第八話 INDIGO
その日は、とっても気持ちよく晴れた日でした。
時間はちょうどおやつ時。
さぁ、勇気を出して、エモは歩き出します。
「こ、こんにちはっ、おおお菓子、つくったので、食べたい人、あげるので、どうぞっ」
ここは町の通り。
エモは、詰まりながら、大きな声で言いました。
顔が燃えているように熱いです。冷や汗が吹き出ます。不安で不安でたまらないけれど、でも、エモはここで諦めるわけにはいかないのです。
「こんにちはーっ」
町の小人達は、みんなエモの方を見て見ぬふりをします。
そのたびにエモは悲しくなって、涙が零れ落ちそうになりました。
でも、でも……諦めるわけには、いかないのです。
どれくらい、時間がたったでしょう。
「……こんにちは」
「!」
いちばん最初にエモに声をかけてくれたのは、昨日、エモを凍った目で見た町の人でした。
群青色の小人です。
「……こっ、こんにちは!」
エモが大きな声で挨拶をすると、その小人は申し訳なさそうに微笑んで言いました。
「昨日は、ごめんね……。ひとつ、もらえる? チョンが、あなたはお料理が得意だって言ってたから……」
「……っはいっ!」
エモがお菓子を渡すと、その小人はもう一度笑って、ありがとうと言って去って行きました。
それから、少しずづ、少しずつ、エモのお菓子はもらわれていきました。
「すごく良い匂いがするね、あなたが作ったの?」
「君が白黒の子? なんだ、全然良い子じゃない!」
「また作ってきてくれる?」
エモのお菓子をもらって行ってくれる人は、そんなに多くはありませんでした。
でも、エモがふれた小人達は、みんなあたたかくて、思っていたより全然怖くなんかありませんでした。
「お花の首飾り? きれいね」
「え?」
気が付くと、首飾りには藍色のお花が咲いていました。
「いつのまに……」
そういえば、最初はお花が咲くときに、胸にあたたかさを感じました。
それなのに、いつからでしょう。お花は知らないうちに咲くようになっていました。
「あら、でも……これと同じお花、さっき見たわ。菫色の……どこにあったのかしら、忘れてしまったけれど」
「菫……?」
まさか、と思いました。
そうっと、首飾りから藍色のお花を取ってみると、なんということでしょう、黒い涙形がひとつもありません。
赤、橙、黄、緑、青、藍、菫。7つのきらきら光る宝石が、そこにはあります。
「まぁ、虹色ね……!」
エモはその人にありがとうと言うと、片手に残りのお菓子の袋、もう片手に藍色のお花を持って、お家へ向かって走り出しました。
お菓子の袋は、まだまだたくさん残っていました。
でも、エモは感じていました。
持ってきたときよりも、少しだけれど、それは軽くなっているということを。
その分だけ、エモの何かも、軽くなっているということを。
走っているうちに、声が聞こえました。
「このお菓子、本当においしいね!」
「うん、白黒の子って、ホントはぜんぜん怖くなんか無いのかもしれないね」
全速力で駆け抜けると、エモの髪はさらりと揺れます。
諦めずに努力した日、藍色。