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名無しの少女
序章 名無し
ー息を呑む。
その光景は、生では見たことがなかった。
いつもの町の風景を、一瞬で消し飛ばすぐらいの衝撃波。
周囲には、建物の残骸が、散らばっている。
しかし、そのようなことよりも、一真は、目の前にいるイレギュラーから目が離れなかった。
衝撃波の中心に、一人の少女が立っていた。
誰もが、見たこともない美しいドレスを着ている。
「・・・」
何か言葉を発しようにしても、声が出ない。
何故だろうか、自分自身が見てきた物が、彼女より、汚れて見えた。
瞬きをしたくても、目が動かない。
それ程彼女に、視線を、注意を、心を、奪われてしまった。
あまりにも、尋常に、それこそ暴力的に。
「-君の名前は・・・?」
発することが出来た、この後殺されるかも知れないと頭に入れつつ、発した。
少女は、遅れて反応したのち、首を横に振った。
その時の少女の顔は、悲しんでいた。
この時、星河一真の物語は、始まったのかも知れない。