表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイムリープしたのに、何も使命がないのだが?  作者: 依水月
幕間 その瞬間に立ち止まって
21/24

7-3 「セピア色の思い出③」


「セピア色か……」

 来世は思うことがあって、その日は地元の風景をながめたくなった。

 少し遠回りしながら、思い出に残っている場所をめぐっていく。

 少女たちには『寄る場所がある』と言ったが、特別に決まった場所へ行きたいという意味ではなかった。


 例えば、数年後に廃業する駄菓子屋さん。

 老夫婦がいとなむそのお店は、店主の男性が亡くなってからは閉めてしまうことになる。


 今は栄えている商店街も、十年後には半分以上がシャッターを降ろしていて、改装されることなく放置されてしまう。

 お店だった場所が民家になることもあれば、新しくチェーン店がオープンする場合もある。


(懐かしいな……)

 脳内では未来のことを想像し、肉眼では過去の姿を見てしまう。

 十年で変わる町並みがあれば、ほとんど変わらない部分も残されている。

 そんななつかしさを感じつつ、ものさびしさに胸が熱くなってしまう。それが哀愁あいしゅうなのだろうと、来世は漠然ばくぜんと考えていた。


 この先、来世が何をしようとも、きっと変わる未来はほとんど無い。

 一人の少年が歩む道を変えところで、椅子取りゲームの結果が変化することはあっても、全体から見れば些細ささいな範囲に収まってしまう。


「今度、カメラでも買おうかな」

 それまで、写真には興味がなかったはずなのに、今はそれが無性むしょうに欲しくなった。


「そんなお金、持ってないけど」

 そういう時に限って、自分が小学生であるのを実感してしまう。

 来世にとっては、とても難しい問題だった。


 最後に、公園のベンチに座りながら、昔は美味しいと感じていた駄菓子を食べて過ごしていた。


「美味しくない」

 そんな言葉をつぶきながら、来世の顔に笑顔が浮かんでしまうのは、それが懐かしい味だと感じる心がそうさせるのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ