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第十一話 RAINBOW

 涙の雫が、ぽつりぽつりと、首飾りに落ちます。

 雨のように、静かに、静かに。




 「エモ、お鍋、外に持ってこうよ」

 突然、チョンが言いました。

 「外?」

 エモはやっとおさまった涙を拭いて、チョンに問います。

 「うん。だって、虹が掛かるのは外だよ!」


 そうして、二人はお鍋を外まで持って行くことにしました。

 エモがひとりで運んだ時、お鍋はとっても重かったのに、チョンと二人で運ぶととっても軽く感じました。


 お鍋の中のお水をこぼさないように、ゆっくり、ゆっくり運びます。


 「チョンくん、全部見えるようになった?」

 「ううん、まだ! 虹ができるときにする!」

 チョンはもったいぶって、まだお鍋の中を覗き込んでいないのでした。



 「ねぇ、エモ。僕がいちばん好きな色、何色か分かる?」

 「えー? だってチョンくん、まだちょっとの色しかわかんないでしょ?」

 「でも、全部の色が見えても、これは変わらないよ。ねぇ、当ててみて」

 チョンはとってもにこにこしています。何がそんなに嬉しいんだろう? エモは不思議に思いました。

 「うーん、橙? 最初の色」

 「ブー」

 「じゃぁ黄色?」

 「ちがうよー」

 「これ以外ないでしょー?」

 「あるよ! 下ろすよーよいしょっ」

 二人は扉を開ける前に、お鍋を床に置きました。

 「じゃぁなに? わかんないよ」

 「ふふ、わかんないの? 僕のいちばん好きな色は、白黒だよ!」

 「!」

 エモはびっくりしてしまいました。

 白黒が好き? そんな人、聞いたことがありません。

 「ねぇエモ、僕ね、ずーっと白と黒しか見えなかったんだよ。いろんなものの、本当の色が分からなかったんだ」

 「うん」

 「でもね、エモは白黒だったんだ。最初から、エモのことだけは、ちゃんと見えたんだよ! だからだよ!」

 エモはあっけに取られてしまいました。

 だから? だから、白黒が好きなの?

 「……変なの」

 「変? エモ、ひどいよー」

 「変だよ。でも、嬉しいな。」

 エモはまた、涙がでてきてしまいました。



 「開けるよ!」

 そうチョンが言うと、エモのお家の扉が開かれました。

 朝日が、差し込みます……。

 「よいしょっ」

 二人で声をあわせて、大きなお鍋を運びます。

 首飾りが太陽の光を受けて、いつよりさらに、美しく輝きます。


 「わぁっ」




 すると、お鍋が突然軽くなりました。

 色水が、空へと上ってゆきます。

 「チョンくん、チョンくん、やった! 虹が掛かるよ!」

 「うん……!」


 チョンは今、すべての色を手に入れます。

 赤、橙、黄、緑、青、藍、菫……


 「すごいすごい! 虹色って、すっごく綺麗なんだ!」






 その虹は、エモのお家から町まで、草むらの端っこでも見えるくらい大きく掛かりました。







 「凄い凄い! きれいだね、きれいだね!」

 「うん、うん!」











 とってもとっても感動した日、虹色。

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