第2話 飛騨の地へ
「・・・おい、そこの女。いつまで倒れてんだ?」
「え、あ、はい!!!!」
とりあえず、このまま倒れてやり過ごそうとしていた私に、お声をかけてきた鋭く尖った声。
で、いつまでもうつ伏せじゃ失礼かなぁ・・・って思って、顔を上げた私。
そこには・・・
「・・・む? お前、なんだその恰好は?」
そこには、他の3人と同じく甲冑を・・・纏っていない!?
ゆったりとした男性用の袴を着た、かなりコワモテの男性の姿が・・・
「殿! 女子ですぞ! 人柱ですぞ!」
「もしくは取って食うですぞ!」
「どっちもどっち的な?」
ホントにどっちもどっちだよ・・・
ってか、
「人柱ぁああああ!!?」
思わず叫んじゃった、てへ!
「うお! 女子が叫んだ!!」
「殿、気を付けて下さい。こいつ、速い!」
「その速さ、小太郎叱り的な」
一斉に刀をこっちに向け、臨戦態勢を取る甲冑男子3人。
待って危ないよ、それ本物ぉ!!
「待てお前ら! 刀下げろ!!」
一喝。
袴の男性が甲冑男子3人の刀を下げさせた。
「と、殿・・・」
「しかし、危ないですぞ!」
「お命頂戴、的な」
「馬鹿かお前ら。この俺が女なんぞに遅れを取ると思ってか、このたわけめ!!」
またしても一喝。
なんか学校に遅刻した時に校門で怒りの形相かましている生活指導の先生を思い出した。
「・・・おい、女」
「はい?」
もうなんか意味が分からなくて、しかもトンでも展開で、考えるのに疲れたからここは素直になっておく。
「お前、どこから来た?」
そう問いかけてくる袴の男性(通称、殿?)
「えーっと、どこからって、東京の青梅市の・・・」
ってかさ、
「あの・・・逆に、ここどこ?」
そういえば昔、地球儀片手にここ、マダガスカル!的なノリで場所を教えてくれる芸人さんがいて、アレにドハマりしていた頃があったなぁ・・・(話の脱線)
「な・・・お、女子よ、お主誰に対してその口のきき方を!?」
「そんな無礼な・・・斬首されるぞ!?」
「死んだな、コイツ的な」
なんか一気にお顔が真っ青になった甲冑男子3人。
「え?」
そのただならぬ雰囲気に、ちょっと飲まれる私。
「女子よ、この方をどなたと心得て・・・」
「うるせぇ国綱。てめぇだってたまにため口たたいてんじゃねぇか」
「ああ! それは・・・」
なに、これ・・・?
「・・・まぁいい。女、ここは飛騨の国。ってか、お前知らないで来たのか?」
「飛騨・・・ああ、岐阜か・・・って、岐阜ぅ!!?」
なんてことでしょう。
私、さっきまで自宅(東京都青梅市)にいたのよ?
そんな・・・
「ははぁん、全くバレバレの嘘を。さぁホントの事を言って下さいよ。ここは八王子? 東村山? それとも小金井?」
「・・・・・・」
あら? なんか黙り込んじゃった袴の男性。
・・・なんか、凄く怖い顔を。
「・・・あー、はい。岐阜ですね、はい」
なんか尋常じゃないくらいの怖い顔だったので、岐阜と言うテイで話を進める。
なんかパッと見、八王子臭いけど、まぁ、岐阜と言う事で。
「女よ、ここは飛騨ぞ?(威圧の目)」
「あー・・・はい、飛騨の国ですね」
岐阜訂正。ここは飛騨(ガクブる)←恐怖
「で、女。お前はどこから来た? 名は何と?」
相変わらずのとげとげボイスで聞いてくる袴の男性。
さっきから甲冑男子3人はだんまり。怖いっぽい、袴の男性が。
「えっと・・・ま、まぁ東京の青梅にいました、衣笠晴といいます・・・」
・・・なんかもっと怖い顔になった袴の人。
「えーっと・・・東京・・・です」
ここは飛騨(岐阜)
それに合わせたほうがよかった、のかな・・・?
その時、口を開いた袴の人。
「と、とうきょう・・・とは、どこだ?」
日本人なら、誰しもが知ってる日本の首都、東京。
「あ、えーっと、武蔵の国です。そう武蔵」
とりあえず、話を合わせてみた(昔の国風に)
「武蔵・・・ああ、あの河越の近くの・・・って、そんな所から来たのか?」
袴の男性、びっくり。
「そうです、武蔵の国から来た・・・ってかは、武蔵の国の自宅にいたハズが、気づいたらこんな草原に・・・」
その時、胸騒ぎが起きた。
嫌な、とても嫌な感じ。
「あ、あの、今って平成何年の何月何日何曜日ですか?」
東京、と言う言葉を初めて聞いたようなあの反応。
普通に甲冑や刀を持っていて、周りに人っ子一人いないこの空間。
周りに建物は一切無し。
現在地をいたって真面目に飛騨、と答える男性。
「へ、へーせー? 何を言っているのだ女?」
袴の男性は、そしてこう答えた。
「頭でも打ってイカレたか? 今は天正の年ぞ?」
あ、平成が年号だってのは察したっぽい。
けど、
「・・・は?」
天正?
「・・・まぁいい、女。教えてやろう」
そして・・・
「ここは飛騨の国は高原諏訪、その城下からいくぶん進んだ先にある高原よ」
次に彼はこう言った。
「俺は三木頼綱・・・いや、今は違うな。・・・姉小路、姉小路頼綱ぞ」
「・・・んな馬鹿な」