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<一> 改名そして転生

俺の名は悪鬼羅刹の田中。



社会の荒波と戦う中年サラリーマンだ!



「おい悪鬼羅刹!得意先から電話きてるぞ!」



「はい!かしこまりました!」



「羅刹さーん!ここハンコ足りない!」



「すみません!今持ってきます!」



同僚ももちろん俺のことを悪鬼羅刹と呼ぶ。



一般社会でで悪鬼羅刹と呼ばれる中年は俺ぐらいのものだろう。



発端は昨年の忘年会ーーー



俺は長年会社の窓際席を確保し続け、上司はもちろん、同僚や後輩にもバカにされる毎日を送っていた。



「田中!我が社の伝統である忘年会挨拶を任せてやる!滑ることは許されんぞ!」



「はい!頑張ります!」



上司の無茶振りに苦心した俺は、当日まで何も思い浮かばず、土下座するつもりで会場へ向かった。



「それでは伝統である我が社忘年会の挨拶を田中さん!よろしくお願いします!」



頭は真っ白。しかしやるしかない。



意を決して登壇し、マイクスタンドに向かって全力で土下座をかまそうと助走に入った瞬間、内なる心の声が聞こえてきた。



「ーーー本当にそれでいいのか?」



「ーーーこの歳まで虐げられ、その度にヘコヘコして」



「ーーー哀れな中年を威圧し、嘲笑し、踏みにじる」



「ーーーその非道、まさに」



「………羅刹」



いつのまにか、俺はマイクスタンドの前に立ち、マイクを握りしめていた。



「どうした田中!?」



「田中さん!?」



ーーーもう虐げられる側は、嫌だ。



「俺は……」



ーーー虐げるほうになりたい!!



「俺の名は、悪鬼羅刹の田中だぁぁぁぁ!!!!」



そして数日後ーーー



忘年会で全身全霊でシャウトした後、俺は泡を吹いて気絶し病院に運ばれた。



目覚めてすぐ上司に電話をかける。



「おお、目覚めたか!伝統である忘年会での挨拶、見事だった!改名届けは出しておいたぞ!」



忘年会をぶち壊した責任を取り、上司はクビにされていた。



元上司は退職届けのついでに俺の改名届けも提出してくれたらしい。



「悪鬼羅刹の田中さーん!病室での電話はやめてくださーい!」



悪鬼羅刹の田中、ここに誕生せり。



ーーーそして現在



俺の名は悪鬼羅刹の田中。



改名した後も変わらず窓際を堅守している。



俺の事を悪鬼羅刹と呼ぶ同僚達は極悪非道だ。



この世界では、呼び名が変わった所で本質は何も変わらない。



悪鬼羅刹となって成し遂げた事と言えば、この名と引き換えに嫌な上司をひとり葬っただけ。



今日もひとりコンビニで酒を買い込み、飲みながら帰路につく。



心の声が聞こえてくる。



ーーーこれで満足か?



そんなわけ、ない。



ーーーお前が本当にやりたかったことはなんだ。



俺が本当にやりたかったのは……



キキーーーッ!!ドガン!!



酩酊して千鳥足だった俺は、居眠り運転で突っ込んできた大型トラックに轢かれた。



「もっと、いい人生を歩みたかっ……た……」



こと切れたはずの俺の耳に、心の声が聞こえてくる。




ーーーその願いしかと承った。




悪鬼羅刹の田中、異世界へ発つ!




ノリで書いてしまった、後悔はしていない

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