第六話 RED
やっとの思いで扉を開けると、そこにはチョンが立っていました。
いつの間にか雨が降り出していたようです。チョンはずぶ濡れでした。
「エモ、ごめんね、あの人、エモの事勘違いしてたんだ。でも、エモはとっても優しくて、料理が上手だって言ったらわかってくれたよ」
「……」
「エモ……?」
「だめだよ……」
雨の音が、聞こえます。
「だめって……何がだめなの?」
「……わたしは、みんなと一緒に居ちゃだめなの……」
「どうして?」
「……っどうしてって! だって、みんながわたしを嫌ってる! 白黒の子は、忌まわしい、感情が無い、気味が悪いってみんな言ってる……!」
「そんなことないよ! エモがそう思い込んでるだけだよ!」
「違う! みんながわたしを嫌いなの!」
「なんでそんな事わかるのさ!」
「わたしが……わたしが、わたしを嫌いだからだよ……」
白黒の子は、感情があまりありません。
感動が、出来ないのです。
エモは、そんな自分が大嫌いでした。
「…………わかった……」
「……」
雨の中、チョンはひとり、帰って行きました。
「――……あ……」
どうして、あんな風に言ってしまったんだろう。
どうしてあんなに怒ってしまったの?
チョンくんは、ずぶ濡れになっても、わたしに会おうと、扉をたたき続けてくれたのに……。
気が付くと、青い華は床に落ち、首飾りには赤い華が咲いていました。
でも、全然嬉しくありません。
むなしさだけが、そこには残っていました。
本気で怒った日、……赤色。