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タイムリープしたのに、何も使命がないのだが?  作者: 依水月
ガールズトーク
22/24

8-1 「二人の少女①」


「……」

「……」

 時は少しさかのぼり、来世が図書館を去った後のこと。

 清川 秋子は静かに、本を読んで過ごしていた。


姉崎あねさきさん、少し変わったな)

 横目でちらりと、近くに座る少女を見る。


 その姉崎 千鶴ちづるは、黙々と本を読みながら、自然な笑みを浮かべて楽しそうにしている。

 教室にいる時とは別人のように見えて、普段は自信なくうつむいている少女とは思えないほど、可愛く見えた。

 表情ひとつで女の子は変わるものだと、秋子はそのとき始めて気付いた。


「何の本を読んでいるの? 姉崎さん」

「……え?」

 気になった秋子は、千鶴に話しかけていた。

「な、なに?」

「その本、面白そう。何を読んでいるのか教えて欲しいの」

 さりげなく、少女は隣りの席に移動して距離を詰める。

「……こ、これ。どうぞ……」


 いきなり話しかけられた千鶴は、混乱しながら読んでいる本をそのまま渡す。

 図書館の外では接点がなかった千鶴としては、秋子に話しかけられるとは思っていなかった。

 そのせいで、タイトルや内容を聞かれているのに、本を丸ごと突き出してしまう。


「ごめんね、いきなりすぎたよね。本を読む姿すがたが素敵だったから、つい声を掛けたくなったの」

「う、うん」


(私、何か悪いことしたかな?)


 教室では、秋子は誰にでも気さくに見えた。千鶴に対しても普通に接してくれる人物だったが、自分から面倒な人間関係に首を突っ込む性格でもなかった。

 押しが強い部分もあるが、場の空気は読む。良くも悪くも、好かれることはあっても嫌われることのない少女。

 そんな風に考えていた秋子から、話しかけられる理由が見つからなかった。


「ピンと背筋せすじを伸ばそう? そして笑顔で。さっき、本を読んでいた時みたいに、笑った方が素敵だよ」

「あ、ひぅ」

 そういいながら、秋子は千鶴の背中に手を添えて、胸を張るように姿勢しせいを正す。


「や、やめて」

「ご、ごめん。痛かった?」

 千鶴は悲しそうに顔をゆがめる。

 そんな反応を返されるとは思わなかった秋子は、自分の軽率けいそつさを反省する。


「大丈夫……」

「こうした方がいいかなって、ついやりすぎちゃった。本当にごめんね」

「気にしてないよ」

「あの、姉崎さん。良かったら私と友達にならない? よく図書館にいるし、もっと姉崎さんのこと、知りたくなっちゃった。ダメかな?」



カクヨム作品URL

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883892890


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