第四話 black
エモは、またまた困っていました。
首飾りに、お花が咲く。
でも、このお花が一体どうして咲いたのか、エモには分からなかったのです。
本をたくさん読みましたが、どうにも答えが見つかりません。
お鍋には、橙色と黄色がゆらゆらしています。
今日はチョンも来ないので、エモはおやつを持って散歩に出かけることにしました。
エモは、いつも草むらで散歩をします。
道も無いし、危険が多いと言って、他の小人はめったにここへは入りません。
けれど、エモは知っていました。ここはやさしい物ばかりで、なんにも危険は無いと言うことを。
けれど、エモは知りませんでした。ここに入って行くから、小人のみんなに気味悪がられていると言うことを。
顔を上げると、エモよりずっとのっぽの草、みずみずしい緑色の合間から、太陽の光が降り注ぎます。
「緑色のお花も、いつか咲くのかなぁ?」
ペンダントを見ると、橙色と黄色の宝石が輝きます。あとの涙型は、まだ深い黒色のままです。
「やぁ、エモじゃないか。久しぶりだね」
突然、声をかけられました。
振り返ってみると、そこには真っ黒な体、6本の足。
「アリさん!」
蟻は、エモの仲間でした。黒いからです。
「困った顔をしていたけれど、何かあったのかい?」
蟻はいつもエモのことを気遣ってくれます。
エモにとって、蟻は、とっても安心できる、お家のような存在でした。
エモが虹作りの話をし、どうやって花が咲くのかが分からないと言うと、蟻はうーんと少し考えた後、話し始めました。
「エモ、色にはね、たくさんの意味があるんだよ」
「意味?」
「そう。たとえばこの黒。黒には安心っていう意味があるんだ」
「安心!」
「心当たりがあるだろう? だからね、エモ。ほかの色の意味も考えてみるといい。たとえば、その橙や、黄色。そうすれば、きっとどうすれば良いのかが分かるはずだよ」
橙色と黄色の意味。少し考えただけでは、エモには分かりません。
「ありがとう、アリさん。頑張って考えてみる!」
おやつを分け合った後、エモは蟻と別れました。
「色の意味かぁ……」
ふぅっと風が吹き抜けると、エモの髪がさらりと揺れます。
白黒のお家に帰ると、いつもどおり、壁一面に並んだ本が出迎えてくれました。
やっぱりそこはとても安心できて、エモが一番好きな場所でした。
いつもの安心は、黒色。