7-2 「セピア色の思い出②」
「遠野くん、朝のスピーチ良かったよ」
「私もそう思った」
「うん……私も……」
図書館では、一部だけ人口密度が高くなった場所がある。
それは、いつも決まった場所に座る来世の周辺だった。
少年の両側には、秋子と千鶴が座っている。
千鶴だけは席をひとつ挟んでいるが、たくさんの席が余っているなかで、その場所を選んでいる理由は明白だった。
さらに、山田 美知子も来世と接点ができてからは、少しだけ近くに座るようになった。
「今日は早く帰るから。さよなら」
「もう帰るの?」
「寄る所があるから。今日は着いて来ないで」
来世が小学生に興味がなくとも、いつも図書館に通う少女たちへの挨拶は忘れなかった。
秋子は来ないときもあるが、おおむね決まった三人が図書館にいる。
「花岡先生、今日はこれで失礼します」
「珍しいわね」
最後に声をかけるのは、図書館の司書教諭を務めている花岡という先生だった。
二十四歳の女性で、さわやかな笑顔が特徴の先生でもある。
好みの異性という意味では、来世にとって直球な人物でもあった。
さすがに、自分の年齢を自覚する来世がアプローチすることはないが、基本的なコミュニケーションは欠かさなかった。
そして学校の外へ歩みを進めていく。