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第九話 VIOLET

 エモはお鍋に藍色の華を入れ、荷物を置いて、また町へと駆け出して行きました。


 エモの知らない間に、菫色の華は咲いていたのです!




 町のどこかに落ちているはず。でも、どこでしょう? 昨日はずっとチョンの後ろに隠れていたので、どこをどう歩いたのかも覚えていません。

 「どうしよう……!」

 空に広がるオレンジ色が、もうすぐ辺りが暗くなってしまう事を告げています。

 早く見つけないと、お花は枯れてしまうかもしれない。

 エモは焦りました。

 けれど、あっちを探しても、こっちを探しても、菫色のお花は見つかりません。


 「どうしたの?」

 突然、声をかけられました。

 振り返ってみると、そこには小人が三人、居ました。

 「お昼にお菓子をくばってた子だよね?」

 「あれ、すごくおいしかったよ!」

 「困ってるみたいだけど、何かあったのか?」

 「……!」

 エモは嬉しさで胸がいっぱいになりました。町の人が、自分からエモに話しかけてきてくれたのです!


 エモが菫色のお花を探していると言うと、三人は探すのを手伝ってくれました。



 「菫、スミレ……」

 「菫って、俺の色だ!」

 「そんなの知ってるよぉ」

 「ねぇ、菫色にはどんな意味があるの?」

 「菫色は、勇気って意味があるんだ! だから俺は勇敢なんだぞ!」

 「橙は友情! あたし、お友達大好き!」

 「ぼくは、ぼくは桃色! 桃色は……」

 「かわいー」

 「うるさーいっ」

 「わたしは、……わたしは、白と黒。黒は、安心。でも、白は知らないの……」

 「白は憧れよ!」 

 「すごいなぁ、エモちゃん、二つも色があるの? いいなぁ〜」

 「いい?」

 「うん! いいよ!」


 そう、色の意味なんて、町に来ればすぐに分かったのです。町には色を持っている人がいっぱい居ます。だから、みんな色の意味を知っているのです。

 赤は怒り。

 橙は友情。

 黄は希望。

 緑は思いやり。

 青は悲しみ。

 藍は努力。

 菫は勇気。


 「でもね、色の意味は一つだけじゃないの。おんなじ色にも、いろんな意味があるんだよ!」

 「へえ……!」


 「ねぇ、菫色! これじゃない?」

 桃色の男の子が言いました。

 駆け寄って見てみると、

 「これ……!」

 それは、確かに首飾りに咲く華でした。

 「ありがとう、みんな、ありがとう!」

 「どういたしまして」

 「またお菓子くれよな」

 「僕が見つけたこと忘れないでねっ」

 桃色の男の子がそう言うと、みんなで笑ってしまいました。





 みんなが帰ったあと、あらためてお花があった場所を見てみると、そこは、昨日群青色の小人に会ったところでした。

 「ここで、勇気出したから……」

 ムダじゃなかったんだ。

 そう思うと、嬉しくなりました。







 さぁ、お家に帰りましょう。白黒のお家へ。

 これで、虹が作れるのです。













 勇気を出したあの日、菫色。

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