第七話 GREEN
外に出ると、辺りは真っ暗で、つめたい雨が降っていました。
チョンは、こんな中で、ずっとエモを呼んでいてくれたのです。
なのに、どうしてあんな事を言ってしまったのでしょう。エモの目から、涙が溢れ出ました。
エモは考えました。
みんなが私を嫌ってる。白黒の子は、忌まわしい、感情が無い、気味が悪いってみんな言ってる。ずっと、そう思っていた。
でも、それは本当なの?
エモがいつも散歩をする草むらは、道も無いし、危険が多いと言われています。
けれど、あそこはやさしい物ばかりで、なんにも危険は無いと言うことを、エモは知っています。
エモが思う町は、とても冷たくて、恐い所でした。
けれどチョンは、町には怖い事はなんにもないと言いました。
「知らないだけなのかなぁ……」
エモの呟きは、降り続く雨の音に掻き消されます。
一歩踏み出すと、ぱしゃん、と、水がはぜました。
――透明の子は、色が見えませんでした。
最初から、世界は白と黒だけだったのです。
色で全てを判断するこの社会。
透明の子は、なんだか自分は仲間はずれのような気がしました。
『でもね、チョンは頑張って社会に入って行ったのよ。色が無いから、みんなの色を
見て、それを学んでね。そうしてみんなと仲良くなっていったのよ』
「そっか……」
エモは、いちばん大きな木の所に来ていました。
いちばん大きな木は、ゆっくりと、チョンのお話をしてくれました。
エモの知らなかったチョン……。頑張って頑張って、チョンはあの、明るくて優しいチョンになったのです。
「それなのに、わたしは、何にもしてない……」
『そんなことないわ、エモは虹を作っているじゃないの』
「でも……」
『でも?』
「もっともっと、やらなきゃいけないことがある気がするの……」
雨はやんで、いつの間にか朝日の光が顔を見せ始めていました。
露が光に反射して、とっても綺麗につやめいています。
「あ……」
エモはお家に帰って、お料理をし始めました。
こんなにたくさんを作ったことはなかったので本当に大変でしたが、今日、エモはお料理をするのをとっても楽しく感じました。
「熱っ」
うっかり、指に火傷をしてしまいました。
「……っ」
でも、エモはまだまだお料理を続けます。ほら、冷やせば大丈夫。
お鍋の中には今、赤、青、橙、それに黄色が揺らめいています。
エモはお料理をしている間、チョンのことを考えました。
チョンは、今まで色が見えなくて、苦しいことや、悲しいこともたくさんあったでしょう。
優しいチョン。いつも、いつも笑っていました。
でも、笑っていたけれど……もしかしたら、辛い時もあったのかもしれません。
だって、その笑顔は他人色。
自分の色ではないもので居る事は、時に憤りをも感じさせたでしょう。
「はやくチョンくんに、全部の色を見れるようになって欲しいな……」
そうすれば、何かが変わるかもしれないから。
「……できたっ!」
いつの間にか、首飾りには緑色のお花が咲いていました。
さぁ、町へ出かけましょう。
町には怖い事なんか、なんにもないのです。
誰かを思って何かをした日、緑色。