぱねる、
「で、何で魔神がここにいるんだ?死んだんじゃないのか?」
男の問いに、半泣きだったヴェラデッタはため息をついて答える、
「死んだ?我は死んでなど無いぞ、確かにケファリニアのバカが我の身体を木端微塵にしたせいで肉体はないが、こうして意識空間では生きている、元をたどれば我やケファリニアも精神生命体じゃからな、体はいらんのじゃ」
その回答に男は、納得した、
「なら単刀直入に聞くがここは何処だ?」
「ここは我が作りし武器の中に広がる意識空間じゃ、息子よ、お前が《霊壊双剣:セトメア》に触れたからここにおるんじゃろ?」
どうやら息子と言うのを訂正する気はないらしい、
「確かに触ったが、、」
「やはりな、ならここからは我も聞こう息子よ、お前がこの剣を欲する理由は何だ?」
急に真剣な面持ちで話し始めたヴェラデッタに一瞬鳥肌が立ちかけるが心を落ち着かせ、その問いに答える、
「理由は、、家族を探すためだ、」
「家族?」
「そうだ、俺は家族を見つけて元の世界に帰る、その為にお前の剣を使わせろ、」
男の答えに、ヴェラデッタはニヤリと不敵な笑みを浮かべた、
その反応に男は冷や汗が流れる感覚を感じた
「なるほど面白い、今までの奴らは、やれ人間共を滅ぼすだの、やれ世界に平和をもたらすだの、とそれしか言ってこんから退屈だったんじゃ、それに比べ息子よ、お前は己の欲が為に我の力を欲するとな、」
そこまで言うとヴェラデッタは笑い始めた、
「二ハハハハ!!実に良い!!やはり我の眷属はそのぐらい欲望に忠実な方が良いわ!それに息子からの頼みじゃしな、いいじゃろう我の力を貸してやる、然し、その前に我からも力を貸す条件を課す」
ヴェラデッタの提案に、男は身構えそうになる、
「条件とは、なんだ?」
「簡単じゃ、、、我の息子であることを認めろぉ!!」
・・・杞憂だった、
「・・・はぁ、何度も言うが俺はお前の息子ではない大体何で俺が魔神の息子なんだ?」
「ん~、良し、息子よお前には神々にとって、息子や娘、己の子の定義を教えよう、」
急に始まった解説に,?,が浮かぶがまあいい聞こう、
「我々、神々は精神生命体という話はしたな、」
「ああ、先程言っていたな、」
「そう、じゃがなあ、我々も,死,という概念がないわけではないのじゃ、
我々は精神生命体、そう、実体がないだけなのじゃ、だからこそ我々の精神を創る神の因子それこそが我々神々の本当の肉体と言ってもいい、それが潰えれば我々も死ぬ、」
「はぁ、」
「そして我とケファリニアもまた界創神:シネンの子と言っても過言ではない、
神の子とは、己の因子を身体の一部として持った者の事を己の子として迎えるのじゃ、
我も元はただの世界に満ちる魔力の一部じゃった、じゃがな、シネンが己の因子と魔力で人形を二つ作った、それは動き出し、意思を持った、それが我とケファリニアじゃ、」
ヴェラデッタは懐かしそうに自分の手を見ながら言った、
「シネンは我とケファリニアに〈自分が二人の母〉だと言った、
お前もこの世界に来る時に聞いたんじゃないか?
シネンの、我が母の声を、」
ヴェラデッタは少しのいたずら心が入ったような優しい目をしながら男を見る、
「確か、魔人因子の取り込みとか、聞こえたな、」
「それが、シネンの声じゃ、それで魔神因子を取り込んだお前は我の息子になったのじゃ」
男は、いまいち納得は出来なかったが、その話が本当である気がなんとなくだがした、
「・・・はぁ、分かったじゃあ息子でいいもうこの話題で話すのは疲れた、」
「そうか、フフ、いいじゃろうなら本当の条件を話そう!!」
息子であることを認めた瞬間に軽く笑い、男に向かってビシッと指を指しそう言った、
「・・じゃあ、今までのこの会話は何だったんだ、、」
「ん?そんなの簡単じゃろ?我の息子であることをお前自身の口から聞きたかっただけじゃ!」
ヴェラデッタはそう言って満面の笑みで笑った、不本意だったがその笑顔はとても魔神なんて言われる神がする笑顔にはとても思えなかった、だが、少し怒りたくなったのも噓ではない
「ならその本当の条件を聞かせてくれ、」
「よかろう!それはこれの他に残り11個ある魔神器を全て回収して欲しいんじゃ、」
そう言ったヴェラデッタに男は問うた、
「何故、その、、魔神器が欲しいんだ?」
「それはな、我が完全に復活するためじゃ、」
「復活?」
突然放たれた言葉に思わず聞き返してしまった、
「そう、復活じゃ、時に息子よ我が魔神器を創る時にはその作品一つ一つに己の因子を混ぜ込んで創ったのじゃが、理由は分かるか?」
「え、、あーー、えと、神器にするため?とかか?」
急にクイズが始まり咄嗟の答えが思いつかずあたふたしながら答える、
それにヴェラデッタはやれやれと首を横に振った、
「外れじゃ、神器と言うのはな、息子よ、神々が創った物の事を言うのじゃ、別に因子を入れるかは個人の自由という事になるのじゃ、まあいい、もう答えを言ってやろう、答えは身体が消えることを予測出来ていたからじゃ、」
「何?」
ヴェラデッタの物言いは明らかにおかしい、何故、死ぬことが予測出来たのか、何故、死に対して抵抗しなかったのかなど不可思議な事は様々だが、一応聞き続けた、
「ケファリニアは、いや、あの馬鹿弟は何度も何度も何度も何度も、姉である我を馬鹿にするわ嫉妬するわでこっちもイライラしておったんじゃ、じゃからな嫉妬に駆られたあの馬鹿が我を殺そうとするのは容易に想像出来た、とゆうわけじゃ!!」
ヴェラデッタは半ばキレながらそう叫んだ、
「はぁ、」
「じゃから!!因子を分け与えた魔神器を集め因子を全て回収出来れば復活することも容易にできるのじゃ!!」
「そう、なのか?、」
「そうなんじゃ!!」
大きい声でそう断言するヴェラデッタに少々押され気味になっていたが取り敢えず一度深呼吸をしよう、ふぅー,はぁー、良し落ち着いた、
「だが、俺はその神器とやらの姿も名前も知らないのにどう集めろというんだ?」
「我が教えてやる、じゃから安心せいお前は我が言うままにただ集めればいい、そうじゃな、、先ずは四つの神器を集める事を目標としよう、」
そう言って四つを示す指を立てるヴェラデッタに男は頷いた、
「分かった、四つの神器の名を教えてくれ、、」
「お!、乗ってきたのう、良し!教えよう、その四つの名を、」
ニヤニヤしながらヴェラデッタは話し始める、、別に乗ってきてなどいない会話に疲れてきただけだ、
「《獄煉幻槌:グレイゴア》、《怠惰の面:大罪者》、《惑式思杖:リアノール》、《時錬業銃:周回者》これら四つをお前には集めて貰う、良いな?」
「ああ、それはもう分かったからいいのだが一応他の七つの神器の名を聞いといてもいいか?」
「ぬ?おう、良いぞ?」
突然興味を抱き始めた、自分の息子の発言に少しの嬉しさと驚きが滲むがまあいいかと思うヴェラデッタであった、
「《煉怒豪剣:ジェランレム》、《壊星法弓:レファレンス》、《聖隷縛盾:デリザビューア》、《黎幻拳機:デュランダル》、《焉煉幻鎌:切裂魔》、《塵狩斬爪:アイジア》、《大罪錬斧:ヴァルドニア》これが残りの神器の名じゃ満足か?」
ヴェラデッタがそう聞くと男は、小さく一言(ああ、)というと、口をつぐんだ、その様子を見たヴェラデッタは何故だか分からないとてつもない程の『心配』という気持ちに駆られた、
(これが母性と呼ばれておる物か、我が勝手に我と同じ気配を持っていた此奴を息子じゃと言ったが、我も我で本当に息子の様に思えるものなのだな)
ヴェラデッタも己が母親という自覚を自分の身体が無意識にしていたことに驚きながらも、優しく男に声を掛ける、
「さて息子よ、そろそろ時間じゃ、お主を見極める事は十分に出来た、この剣と我はお主に力を貸してやろう、お主も現実に帰さないとな、」
男は答えないが、ヴェラデッタは冷静に静かに、現実帰す準備を進め最後に男を帰す瞬間に男は遂に口を開いた、
「ヴェラデッタ、俺は、お前を本当に親として見てもいいのか?」
ヴェラデッタは男が放ったその言葉に目を開き固まった、だが、直ぐに満面の笑みを作り答える、
「///もちろんじゃ!!///」
ヴェラデッタのその声が届いたかは分からないが意識空間から帰る瞬間の男の顔は笑っていた気がした
書く時書く時にストーリーを瞬間的に想像して展開していってるんで投稿はまちまちだしストーリーに矛盾が出てくるかもですけどよろしくです。_○/|_