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一 軍人は信義を重んすへし

凡信義を守ること常の道にはあれとわきて軍人は信義なくては一日も隊伍の中に交りてあらんこと難かるへし信とは己か言を踐行(せんおこな)ひ義とは己か分を盡すをいふなりされは信義を盡さむと思はゝ始より其事の成し得へきか得へからさるかを審に思考すへし朧氣(おぼろげ)なる事を假初(かりそめ)に諾ひてよしなき關係を結ひ後に至りて信義を立てんとすれは進退谷(しんたいきわま)りて身の措き所に苦むことあり悔ゆとも其詮なし始に能々事の順逆を辨へ理非(りひ)を考へ其言は所詮踐むへからすと知り其義はとても守るへからすと悟りなは速に止るこそよけれ古より或は小節の信義を立てんとて大綱の順逆を誤り或は公道の理非に踏迷ひて私情の信義を守りあたら英雄豪傑ともか(わざわい)に遭ひ身を滅し屍の上の汚名を後世まて遺せること其例(すかな)からぬものを深く(いまし)めてやはあるへき



伊野上がすぐに続きを言いだす。

「軍人は、信義を重んずるべき。

おおよそ信義を守ることは、一般であるが、軍人は信義が無くては、一日であっても隊伍の中にいることは難しい。信というのは、自らの言葉を実践することで、義というのは、自らの務めを尽くすということを言う。だから信義を尽くすと思う時には、初めからその仕事を成し得れるかどうなのかをしっかりと考えるべきである。おぼろげであることを、とりあえず承諾して、なあなあの関係を結んでから、後々に信義を立てようとすれば、進退きわまって、身の置き場所に苦しむことがある。後悔先に立たず。初めによくよくことの順逆を弁えて、理非を考えて、その言は、できないであろうと知って、その義はとても守ることができないだろうと悟った時には、すぐに止めることがよい。昔から、あるいはちょっとした義理の信義を立てようとして、対抗の順逆を誤ったり、公道の理非を間違えて、私情の信義を守って、英雄豪傑たちが禍に遭って身を滅ぼし、死んでからの汚名を残すようなことは少なくないため、深く戒めておく必要がある。」

「信義って言うと、約束を守るとか、そう言うことなのかな。あ、そういや中に書いてあるね」

桃子が全文を聞き終わってから、

「そうそう。有言実行、忠義本分と言ったところかな。信というのは、言ったことはちゃんとするようにということで、義というのが自分の仕事をしっかりとやりとおすということなんだ。合わせて信義という言葉にしているんだね。軍人たる者は、信義を重んじなければならないということになるんだね」

「軍人じゃなくても、守るべきかもね」

「まあね。じゃあ、次に行くよ」

桃子に言ってから、伊野上は次の段落へと進んだ。

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