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ひとよの出会いは逢魔が時に!  作者: プレモル
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刃器と聖杯学園

 器兵(きへい)


 人の持つ魔力を魔法という現象に変える魔法武器『刃器(じんぎ)』。

 それを己の裁量で振るうことを国に認められた人間のことを器兵と呼ぶ。


 ここ聖杯学園は、刃器のスペシャリストである器兵を輩出するための器兵養成学校である。


 人間という種族が息づく星『カルアース』で、人は文明を起こしてからというもの科学と魔法、両方の技術を発展させてきた。


 この2つには現在、それぞれに決まった役割が与えられている。


 科学は人に便利を。

 魔法は人に戦力を。


 「科学は人の暮らしを豊かにするもので、魔法は戦いのための道具だ」という認識はカルアースで生きる人間にとっては今や当たり前のものとなっている。


 だからといって、銃やミサイルといった非魔法兵器がないわけではない。魔法においてもそこそこの規模の炎や水を発生させる生活レベルの魔法から、高位のものともなれば移動のための転移といった便利な魔法もある。


 しかし生活における利便性で言えば、発動のために特別な手順が必要となる魔法よりも、マッチを擦れば火が起こり、蛇口をひねれば水が出る科学技術の恩恵にあずかったほうが効率的だ。

 移動においても、瞬間移動とまではいかないものの車もあれば飛行機もある時代である。不便なことは何一つとしてない。


 それでも、人類の技術の発展が科学一辺倒にならなかったのは、魔法が攻撃手段として高い効果を示したからである。

 “何に”対して効果的かというと、人類未踏地(アナザレス)に生息する超常生命体(エイリア)達にである。


 現在、カルアースにおける人類の生息領域は星全体の僅か1/4しかない。宇宙にはロケットを打ち上げ、海ならその底まで覗くことができる人類が、自分の住む星のことは3/4も知らないままでいるのだ。


 これだけ科学技術が発達しているにも関わらず、未だに人類がカルアースの覇権を握れないでいるのは人類未踏地(アナザレス)跋扈(ばっこ)する超常生命体(エイリア)が強力すぎるためである。


 超常生命体(エイリア)の中の1種類に過ぎないドラゴンのみに限ってみても、その戦闘力は戦闘機を撃墜し、戦車を踏み潰す。火器による砲撃も竜の鱗に阻まれ効果が薄い。


 ドラゴンに限らず、人類が観測し超常生命体(エイリア)であると位置づけられた生物は全て魔法的能力を行使することが確認されており、同様に非魔法兵器の効果が薄い。


 そんな超常生命体(エイリア)に対して有効な攻撃手段は同じ魔法による攻撃であり、そのために魔法は人類未踏地(アナザレス)からの驚異に対する戦力という位置づけがされたのである。 


 その魔法武器製造技術の集大成とも言えるのが『刃器』である。


 刃器を使った魔法には従来の魔術師のように、発動に際して詠唱を行ったり、印を結んだりといった予備動作を必要としない。刃器に己の魔力を流し込めばそれだけで魔法が発動し、後のコントロールは思念で行えるという画期的なものだ。

 この魔法武器により、魔法の発動速度は爆発的に高くなり、詠唱等の事前準備が必要なくなった魔術師は超常生命体(エイリア)に対して近接戦闘を行えるようになったのだ。

 この刃器の超常生命体(エイリア)に対する効果の高さは、200年前の『竜群災』で古代刃器が。15年前の『死龍襲来』では御崎陽仙が‐‐公になっていないことであるが‐‐証明済みである。


 そんなものを思うままに操ることができる器兵という(つわもの)の存在が人間界において渇望されるのは当然のことであった。


もっとも、誰でも簡単に刃器が操れるというわけではない。そもそも訓練を行っていない人間にとっては、刃器に流し込むための魔力を発することすら困難なのだ。


 刃器は魔法発動のために人間が負担していたいくつかのプロセスを肩代わりしてくれるものではあるが、長い期間の訓練と勉強を重ねなければ、超常生命体(エイリア)を圧倒するレベルにはとてもではないがなれない。


 その刃器についての訓練と勉強ができる環境こそが、器兵養成学校である聖杯学園という訳だ。


 人類は200年前に発掘された古代刃器とも呼称されるアーティファクトから現在の刃器の着想を得、100年前についに刃器を完成させた。

 その初代刃器が完成した年に創立した聖杯学園は刃器の研究を行っており、刃器に対する造詣の深さは圧倒的なものがある。

 この学園を卒業した現役の器兵たちのほとんどは優秀な器兵として数々の偉業を成し遂げていることからも、その教育能力の高さが伺える。


 国に認められた一部の、魔術師や器兵の家系の人間は一族の中で刃器の扱い方を覚えることができるが、そんな人間でも学園に入学できる年齢ともなれば家を離れて聖杯学園で学ぶことがほとんどである。

 それだけ聖杯学園に蓄積された魔法と刃器に関する研究成果は人間界でも他に類を見ないほどに膨大なのだ。


 そんな聖杯学園には、在学中に器兵足りうる実力を示した生徒に現役の器兵が請け負うような任務への参加資格が与えられることがある。

 生徒の多さからか毎年数人は、学生の身でありながら器兵も真っ青になるような凄まじい力を持った人間が何人か現れる。

 そういった生徒に対しては、課外授業の一環として器兵の任務を依頼することがあるのだ。

 

 火輪はこの参加権を狙っている。今年で15歳になる火輪はこのままでは余命が5年もない。聖杯学園で高い実力を示し、一刻も早く開拓器兵隊の一員として人類未踏地(アナザレス)の土を踏み、そこにいるであろう死龍の尻尾を掴むつもりだ。


 今日は聖杯学園の入学式である。


 そういった目的を持つ火輪にとっては最高のスタートを切ったと言っていいだろう。現時点で火輪はこれ以上ないくらいに実力を示している。

 

 彼は聖杯学園第100期入学生主席なのだ。


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