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私が魔法少女になった日 ―2―

「あっちゃぁー、しまったなぁ・・・」


 学校から帰ってきて、宿題をしようと鞄を開けたとき、それに気付いた。

 どうも、算数のノートを学校に忘れてしまったらしい。


「どーしよーかなー・・・」


 明日学校でやって間に合うならいいが、明日は朝一の授業で提出しなければならないので時間が厳しい。

 若葉か佳織に見せてもらうという手もあるが、先週に見せてもらったため少し気が引ける。

 やらないというのは論外だ。

 それこそ,お姉ちゃんからの特大の雷が落ちるだろう。

 となると,残る手段はただ一つ。


「取りにいこっかな」


 時刻は午後5時。

 ここから学校までは,歩いて大体30分くらいの距離。

 自転車を使えれば早いのだが、生憎この間修理に出しており、今家にはない。


 まぁ、徒歩でも急げば、お姉ちゃんが帰ってくる前に戻ってこれるだろう。


 ちらりと,傷害事件のことが頭をよぎるが,あれは夜遅くに起こった事件だし,私が通るのは大通りなので警察も警戒しているので大丈夫だろう。


 そうと決まれば、善は急げだ。


 4月とはいえ、夕方ともなれば外は少し肌寒い。

 私はパーカーを羽織り家を出る。

 日は山の陰にかくれ始め、遠く地平線は燃えるように紅い。

 空にはうっすらと星が出始め、夕闇に街が染まっていた。


           ◇


「うわぁ、すっかり遅くなっちゃったよ!」

 学校へ忘れ物をとりに行った帰り道。


 商店街のお菓子屋さんで新発売のあおり文句につられ、つい寄り道してしまった。

 そのお菓子屋さんは,いつもお姉ちゃんと買い物に行くところで、顔なじみのお姉さんの「一つ味見してみる?」という誘惑に負けてしまったのだ。


 仕方ないのだ。

 何時の時代も、女の子は甘いものには勝てないのだ。


 おまけにお姉ちゃんとお父さんの分を包んでもらい、お姉さんにお礼を言って別れた時、時刻はすでに5時50分を回っていた。


「まずい・・・お姉ちゃんに怒られる!」


 普段は優しいお姉ちゃんだが、怒るととんでもないことになる。

 以前うっかり帰りが遅くなった時など、3時間正座させられお説教&一週間のお菓子禁止令だった。

 成長期の女の子にとって、一週間もの間甘いものが食べれないというのは地獄にも等しい。

 甘いものが食べたいという欲求が、足元から頭の先までまるで猛火のように己の身を焼き焦がしていく様は、まさに灼熱地獄。 

 一週間が経つ頃には、甘いものを求め彷徨う生きた屍のような有様であった。

 今回はさらに、間の悪いことに「傷害事件」が発生してしまっている。


―――これはまずい。


 今度は一週間どころか、二週間、いや、下手をすれば1ヶ月の甘味抜きとなる可能性すらありうる。


 それだけななんとしても阻止しなければ!


 幸い、お姉ちゃんは今日買い物をして帰ると言っていたから6時までは帰ってこない。


―――つまり、タイムリミットは6時!


「って間に合わないー!?」


 ここから大通りを通って帰ると,どうやってもあと15分はかかる。

 また,信号待ちの時間も考えると,もっとかかるかも…。


「ど,どうしよ~…」


 思考しながら走っていると、ふと薄暗い路地が目に入る。

 この路地の先には、今はもう潰れてしまったショッピングモールがあり,そこを通り抜ければ直線距離で家まで帰り着くことが出来る。


 上手くいけば,6時までに帰ることが出来るかも!


 その結論に行き着いた時、私は大通りを外れ路地へと入っていった。

 

 ―――後になって思えば、薄暗い裏道はまるで

        

       大きく口を開けた,先の見えない暗闇に見えた―――

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