7-3 「セピア色の思い出③」
「セピア色か……」
来世は思うことがあって、その日は地元の風景を眺めたくなった。
少し遠回りしながら、思い出に残っている場所をめぐっていく。
少女たちには『寄る場所がある』と言ったが、特別に決まった場所へ行きたいという意味ではなかった。
例えば、数年後に廃業する駄菓子屋さん。
老夫婦が営むそのお店は、店主の男性が亡くなってからは閉めてしまうことになる。
今は栄えている商店街も、十年後には半分以上がシャッターを降ろしていて、改装されることなく放置されてしまう。
お店だった場所が民家になることもあれば、新しくチェーン店がオープンする場合もある。
(懐かしいな……)
脳内では未来のことを想像し、肉眼では過去の姿を見てしまう。
十年で変わる町並みがあれば、ほとんど変わらない部分も残されている。
そんな懐かしさを感じつつ、もの寂しさに胸が熱くなってしまう。それが哀愁なのだろうと、来世は漠然と考えていた。
この先、来世が何をしようとも、きっと変わる未来はほとんど無い。
一人の少年が歩む道を変えところで、椅子取りゲームの結果が変化することはあっても、全体から見れば些細な範囲に収まってしまう。
「今度、カメラでも買おうかな」
それまで、写真には興味がなかったはずなのに、今はそれが無性に欲しくなった。
「そんなお金、持ってないけど」
そういう時に限って、自分が小学生であるのを実感してしまう。
来世にとっては、とても難しい問題だった。
最後に、公園のベンチに座りながら、昔は美味しいと感じていた駄菓子を食べて過ごしていた。
「美味しくない」
そんな言葉を呟きながら、来世の顔に笑顔が浮かんでしまうのは、それが懐かしい味だと感じる心がそうさせるのだろう。