呪われた島
私の名はジョン。少年の頃、ある島においてきた一人の友人を救うために、私は二人の友人をある小屋の外で待っている。その島は、30年に一度海のある場所に3時間だけ現れる。恐らくその場所を知っているのは、ある男と私達だけだ。その島だけは、この世界とは違う次元から来ている。
私達がこの島に足を踏み入れたのは、今から30年前の満月の出ている夜だった。
おっと・・・・・・どうやら、一人の友人が来たようだ。
遠くのほうから重たい足取りで男がこっちに歩いてくる。
辺りではセミが鳴き、太陽の日差しが強い。
「おーい」
私は額に汗をかきながら、手を振った。
しばらくして、男は近くまでくると私に話しかけた。
「よう! 待ったか? 相変わらず、ここの道は険しいな。喉がカラカラだ・・・・・・何か飲むもんあるか?」
「とりあえず入れよ。私も、さっき着いたところだよ。だけどまだ、あいつが来てないんだよ。どこで道草食ってるんだか・・・・・・そこの冷蔵庫にビールがあるから飲めよ」
小屋に入ると私は大柄で髭を生やした男に冷蔵庫を指さしビールを勧めた。
「あいつ、まだ来てねぇーのか! ・・・・・・まぁ、あいつが最後なのは分かってたがな」
「そうだな。あいつは昔から時間にルーズだからな」
呆れた表情で顔を見合わせ、男は冷蔵庫からビールを取り出した。
この男だが、私の友人の一人だ。名前はジムと言う。今では、私より背の高い体格のいいおっさんに見えるが、少年の頃は私よりも背が低く、内気な少年だった。ジムは、少年の頃、親が離婚して父親に引き取られた。
それ以来、ジムの父親は毎日のように酒を飲み、気に入らない事があるとジムを殴っていた。
私が少年の頃、学校で会うと、よく顔にアザがあったのを覚えている。
私は誰にやられたんだ?と聞くとジムは答えなかった・・・・・・
「じゃぁ、言いたくなったら言えよ」と私が言うと「うん・・・・・・」と下を向きながらうなずいた。ある日の夜、私が部屋で本を読んでいると窓を叩く音がする。窓を開けるとそこにはジムがいた。
「どうしたんだ・・・・・・こんな時間に。何かあったのか?」と聞くと「もうあの家には帰りたくない・・・・・・」と今にも泣きそうな表情だった。
話を聞くと、親が離婚してから父が暴力を振るうようになった事を聞いた。 薄々分かってはいたが、ジムが虐待を受けていると知ったのはこの時だった。
だが、ある島から帰ったあとこれを一変させる事がおきる・・・・・・
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私には父と母と弟がいたのだが・・・・・・・・・・
父はと言うと、今も健在だ。父は営業の仕事をしていたのだが、今は定年で仕事を退職して、自宅の近くの湖で釣りをしながら老後を楽しんでいる。
だが、母と弟は・・・・・・もうこの世にはいない・・・・・・・・
母は、私が大学を卒業してしばらくしたあと病気でこの世を去ってしまい、弟は・・・・・・私の不注意である事故で死んでしまった・・・・・・・・・私は、今もあの時の出来事を忘れたことはない。
それは、夏の日差しが照りつけるとても暑い日だった。
私と弟は、よく父と釣りに行っていた。
その日も、父に「釣りに行こう。今日はお父さんより大物をつるんだ!」
と誘ったのだが、父は急な仕事が入ってこの日に限って行けれないと言うのだ。
いつもなら、父が一緒に行けれない時はすぐに諦めて友達の家に遊びに行ったりするのだが、その日はどうしても釣りに行きたかった。
今でも、なぜその日に限って諦められなかったのかわからない。
一人で行くのもイヤだった私は、弟を連れて行く事にした。
二人で行くのを嫌がる弟に「俺たちだけで大物を釣って帰ったら、お父さんもビックリするぞ? きっと、すごいってほめてくれる」と、何とか言いくるめて連れ出した。
湖に着くと、私は釣りの準備を始めた。
その間、弟は水切りをしたり、湖の浅瀬でパシャパシャと遊んでいた。
実は、弟には言ってなかったのだが、釣りの仕掛けを自分でしたのはこの時が初めてだった。
いつもは父にしてもらっていたのだ。だから、仕掛けに夢中になって弟があんなことになっているのに気づかなかっ
た。仕掛けをつけ終わってやっと弟の姿が見当たらないことに気がついた私は、必死に探した。
弟の名前を大声で叫び、湖の周りを走り探した。
もしかしたら・・・・・・どうしようもない不安・・・・・・いや、もしかしたらトイレに行きたくなって来た道を戻ってトイレしてるだけかも・・・色んな事を考えた。
だが、弟が何も言わずにどこかに行くという事は考えにくかった。
どのくらい走っただろうか。その光景が私の目に焼きついた。
弟が、湖の中でうつ伏せに浮いていた・・・・・・ピクリとも動かず、ただ水面に漂うように・・・・・・
あの日、父に急な仕事さえ入らなければ。私が釣りに行くのを諦めていたら。
嫌がる弟を無理に連れ出さなければ。言い出したらきりが無いほど、私は後悔した。
父も母も私を責めたりはしなかった。不運な事故だったのだと。
あれから、私は釣りをしなくなった。あの湖にも行かなくなった。
あの時の光景が、頭から離れなかったからだ。あの時のどうしようもない不安、その不安が現実のものとなった時の悲しみ、自分に対する怒り、全てを思い出してしまうからだ。私はその現実からただ逃げていただけなのかもしれない。
だが、おそらく誰も信じないであろう不可解な出来事を私は体験する・・・・・・
おっと・・・・・・誰か来たみたいだ。ドアをノックする音が聞こえる。
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「ゴン・・・・・・ゴン。ゴン」
「俺だ。開けてくれ」
「おいジョン、あいつじゃないのか? 開けてやれよ」
ドアの外から男の声がするとイスに座っていたジムが私に聞いた。
「おい、忘れたのか。合言葉を言うのが昔からの俺達のルールだろ?」
「あぁ、そうだったな。すまん・・・・・・」
私が問いただすと、外にいる男は思い出したように呟いた。
私はドアの前に立ち、山と言うと男は海と答えた。
「ジョン、もう合言葉なんてなくしてもいいんじゃないか?」
ドアを開けると、帽子をかぶり眼鏡をした男が立っていた。
「だめだ。ルールはルールだからな。それより、来るのが少し遅いんじゃねぇーか? なんかあったのか?」
「来る途中に腹が痛くなってそこからトイレに駆け込み一時間トイレにこもってたんだよ。」
男に尋ねると、男は腹をおさえながら答えた。
「また、お前の得意のウソか?」
私は笑いながら言った。
「ジョン、ウソじゃねー、笑うんじゃねー」
誤魔化すように笑いながら私を見ていた。
お調子者だが、なんだか憎めないこの男の名はクリスだ。
クリスは昔からお調子者で、自分の都合の悪いことはすぐウソをついて誤魔化していた。
大人になってもそんなところは変わっていないようだ・・・・・・
クリスの父親はとある企業の社長で、私たちの中で一番裕福な家で育った。
母親も優しく、遊びに行くといつもおいしい手作りクッキーやケーキをおやつに出してくれた。
子供の頃はそんなおいしいおやつ食べたさに、いつもクリスの家にみんなが集合していたのをよく覚えている。
「よぉ、クリス、調子はどうだ」
「おー久しぶりじゃねぇーか。前に会ったのは半年くらい前だったか?」
ジムがクリスにに話しかけると、クリスはジムの横にドカッと座り肩を組みながら言った。
「冗談いうんじゃねーよ。おまえに会ったのはかれこれ2年前だ。大体お前はたまに電話をかけてもでねぇー。まったく、どうなってんだお前は」
「おお、そうだったか? 記憶にねぇ。まぁその話は置いといて、俺にもビールくれよ」
「おぉー、話かえやがったぜ」
ジムがクリスに愚痴を言い出すと、クリスはバツが悪そうに話を誤魔化した。
「ジョン、そういえば、俺たちが前にあの島に行って、こっちに帰ってきてからなんか変な事はないか? 記憶がおかしいとか、嫌いなものが好きになったりとか?」
ビールを飲みながらクリスは真剣な顔で私に問いかけた。
「実は、変に思われたくなかったのもあってずっと言わなかったんだが、あの島から帰ってから変なんだ。死んだはずの弟が普通に家にいるんだよ。家に帰って弟を見た時は驚いたよ。でも、生きていたんだって思ったら嬉しくてさ・・・・・・でも、冷静になって考えたら、あの時確かに弟は死んだはずなんだ。だから俺は弟に、お前は俺と釣りに行って湖で溺れて死んだはずじゃないか。なんで生きているのかって聞いたんだ。そしたら、あの日溺れたのは俺で、弟が溺れた俺を助けたんだって言うんだ。頭がおかしくなったと思われたくなくて、誰にも言えなかったんだけどな・・・・・・。」
「俺も言ってはないが、あの島から帰ったあとだ。離婚したはずの母がいるんだよ。そりゃ勿論きいたさ。離婚したんじゃ? ってな。そしたら父と母は頭でも打ったのかって笑われたよ。父なんか別人のように優しくなったよ。当時の俺は喜んだが、今考えるとおかしいだろ?」
私とジムはあの島から帰って来てから起きた不思議な出来事を話した。
「どうもあの島から帰ってから妙な事ばかりだ。気味が悪い・・・・・・。」
話を聞いていたクリスはやっぱりというような顔をしていた。
そのあと、私達は何かを考えるように黙りながら下を向いていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
「もとはと言えば、お前があの島に石を探しに行こうなんていわなかったらこんな事になってないんじゃないのか?」
沈黙の中、小さな声でクリスが私にとボソッと言った。
「あの時、お前も行こうっていってただろ? 今さら俺のせいにするなよ」
それを聞いた私は怒鳴りながらクリスの胸元を掴んだ。
「ケンカしても始まらねー。あいつは今もあの島にいるんだぜ。どうやってあの島に行くか考えるのが先じゃねーのか?」
椅子に座っていたジムは立ち上がり二人の腕を掴んでケンカを止めた。
「そうだな・・・・・・悪かった・・・・・・お前の言う通りだ」
二人は下を向きながらジムに誤った。
「ところでジョン、あの日記はどこにある? ちゃんと持っているんだろ? ちょっと見せてみろ?」
「あぁ、ここに持っているよ」
私はジムに日記を差し出し、読んでいる間仮眠をとらせてくれと言い、椅子に座り少し眠る事にした。
30年前のあの日、あの島に行く事になったのは、この日記と、この小屋を見つけたのが始まりだった。
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私達が少年だった頃、いつものように学校の裏山で虫を取ったりして遊んでいたある日、森の奥に行ってみようと言う事になり私達は草をかき分け森を進んでいた時、拓けた場所に出た。そこには古ぼけた小屋がたたずんでいた。小屋の壁は腐り、今にも何かでそうな雰囲気だった・・・・・・
小屋のドアを開けると、中はカビ臭く、ホコリでいっぱいだった。何年も人が入ってないようだった。
私達はこの小屋を、秘密基地にして、合言葉もつけよう。と掃除を始め、小屋の周りも自転車が入れるように草を刈った。
掃除している最中、合言葉は山、海に決まった。私達は、よく山や海で遊ぶからという理由だった。
「おい、ここみてみろよー。なんかここの壁開けれそうだぞ」
しばらく掃除をしていると、一人の友人がみんなに不思議そうに言った。
この友人はジャックと言って正義感が強く、面倒見がいいヤツだった。あの時も私達を助けるために自ら犠牲になってしまった・・・・・・ジャックは今もあの島にいる・・・・・・
みんなは、一旦手を止めその壁の前に近寄った。
「この中に、宝があったりしてな?」
「宝? 死体の間違いじゃねーのか」
「やめてくれよ・・・・・・死体なんて・・・・・・。」
私がワクワクした気持ちで言うと、クリスは冗談交じりにジムを怖がらせるような事を言った。それを聞いていたジムは何かを想像して怯えている・・・・・・
「ジム、死体なんてないよ。びびるなよ。ジャック、どうだ? 開けれそうか?」
私は安心させるような言い方で言いながら問いかけた。
「そのへんに、壁を開けれるような道具ないか?」
ジャックは壁を調べるように見た。壁に少し隙間があるのにきずいたジャックは、私の顔をみて問いかけた。
私は、小屋の中を一通り探したがなかった。私は小屋の外にいき、小屋の周りを探すと一本のバールが壁に立てかけてあった。
「こんなのでいいか?」
バールを手にしジャックのもとへ持っていきとバールを見せた。
「いいもの、あったな。これなら開けれそうだ。じゃぁ、開けるぞ」
みんなにいいながらバールを壁の隙間に押し込んだ。
私達は、何も言わずうなずいた。
壁をバールでこじ開けると、そこには、ホコリまみれの箱がぽつんと置かれていた。
「やっぱり、宝だ。あの中には宝が入っているんだよ!」
「違うな・・・・・・よくある開けたら何も入ってないってやつだよ・・・・・・。」
「よかった・・・・・・死体じゃなくて」
私は一層期待を込めて言ったが、クリスは何かを悟ったかのように、ジムは安心したようにそれぞれが言った。
「とりあえず、こっちにだして開けてみよう」
ジャックはそう言うとその箱を取り出した。
その箱を取り出したジャックは「フー」っと息を吹きかけホコリを吹き払い
「いいか? 開けるぞ」
といって箱に手をかけ私達に聞いた。私達は息を呑み、静かにうなずいた。
ギーっと音を立てて開いた箱の中には、一冊の本と、何かを示す地図のような物が置かれていた。
それを見たジャックは本を箱から取り出し読み始めた。
私とジムとクリスは、地図のようなものを手に取り、妄想を膨らませていた。
「これが、宝の地図だったら俺たち大金持ちだぞ」
「そしたら俺は、一生食いきれないくらいのお菓子とジュース買いまくるぞ。それから、でっかい家に住んで一生遊んでくらしてーなぁ」
私が期待と希望に胸膨らませながら興奮気味に言うと、初めは宝なんてと言っていたクリスも地図を見てようやく子供らしい発想をし始める。
「僕は、全部貯金しようかな・・・・・・。」
「全部貯金するだって!? お前は本当に夢が無いやつだな。お前、何にも欲しいもんないのかよ?」
ジムが恥ずかしそうに頭をかきながら言うと、クリスは馬鹿にしたようにジムに問いただした。
「欲しいものならあるよ・・・・・・でも、貯金したほうが将来のために・・・・・・。」
ジムが言いかけた時だった・・・・・・
「おい、この本は誰かが書いた日記みたいだぞ。読んでみろよ」
本を読んでいたジャックがクリスとジムの会話を遮った。私達はジャックに近寄り誰かが書いた日記を読み出した。
日記にはこう書かれていた。
私が隠した箱をどうやら見つけてしまったらしい・・・・・・私の名はエドガー。
君がこの日記を読んでいるということは、もう私はこの世にはいないだろう・・・・・・
私はなんでも願いが叶う石『願いの石』という物を友人と二人で探しにいったのだが・・・・・・
このあとの事はこの日記を読めばわかるだろう・・・・・・
『1856年4月25日』
するとジムが
「1856年? えーと今から・・・・・・。」
と考えながら言った。
「今から30年前だよ。続きを読むぞ」
私がボソッと言い続きを読み出した。
私は、ある場所で何かが示された地図とメモを見つけた。
メモには『願いの石』の事、地図に示された場所は30年に一度だけ現れる島という事が書かれていた。
その場所はこの世界とは次元が異なる。船を使ってその場所へ行ってもこちら側からは入れない。だが、唯一入れる入り口がある。ここからは字がにじんでいて読めなかった。そこで私は、ハンクと言う名の考古学者の男に電話した。
彼は私の友人でもある。私が、この事を電話で話すと明日、私のとこに来るといい電話を切った。
『4月26日』
ハンクが朝早く、訪ねて来た。
私はハンクと共にこの地図の正確な位置を割り出した。
だが、これではメモにかかれた入り口がわからない・・・・・・
ハンクは「地図をかりてもいいか? 一旦研究所に持ち帰って調べる」と言いその日は大学へ帰った。
『4月27日』
夜中にハンクから電話がかかってきた。
ハンクは今から私の研究所に来てくれと言い電話を切った。何かがわかったような物言いだった。
私は、すぐに準備をして、車で一時間程の所にあるハンクの研究所に向かった。
研究所に着くと私はハンクの研究室に行き「何かわかったのか?」と尋ねた。
ハンクは驚いた様子で「わけはあとで話すから、まずはこれを見てくれ。」とあの地図を私に差し出した。
私が地図を見ながら「何も変わってないが・・・・・・。」と言うと「違う、裏側だよ」と言いながらハンクは地図を裏返した。
そこには、もう一つの何かを示す地図と古代文字、それからなにやら変わった模様のようなものが書かれていた。
私は「前見た時は、こんなのなかっただろ? どうやったんだ?」とハンクに聞いた。
「酒を飲んでいてウトウトしている時だった。手が酒にあたり、こぼれた酒が偶然地図にかかってしまったんだ。
慌てて地図を乾かそうと暖炉に近づけた時だった。ぼんやりと何かが浮び上がってきた。おそらくアルコールが何かの成分に反応したのだろう。こんな夜中に呼び出して悪かった。疲れただろう。詳しい事はまた後で話すから、今日はゆっくり寝てくれ」ハンクはそう言うと、部屋を出て行った。
昼を過ぎた頃、ようやく目が覚めた私はあの地図の事が気になってすぐにハンクの部屋へ向かった。
ハンクはすでに起きていたようで、ソファーに座り、机にはあの地図とその横に分厚い本を開いて何かを調べている様子だった。私が入ってきたのに気づいたハンクが地図について分かったことを説明し始めた。
裏側に浮び上がったもう一つの地図は、どうやらある島へ行くための入り口を示しているらしい。そして、この古代文字の意味を調べてみたんだが、こう書かれているようなんだ。
『月満たされし時 導かれし者 王の紋章を辿れ』
この月満たされし時とは、満月の日という事。そして、王の紋章と言うのはおそらく、浮び上がってきた模様のようなものの事だろう。そして、この地図が指し示す場所に行けば、30年に一度現れると言う島へ行くための入り口に辿り着けるかもしれない。
私達はそこへ向かうことにした。
そこに着くと、小さな田舎町にあった山だった。舗装されてない山道を進むと獣道のような道が森の奥に続いているのを見つけた。その獣道をまっすぐ進んで行くと少し拓けた場所に出た。そこには、古びた小屋が建っていた。
私達は小屋の中へ入ると、地図に描かれていた王の紋章を探し始めた。
しばらく辺りを探していると、床に何か擦れた模様がある。私はハンクを呼び見てもらった。
「おそらく地図に浮き出た模様はこれだろう。ずいぶん時がたって、模様が擦れている」
険しい顔で模様を見ていた。
私は「この床の下に、入り口があるんだな」といい持ってきたバールで床をこじ開けた。
そこには、地下に通じる階段があった。私達は、持ってきた懐中電灯を照らしながら、薄暗い階段を下りていった。
階段を下りると何かが光っている。見ると空間が捻じ曲がった場所があった。
私は「向こうに行ったら何があるかわからない。行く準備はいいか?」とハンクに問いかけた。
ハンクは「準備はできている。もしも私に何かあれば・・・・・・やっぱり考えるのはよそう・・・・・・。」
私達はその中へと飛び込んだ。
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中は長い洞窟になっていて、薄暗くひんやりとした空気が立ち込めている。しばらく行くと、ぼんやりと外の光が見え
てきた。どうやら洞窟を抜けたらしい。洞窟から抜けると、そこはたくさんの木々が生い茂り、今にも何かが飛び出して襲って来そうなほど不気味な感じの島だった。
ハンクはこの島の雰囲気に圧倒されたのか、願いが叶う石が本当にあるのかと私に尋ねてきた。
だが私は、その石があるとしたらそれを見つければ世紀の大発見だと言い、石を探そうと言った。
そして私達はこの不気味な島の奥へと足を踏み入れたのだ。帰り道が分からなくならないように印をつけながら進む・・・・・・だが、この島のどこに石があるのかも分からない。当てもなく進むしかなかった。
どのくらい歩いただろうか、私達はお互いに何かの視線を感じていた・・・・・・獣が身を潜めて獲物を狙うような、殺気立った視線・・・・・・顔を見合わせお互いがその視線に気づいていることを察した。
「・・・・・・・・・・・・。」
二人はしばらく無言のまま先を進んだ。
生い茂る草木を掻き分けながら進んでいくと、突如拓けた場所に出た。
そこだけなぜか、手入れされたように草木が生えていない。そして目の前には大きな神殿がそびえ立っていた。
あそこに石がある。私達はそう確信して神殿の中へ・・・・・・島は3時間で消えてしまう・・・・・・私達は急いで神殿の中を探し歩いた。思った以上に神殿の中は広く、闇雲に探すには時間もあまり無い。
私達はどこかに石につながるヒントがないか探した。
すると、ハンクがそれを見つけたのだ。
『願いし物 王の紋章を辿れ さすれば願いは叶うだろう』
壁に古代文字で彫られていた。
王の紋章・・・・・・あの地図と一緒に浮かび上がってきたあの紋章のことだ。
すぐにその紋章を探し始めた。一つ目の紋章はすぐに見つかった。
その紋章の下にはまた古代文字でこう記されていた。
『月明かりの・・・・・・・・・・・・』
そして私達は石を見つけた。一つずつ持ち帰ろうと石に手を差し伸べた時だった。
突然突風が吹き、黒い霧のようなものが目の前に現れた。驚いた私達は突然現れた黒い霧を呆然と眺めていた。
ハンクは、この黒い霧が、森の中で感じた、あの殺気立った視線の正体だと気付き、呆然と立ち尽くしていた。私は、逃げるぞ! と尋常じゃない声で呼びかけた。
ハッと我に返ったハンクは振り向き私達は急いで走り出した。
どのくらい走っただろうか。後ろを見ると黒い霧はいなかった。
私達は、警戒しながら歩き出した。あと少しで洞窟の入り口に辿りつく時だった。
少女がしゃがみこんで泣いている。
ハンクは少女が気になり、話しかけようとする。
「こんな島に人がいるはずが無い。やめろ、近づくな」と私が言ったその時だった・・・・・
少女は笑いながら立ち上がり、ハンクの身体を少女の手が貫いた。
すると、少女の姿があの黒い霧に変わった。私はハンクを助けようと黒い霧に立ち向かったが、黒い霧はまた少女の姿に変わり私に襲いかかって来た。私が抵抗すると少女に化けた黒い霧は、手を鋭い刃物に変え私の顔を切りつけた。
冷静さを失った私は、洞窟へと駆け込んだ・・・・・・
私はもとの世界へ戻った・・・・・・
そして、ハンクは死んだ・・・・・・
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『1858年4月28日』
私が、ハンクを助けられずに自分だけ元の世界へ戻ってきて2年がたった。
ハンクが死んだあの日から、あの島についての日記が書けなかった。
私は、あの化け物に顔を切りつけられ片目が見えなくなってしまった・・・・・・目には大きな傷がある。
鏡を見る度、あの事を思い出してしまう・・・・・・ 頭がどうにかなりそうだ・・・・・・
『4月29日』
この地図は人の目にふれてはいけない。また犠牲者を出してしまう。この日記を最後に地図と共に箱にしまい小屋の壁の中に隠す事にした。見つからないように祈るばかりだ。
私は精神的に疲れてしまった・・・・・・もう限界だ・・・・自ら命を絶つ事にする・・・・・・
最後に、私からの忠告だ。あの島は危険だ・・・・・・行くな・・・・・・もし行くと言うなら・・・・・・これだけは言っておく。
あの黒い霧にだけは気をつけろ・・・・・・あれはただの霧ではない・・・・・・生きている。
幸運を祈る・・・・・・
この日記が書かれているのはここまでだった。あったのは鉛筆で、書きなぐった真っ黒な絵があるだけだった。
「黒い霧ってなんだよ? 生きてるって・・・・・・」
「俺がわかるわけないだろ・・・・・・」
日記を読み終えたときクリスが不安気にジャックに聞くと、ジャックも読んでいて怖くなったのか呟くように答えた。
私は、その『願いの石』という物があると知った時、どうしても叶えたい事が頭に浮かんだ。
「でも、願いの石っていうなんでも叶う石があるんだろ? 黒い霧なんてエドガーって人が言ったように気をつければいいだけだろ?」
みんなが不安がっていたのを見てとっさにみんなの気をそらすように言った。
ジャックとクリスは無言で下を向いて考えていた。
「えーでもー・・・・・・危険だって書いてあるし・・・・・・。」
するとジムが私に不安そうに言う。
「願いの石だぜ。なんでも叶うんだぜ。お前も叶えたいことあるだろ?」
「うん・・・・・・じゃぁ僕行くよ」
私は、ジャックとクリスには聞こえないようにジムの耳元で小さな声で言うと、小さく頷いた。
「そうだな。黒い霧なんて気をつければいいし、行くか」
「あの日記に書かれていることは本当とはかぎらないしな」
ジャックもクリスも不安が吹っ切れたように言った。
私はこの時、正直ホッとした。
「でも行くっていってもその小屋はどこにあるんだ? しかも30年後って明日だろ? 小屋なんか探してる時間ないぞ。まさかここの小屋なわけないし」
ジャックが時計を見ながらみんなに呟くように言うと私達の表情が変わり、床をはいずりまわりながら日記に書かれてあった紋章を探した。
「本当にあったぞー」
しばらく探しているとジャックが驚いた声で言った。私と、ジム、クリスはジャックの元に駆け寄って床の紋章を見た。
私達は驚いてしばらく沈黙した。
「・・・・・・・・・・・・。」
「じゃぁ、明日の夜、この小屋に集合だな?」
その沈黙をかき消すように私は皆に問いかけ、何を持っていくか、何時に集合するかなど話し合った。
しばらく話し合った後―
「ここに集合することは秘密だぞ。誰にも言うなよ」
私は皆に言いその日はそれぞれの家へと帰った。
次の日の夜、私は家族が寝静まった頃、食べ物や必要だと思う物をかばんに詰め込み、こっそりと自転車で家を出た。
私が小屋に着くとジムとジャックが小屋の外で待っていた。
「クリスがいないけど、小屋の中か?」
「まだ来てないよ。また、いつもの遅刻だろ。」
「いつも来るの最後だからね」
私がジャックに聞くと、二人共いつもの事というような顔をしていた。
「いつも遅刻するって言っても、今日はすぐ来るよ」
私達3人は小屋の外の草の上に座り、クリスが来るまで、話をしながら待っていた。辺りでは、虫が鳴き、空には沢山の星と、綺麗な満月が出ていた。しばらく待っていると、向こうのほうから明かりが見える。
「急げー」
私達は、立ち上がり、目を凝らしながら見るとクリスだという事に気づき叫んだ。
「ごめん・・・・・・遅くなって」
クリスは自転車をすごい勢いでこぎながら来て、私達の前に止まると息をきらせながら私達に謝った。
クリスが着くと私達は急いで小屋の中に入り、置いてあったバールで紋章の描いてある床をこじ開け入り口が開かれるのをその場で待った。待つ間、私達は持ってきた物を見せ合った。
ジムのかばんにはすごい量のお菓子だけが詰め込まれてあった。クリスのかばんにはコンパスや懐中電灯、食べ物などがいれてあった。ジャックのかばんにはクリスと同じようにコンパス懐中電灯ロープや食べ物などだった。
私がゴソゴソとジャックのかばんの中を見ていると、底に黒い物が見える。出してみると一つの銃が出てきた。
「それ、どうしたんだよ?」
それを見たクリスとジムは、驚いた顔で私に聞いた。
「これ・・・・・ジャックのかばんからでてきたんだよ」
「父さんの書斎に隠してあった銃をこっそり持ってきたんだよ。念のためだよ」
私は、銃を見ながら言うと、ジャックは銃を取りかばんの中へしまった。
「いざって時だけ使えよ」
私達はジャックに言い少し沈黙が続いた。
「・・・・・・・・・・・・。」
「エドガーの日記もかばんに入れとけよ。一番それが必要だからな」
沈黙を打ち消すようにとジャックが私に言うと、エドガーの日記を手に取りかばんの中へ入れた。
「来る時、父さんにはバレなかったか? 大丈夫だったか?」
ジャック達がこれからの事を話している時、私はジムに心配そうに聞いた。
「なんでそんなに心配そうに聞くんだよ、なんかあったような顔だぞ?」
聞いていたジャックとクリスは私にと問いかけた。
「俺達も薄々わかってたよ。ジムの顔見たら普通わかるだろ・・・・・・?」
私はジムの父さんの事を二人に話すと、気まずそうに二人が言い沈黙が続いた。
「・・・・・・・・・・・・。」
とその時だった。こじ開けた床の隙間から、何かが光りだした。私達は床に転がっていたバールを手に取り急いでその床をこじ開けた。 床をこじ開けると薄暗い階段が下に続いていた。見ると奥のほうで何かが光っている。
私達は薄暗い階段を下りて行き光のほうへと歩きだした。
光の出ているほうへ着くとそこには空間が捻じ曲がった場所があった。
私は「行く準備はいいな?」と皆にいうと無言でうなずいた。私達は、その捻じ曲がった空間に飛び込んだ。
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飛び込んだ先は暗い洞窟だった。懐中電灯をつけ少し歩くと光が見える。光のほうに歩くと洞窟の出口に辿りついた。
「エドガーの日記出して見ろよ?」
洞窟を抜けると、ジャックが私に言い、かばんからエドガーの日記を取り出した。私達は、エドガーの日記をたよりに森を進んでいった。
周りを見ながら森を進むと、木に転々と何か印のような物が彫られている。
「あの印はなんだ?」
「たぶん、エドガー達がつけた印だよ」
クリスは印を見ると、私に問いかけた。
しばらく森を歩いていると
「なんか・・・・・・気配しない? 何かに見られてない・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「気のせいだよ」
私達も何かがいるのはわかっていたがジムを安心させるかのように言った。
ようやく森を抜けると開けた場所に古ぼけた神殿のようなものがたたずんでいた。足元を見ると、枯葉が神殿へと、吸い込まれていた。何か、私たちを、招き入れるかのようだった。
私達は中に入ると、エドガーの日記を読み出した。読んでいる時ジャックがある事に気づいた。
ここの月明かりの・・・・・・から虫食いのあとがあって読めなくなっていた・・・・・・
「どうする? 俺達じゃ古代文字なんてわかんねーよ・・・・・・前に日記見たとき穴が開いてるの気づいたか?」
その事を皆に話したジャックは不安そうに言った。
「とりあえず何かないか辺りを探してみよう」
「何もねーよ・・・・・・もう帰るか・・・・・・?」
私は、皆の気をそらすように言いしばらく探したがクリスは諦めながら壁に寄りかかった。その時、ボタンのような物を偶然押したらしい。地面の下から地響きのような音を立てて台座が出てきた。私達はその台座へあわてて近寄った。
台座には丸い石のような物が何個か置かれていた。
「やったぜー」
「おい、待てエドガーの日記ではここで黒い霧がでるんだよな」
クリスが喜びながら手をだそうとした時、ジャックが止めながら、かばんから銃を出した。
「石を取ったら、急いで戻るぞ・・・・・・」
私が言うと、皆は黙ってうなづいた。
「じゃぁ・・・・・・取るぞ・・・・・・。」
不安そうに言い、私達は同時に石を取り、急いでジャックのかばんに二つ、私のかばんに二つ入れて来た道を急いで戻った。
戻る途中私達は、黒い霧の事で不思議がっていた。
「出てこなくてよかったな・・・・・・黒い霧」
何か腑に落ちないというような表情で森の奥のほうを見ていた。
「出てこなくて良かったよ」
「そうだな !よかったよ !結構余裕だったな」
私が言うとジムとクリスは安心したかのような顔をしていたが、ジャックは何か不安そうな顔をしていた。
その時・・・・・・森の奥のほうから木をなぎ倒すような音が私達にどんどん近づいてくる・・・・・・その場で足が止まり呆然と音を聞きながら立ち尽くしていた時・・・・・・
「・・・・・・いくぞ! 後ろを振り向かずに、全力で洞窟まで走れー!」
私は叫んだ。
ハッと我に返った私達は、洞窟に死に物狂いで走った・・・・・・だが、黒い霧はすごいスピードで私達の目の前に来た・・・・・・目の前に来た瞬間、化け物を見たように恐怖でその場から足が動かなかった・・・・・・
呆然と立ち尽くしている時、ジャックが慌ててかばんから銃を取り出し、黒い霧へ二発の銃弾を撃った。
銃声が辺りに鳴り響く・・・・・・黒い霧はギリギリのとこで二発の銃弾を交わすと、動き出し形を変え始めた。
大きな手になった黒い霧はすごい勢いでジャックを掴み森の奥へと連れ去った・・・・・・まるで悪魔のようにその姿は恐ろしかった・・・・・・
私達は3人は、慌ててあとを追い森へ入り、大声でジャックを呼びながら探した。
しばらく探したがジャックは見つからない・・・・・・どうしていいかもわからずその場に倒れていた木に腰をかけ、うつむきながら考えていた時だった。
・・・・・・頭上に何かいる。
上を見上げると、頭上にいた黒い霧が私達を包みこんだ・・・・・・だんだん意識が遠くなっていく・・・・・・
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しばらくしてハッと意識が戻ると、元の世界の小屋に倒れていた。頭が割れるように痛い・・・・・・
頭を押さえながら起きて辺りを見ると、ジャックの姿はなかった・・・・・・
「なんで俺達ここにいるんだよ・・・・・・。」
クリスが頭を押さえながら小さな声で言った。
私とジムは、何が起きたのかわからなくて言葉が出なかった・・・・・・3人共、森の木に腰掛けたところまでの記憶しかなく・・・・・・どうやっても思い出せなかった・・・・・・
そのあと私は、何かに気がついたようにフラフラしながら階段を降り、島への入り口を見に行った。
だが、次元の入り口は消えただの土の壁になっていた・・・・・・私は小屋に戻り入り口が消えている事を二人に話した。
私達は戸惑いながらどうするか話し合い、色々ためしたが島への扉は開かなかった・・・・・・
「親に言ってみる・・・・・・?」
肩を落とし床に座っていると、ジムがうつむきながら問いかけた。
「信じちゃくれないさ・・・・・・。」
クリスは神妙な顔で呟いた。
私は言葉がでなかった・・・・・・
そのあと家に帰り、親に言う事にした私達だが、このあと不思議な事が起きた。
親も、学校の同級生もジャックの事を知らなかった・・・・・・覚えているのは私達だけだった。
何が起きているかわからず、どうする事も出来なかった私達は次に入り口が開く30年後、ジャックを助けに小屋に集まる事を約束した。
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ジョン・・・・・・ジョン・・・・・・そろそろ起きろ・・・・・・
誰かが私を呼んでいる。
目を覚ますとジムが私を起こそうとしていた。
「そろそろあの島の扉が開くぞ。準備しろよ」
ジムはそう言って準備をしだした。
「あぁ。わかったよ」
私は起きると顔を洗い準備をしだした。
「おい、時間だ。光りだしたぞ・・・・・・先に下に下りてるぞ」
準備が出来ていたクリスは階段を下りていった。
「俺達も下りるぞ・・・・・・。」
ジムがそういうと二人で階段を下りていった。
「絶対、ジャックを助けるぞ。30年も待ったんだ・・・・・・」
捻じ曲がった空間の前に立ち、私達はそこに飛び込んだ。
だが、何かおかしい・・・・・・入り口に入った瞬間、意識がなくなっていく・・・・・・
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何が起こったのだろうか・・・・・・? じょじょに意識が戻り、誰かが私を呼ぶ声がする。
「ジョン・・・・・・ジョン・・・・・・起きろ・・・・・・。」
意識が戻るとそこには当時の少年の姿のままのジャックが私を呼びかけていた。
「私は・・・・・・大人になっていて・・・・・・ジャックを助けに・・・・・・。」
「何をいっているかわからない。それよりジムとクリスも起こしてこの島から帰るぞ」
私は頭が混乱する中、呟くように言うと、ジャックは小さな声で言いながらジムとクリスを起こしだした。
ジムとクリスを起こすとジャックは混乱する二人を「しっかりしろ」といいながら顔を叩いた。
「なんでここにいるんだよ?あの時元の世界に帰ったんじゃなかったのか?」
正気を取り戻した私達に、ジャックはと問いかけた。
「わからないんだよ・・・・・・あの時の記憶がないんだ・・・・・・。」
島から帰ったあと大人になり、ジャックを助けに行こうとした事、自分達の中では30年経っていた事などを話した。
「それは全部あの黒い霧が見せた夢だよ。まだこの島に来て2時間ほどしかたってないからな・・・・・・。」
私達に説明しだした。
それを聞いた私達は、驚いて言葉も出なかった。
しばらくしてジャックは捕まったあと、どこか暗い洞穴に閉じ込められた事、もうダメだと思った時一人の男に助けられた事を話し出した。
「その男ってどこだよ?」
私はジャックに問いかけた。
「さっきまでここにいたんだけど・・・・・・」
首をかしげながら辺りを見まわした。
「とりあえず、早く元の世界へ帰ろうぜ・・・・・・ここは気味が悪い・・・・・・何か出そうだ。」
クリスは辺りを見ながら、小さな声で不安そうに呟いた。
「そうだよ・・・・・・早くいこうよ・・・・・・。」
ジムも怯えた顔をしている。
私達は洞窟へ急いで歩き出した。
森を抜けもうすぐ洞窟に辿りつくという時だった。
「おい、黒い霧が追いかけてきたぞ!」
後ろを振り向いたクリスがそれにきずき大声で言った。
私達が振り向くと、山の上のほうからすごいスピードで追ってくる。
「全力で洞窟に走るぞ!」
私が大声で言うと、何も言わず私達は走り出した。
その時
「・・・・・・・・・・。」
ジムが何かにつまずいてこけてしまう・・・・・・
「ジムー!」
私達は叫びながらジムの元へ駆け寄った。
だが駆け寄った時には、もうすでにあの黒い霧は私達の目の前にいた。
私達はもうだめだ・・・・・・と思った瞬間目の前に一人の男が現れた。
「ここは俺がなんとかする・・・・・・急いで早く元の世界へ戻れ・・・・・・。」
男は黒い霧の前に立ち、構えている。
私達が呆気にとられていると
「何してる! 早く行け!」
男は怒鳴ったような口調でいった。
我に返った私達は、ジムを起こし急いで洞窟に走った。私が走っている途中後ろを振り向くと、男は白い霧になり、黒い霧を覆っていた。洞窟を進みあの空間へと飛び込み元の世界へと帰った。
しばらくすると、島への入り口は消え、石の壁へと変わっていった。階段を上がり上の小屋へ出てくると、私達は、気の抜けたようにその場に座った。全員が息をきらし疲れたような表情をしていた。
しばらくの間私達は、その場に座り誰も喋らなかった。
落ち着きだした時
「俺を助けてくれた男の人ってあの人だよ・・・・・・。」
ジャックは小さな声で言った。
「名前は聞いてないのか?」
クリスは疲れたような声で問いかけた。
「聞いてないよ。でも・・・・・目に大きな傷があったな・・・・・・。」
私達は、ハッと思い出したように目を見合わせ、しばらくの間、固まっていた。
そのあと私は、何かに気づいたようにかばんの中に手を入れ探し出した。
「ない・・・・・・。」
かばんの中を見ながら、独り言のように呟いた。
あの時かばんに入れたはずの願いの石がなくなっていた・・・・・・どうやらどこかで落としてしまったらしい。
私がガッカリしながら下を向いていると、それにきずいたジャックが
「石ないのか ?・・・・・・二つならあるよ」
と自分のかばんの中から取りだした。
「俺達はいいからお前ら使えよ。いいだろ ?クリス」
「・・・・・・そうだな。俺達の願いなんてたいした願いじゃないからな」
私とジムの事を知っていたジャックとクリスは気を使って、石を私とジムに差し出した。
「ありがとう・・・・・・。」
二人は石を手に取り心の中で願った。
すると石は光だし、跡形もなく崩れ去った。
そのあと、私達は、あの島の地図と、エドガーの日記を箱にしまい、小屋の近くの大きな木の下に埋め、それぞれの家へと帰った。
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私は家に着くと、本当に願いが叶っているか不安そうに家の玄関を開けた。
すると奥から父が歩いて来て「こんな時間までどこいってたんだ。ご飯まだなんだろ ?早く食べちゃえ」
と言うと私は「うん・・・・・・。」と言いキッチンに走って行った。
キッチンに行くと母が料理を作っていた。
(やっぱり弟はいないんだ・・・・・・)
弟の姿が見えないと思った時、後ろから私を呼ぶ声がする。
「お兄ちゃん、これで遊ぼ」
私が振り返ると、そこにはおもちゃを持った弟が立っていた。
「うん・・・・・・いいよ」
「なんで泣いてるの?」
「なんでもないよ・・・・・・。」
私は泣きながら震える声で言うと、弟は困った表情で見ていた。
私は泣くのを我慢しながら弟と遊びだした。
そのころジムも私と同じように家に着くと、不安そうに玄関を開けた。
玄関を開けると、父と母がそこに立っていた。
「遅くなってごめん・・・・・・。」
泣きそうな顔で父と母に誤まった。
「心配したんだぞ。何もなくてよかったよ・・・・・・。」
「お腹減ってるでしょ。もういいから早くご飯食べちゃいなさい」
二人とも何か安心したような顔で言った。
―そのあと、時が経ち、私達は中学生になった。
それぞれが、忙しく遊ばなくなり、学校で話す程度の仲になった。
中学を卒業すると、お互いそれぞれの道に進んだ。
現在クリスは、自分が経営する会社を持ち、仕事で忙しい日々を送っている。
ジムは、あれから高校、大学を卒業して弁護士になり妻と子供4人で幸せに暮らしている。
ジャックは、あれから警察官になり日々、人を助けている。だが、ジャックが犯人ともみ合いになり、銃で撃たれ殉職したのを知ったのは一ヵ月後の事だった・・・・・・
私は、大学を卒業すると作家の道へと進んだ。
作家になった今、私達が体験したあの島での出来事を書いているとこだ。
おっと・・・・・・弟と父が私を呼んでいる。
今日は、母さんの墓参りだったな。
小説のタイトルは
『呪いの島』
私は部屋を出る前に小説のタイトルを書き部屋を出た。
それでは、墓参りにいくとしよう。