4-2 「学校に行きたくない②」
「あの、遠野君! な、なにも言わないの?」
「……なんのこと? 別に、言いたいことはないけど」
「あのね、前から遠野君とお話ししたいと思ってて、それでね、あのね……」
千鶴は何が言いたいのか定まらず、来世を前にして焦ることしかできなかった。
その様子を見かねたのか、ただ待つように千鶴の方を見ながら、一言だけ声をかける。
「いいからまず、ここに座って落ち着いて」
席に付くと、すこしだけ千鶴は落ち着いていた。
「遠野君は、その、私みたいにまわりから……いじめられたりしてて、でも平気そうで。だから……あの、その……」
来世の隣りに座っているため、視線を感じないのが救いだった。少しづつ口が動き始めると、千鶴はやっと本題を切り出した。
「学校に行くのが辛くなったり……そういうのなかった?」
「……なんだ、そんなことか」
「え?」
来世は何気なく言うものだから、千鶴はその言葉に耳を疑った。
「悩んだりしなかったの?」
勢いにまかせて、思わず来世の腕を掴んでいた。
「あ、ごめん!」
千鶴はすぐ手を離したが、歳の近い男子に触れることが初めてだったので、少しだけ顔が赤くなってしまった。
ちらりと来世の方を窺うも、特に気にした気配がなく、自分ひとりだけ熱くなっているのが恥ずかしく思えて、沈黙してしまう。