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ひとりごと  作者: 遊々
8/11

トラウマを乗り越えるには楽しい記憶で上書きが一番

2021年08月29日

 私は昔、カラオケが大嫌いでした。

 歌に興味がなく、歌うことに慣れていない中学生の頃。学校の友人とカラオケに行く機会が訪れ、友人とカラオケに行くという初体験をしました。

 その時のことは今でも覚えています。私は当時歌という歌に興味がなく、なんとなく知ってるかなくらいのものが殆どでした。サビだけ知ってる、みたいなそんな程度です。

 そんな人間がカラオケに行くんですから、もうドキドキですよ。

 受付をして狭い個室に入り、分厚い本(当時はデンモクなんて便利なものは存在していなかったので、辞書みたいな鈍器になりうる厚さの本から曲を選んでその曲の番号をリモコンに打ち込んでました)を開いて皆でキャッキャしながら好きな曲を探す。

 慣れない空間、慣れない状況。だからこそ初体験から高揚する気持ち。落ち着かなくてなんとなくページを捲って曲を探すふりをしながら、音楽の授業以外で挑戦したことのない「歌う」という行為への恐怖感から歌わずにやり過ごしていました。

 だけど歌う為にカラオケに来たわけですよ。歌わずにいれば言われますよね。

 好きな曲を入れなよ、と。

 そう言われても音楽に興味がない私はパッと思い浮かばなくて焦りました。焦りと好奇心と恐怖心に駆られながらなんとか捻り出したのが、当時アニオタの沼に片足を突っ込んでいたおかげで知っていたあるアニメのキャラクターのキャラソンでした。

 歌う、という行為に馴染みがない故にキー設定が上手くいかない(異性の歌う歌を選んだ為)、声は出ない、うろ覚えで音程は不安定、という三重苦を味わいながらもなんとか歌い切って安心していたところ、突然画面に採点画面が出てきたんです。

 それは友人が入れていたもので(採点を多分カラオケが始まった最初の方で入れていたのですが、緊張と曲を選ばなくちゃという焦りから全く気にしておらず、その時初めてきちんと認識した)、私は驚きながらも画面を見つめていました。

 採点結果は、62点。うろ覚えだけど確かこのくらいだった気がします。

 友人が爆笑していましたが、初めて挑戦してそれを笑われるというのが凄く恥ずかしくて惨めで、歌うことは苦しいことなんだと認識し、私はこの日以来カラオケが大嫌いになりました。


 そんな私にある時、転機が訪れました。

 高校一年生の時に、中学生時代にカラオケに行った友人とは別の友人にカラオケに誘われました。だけど恥ずかしくて惨めな体験を思い出し、苦い気持ちと断りたい気持ちが込み上げてきたのですが、誘ってくれた友人はいい意味で変わった人だったので、この人となら行ってみてもいいかもしれない。そう思えて誘いに乗りました。

 結果から言えば、凄く楽しかったです。この頃になるとアニオタの沼に腰まで浸かっていたのでアニソンをメインに好きな曲を開拓していました。歌うのは依然として苦手ではあるのですが、友人は私の下手な歌を聞いてもそれには特に触れず、「この曲いいよね」と私の好きな曲を良いと言ってくれました。

 その時に思ったんです。

 自分の拙い歌唱力なんて気にせずにただ好きな曲を歌う。好きな曲を良いって言ってもらえる。それってこんなにも楽しいことなんだなって。

 それ以来その友人とカラオケに行く機会は増え、私はいつの間にかカラオケが大好きになっていました。今では一人カラオケにバンバン行きますし、趣味を聞かれたらカラオケと答えるくらいには本当に大好きです。


 今でも採点は苦い思い出があるので好きじゃないのですが、たまに歌唱力確認の意味でカラオケで採点をすると80点以上が普通になりました。誰かとカラオケに行けば「上手だね」って褒めてもらえるくらい、爆笑されてしまうレベルから上達することができました。

 中学生時代の自分に「他人に歌を褒められるようになるよ」って言っても、きっと苦い顔して信じてくれないと思うんです。それくらい、本当に初めてのカラオケは嫌な体験だった。もうトラウマと言ってもいいくらいに。

 それなのにこの変わりよう。人間って嫌なことに対して良い縁と「楽しい」って気持ちがあれば、こんなにも変われるんだなと、今でも嫌なことがあるとこのことを思い出します。

 今嫌だと思っていることも、良い縁とそれに付随する「楽しい」があれば好きになるかもしれない。トラウマになっても、楽しい記憶で上書きしてしまえば乗り越えられる。

 それを教えてくれた友人には、感謝してもしきれません。

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