理解、出発
リヒトフォーフェンは手紙を読み終わると、早速行動を始めた。
「よく分からんが、要は俺は別世界で生きてるって訳だ。」
自分の気持ちを整理するため、把握した状況を声に出す。
理由は不明だが、エンジンは動き続けている。
ここで目覚めてからかれこれ30分ほど経っているが、燃料も減らないし、アイドリングが驚くほど安定している。
それはともかくとして、何かしらの行動に出る必要がある。
ここは何も無い荒野の真ん中、このままここに留まれば餓死してしまう。
リヒトフォーフェンは愛機のスロットルを開き、離陸滑走に入った。
リヒトフォーフェンは特にトラブルも無く離陸に成功した。
そして高度を上げ、周囲を見下ろすと、数十キロ先に村と思しき建造物を目視した。
リヒトフォーフェンは最初の目的地をそこに決定するのだった。
村にたどり着くまでに時間はかからなかった。
離陸から数分で機は村の上空に到達し、リヒトフォーフェンは着陸に適した地形を探していた。
すると、村からそう遠くないところに草原のような場所があるのを発見する。
(ここに降りて、あとは徒歩だな。現地人が蛮族でないことを祈るばかりだ...)
さて、ここから村まで目測で1キロといったところか。
リヒトフォーフェンは歩き出した。
「おーい!誰かいるか!開けてくれ!」
リヒトフォーフェンはいま、村の入り口にある門の前に到着し、大声で村の者に呼びかけている。
それなりに栄えている村のようで、立派な門がそびえているのだが、それが閉まっているのだ。
少しして、中から慌てた様子の衛兵と思しき男が出てきた。
「待たせてしまってすまない、私はブータブル村警備隊の者で、名をルーブルという。今、魔物の動きが活発になっていてな。警戒して門を閉じていたんだが、担当者が居眠りをしていたんだ。本当に申し訳ない!」
(魔物とかいうのも存在するのか。出会わなかったのは幸運だったな。)
「そうだったのか。そんなことも知らず、のんきに歩いてきてしまっていた。」
「とにかく、村の近くとはいえ外に少人数でいるのは不味い。村に入ってくれ。」
成り行きで村に入ってしまったが、どうやら普段は特に検問などもなくフリーパスの門なので問題ないらしい。
また、ルーブル氏曰くこの村は、このあたりを治めるヴィスタ卿という貴族の領域だが、そのなかでも辺境と言える開拓村なのだそうだ。
リヒトフォーフェンは、変に身分を隠すのも良くないだろうと思い、自身の身の上についてルーブルに話した。その結果として興味深い情報が得られた。
・この世界には、時代は違うと思われるが、おそらく自分と「同郷」の者が少なからず存在する。
・この世界で飛行機を作っているものもいるという。ジローという男だそうだ。
これはもう、ここにいつまでも留まっているわけにはいかなくなってきた。
そのジローとか言う男にリヒトフォーフェンは強い興味を惹かれたのだ。