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少年、考える

さぁ……どうしたものか。

午前の授業が終わったにもかかわらず、俺は頭を抱えていた。

「うぉーい、ノム昼めっしー……?なにそれ」

「あぁ、響。飯買いに行く?」

「いやいや」

「あ、行かない?」

「行くけど!そうじゃなくて、それ」

「うん?あぁ、これねぇ……」

これねぇ……なんと説明すべきなのか……。

「友達になってください?って意味だよな」

「まぁ、八割くらいはな」

「残り二割は?」

「嫌がらせ」

その一言で響は爆笑した。

響の笑いのツボは浅すぎるとつくずく思う。

確か、小学校の頃もよく笑っていた。というか、思い出の中の響は大抵ずっと笑っている。

「いやー、ホント面白いなー」

「……」

「なーに黙ってんの」

「いや、これの差出人……馬鹿だなと思ってな」

二度目の爆笑。

俺は真面目に話しているのだが……。

「なになに、どこらへんが馬鹿なの!ねぇ、どこらへん!?」

「お、おい。落ち着け。お前の方が馬鹿に見えるから」

「まぁまぁ、早く!どこどこ!?」

全くコイツは……、そんなでかい声出したら周りが注目するだろうに。

できれば、こんな面倒ごとはバレたりしたくないんだから……。

「はぁ~……ほら、友達になってくれって書いてある割には、差出人の名前なし。これはもう嫌が」

「あっはっはっはっは!!ホントだ!馬鹿だぁ~!」

「おまっ……あー!もう!飯買い行くぞ!」

おもむろに響の首を掴んで教室から走って出ていく。

コイツは馬鹿だ。周りを気にしなさすぎる。

紙飛行機の差出人も馬鹿だが、コイツはそれ以上だ。

「おい、馬鹿!なんであんな声で笑うんだよ!」

「すまん、地声だ」

「そこじゃねぇ、お前ぶっ飛ばすぞ」

「なんだよ急に。わざわざ踊り場まで連れてきてさ」

「だから!声がでかいんだよ!お前は!」

「今はノムの方がでかいぞ」

「今じゃねぇ、ぶん殴るぞ、テメェ」

踊り場で大声出しても誰も気にかけたりしないが、教室だとほぼ全員が見る。一斉に。

考えただけでも寒気がしてくるほどだ……。

なんとかして黙らせればいいわけなのだが……。

「なぁ、響。俺が言いたいのはな、時と場所をわきまえて」

「おばちゃーん!焼きそばパン三つー!」

「お前、響、ぶっ殺すぞ、ゴラァ!」

人の話を聞かず、時と場所をわきまえず、自由奔放なコイツに彼女がいることが一番不思議でならない……。ほっとけないってレベルじゃないだろうに。


「で、ノムはどうするつもりなの?あ、焼きそばパンいる?」

「どうするって、だからこれ、嫌がらせだろ?いらん。俺はジャムパンで十分だ」

「なんで?ジャムパンだけじゃ栄養足りないよ」

「それはどっちのなんでだ、本題か、それとも焼きそばパンか」

「あぁ、ごめん、本題」

どちらにせよ、焼きそばパンだけのお前とジャムパンだけの俺じゃ栄養価はそう変わらないと思うぞ。

パンだからごはんほど腹持ちもよくないし。

「なんでって、差出人不明だぞ。嫌がらせ以外のなにものでもない」

「え?」

え?じゃねぇわ。こんな簡単な嫌がらせにひっかかるほど、俺は馬鹿じゃない。

もぐもぐしながら、首を傾げている響を見ていたらなんだかイライラしてきた。

「紙飛行機は?」

「は?ポケットにあるけど」

「出して」

「え?」

「今すぐ!」

「お、おう!」

なんだ?いったい何があるんだ。

紙なんか何度見たって同じだと思うが。

「ん、これだけど」

「ほらここ」

響が指さしたのは、紙の隅。

「よく見て」

よく、よく、よぉ~く見てみると、なんだか文字を書いた跡があった。

あ、か……?

それ以上読めない。

でもこれって。

「なぁ、響これ」

「やっぱりわかってなかったんだ」

「お前これ知ってたの?」

「うん、最初見たときにね」

すごいな。授業中、見続けて全く気付けなかったのに。

コイツはそれを一瞬でか。

ん、待って。じゃあなんでコイツさっき笑ったんだ?

「なぁ、響。お前さっき馬鹿だぁ~って笑ってたよな、あれは」

「あぁ、ノムわかってないのかなぁ~、馬鹿だなぁ~ってね」

もう最悪だ……。

にしてもやっぱ気付けるのはすごい。観察力?なのかな。

頼りになるな。……やっぱ、いざって時に頼れる方がモテんのかな……。

あー、でもこれ。

「でも、響、これじゃあ、読めないぞ」

「シャーペンでシャーって」

「シャーって……あぁ!あれ!浮き出るやつ!」

響はラストの焼きそばパンを頬張りながら首を縦に振る。

響頼れるなぁ。俺が彼女になりたいくらいだぜ。


教室に戻って早速、シャーペンでシャーってやる。

「あ……か……り?」

「おぉー、あかりちゃん!いい名前じゃん」

彼女が嫉妬するぞ。あんまりそういうことは言うな、馬鹿。

「飛ばしたなら、まぁほぼ百パーセント、隣りの病院だろうな」

「それは間違いないね、他のところからここへ飛ばすのはまず無理だから」

だとしても、第一の可能性として、まずこれが俺宛じゃない可能性がある。

名前を消してあるのは、病院のような監視下のもとにいるから。という理由と、親しい仲であるために名前を書く必要がなかった。という理由だ。

親しい仲なら、わざわざ頼まずとも友達くらいなってもらえそうなものだが……。

まぁ、そこは相手のことを知らない俺からは何とも言えない部分だな。

そして、前者であれば、俺が会いに行ってもよいのだが、もし後者だった場合は俺が自意識過剰の大馬鹿野郎になる。

さて、これはどうするべきか。

(そら)~、会いたかったよ~」

「ちょっ、響くん!?今ごはん食べてるから!抱きつかないで!」

後ろからのリア充感すごいな。人が考え事してるってのに。

教室だぞ、わきまえろ。

個人的にもやめてほしいが、周りの男子もいい目はしてない。

「今日もラブラブだね~」

「いいなぁ~、私も藤間くんみたいな彼氏欲しー」

クラスメイトももう慣れてしまっているわけだが、なんでも許されるのとは少し違うからな。

こんな空気に慣れてしまってはいけないんだ、普通は。

というか、ホントにどうしようか。このあかりさんって方。

「ノム」

「ん?」

いつの間に帰ってきてたんだ、コイツ。怖すぎる。

「今日、病院行こうね」

「えっ」


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