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心に残ってくれた友人と会話しながら

作者: 三國ぺけ
掲載日:2026/10/01


 最後にメールもらってから一月くらいか。


 6年ほど前に会社を移って遠くに引っ越した友人。


 半年ほど前に“野暮用で帰郷するから呑みに行こう”と連絡を貰ったんだが、そんな彼は写真を嫌っていた。


 顔を覚えられない俺は、早めに着いた待ち合わせ場所で不安になり、“今日はどんな服着てるの?”とか、今思えば不穏なメールを送った。


 おーん? 返信されてきた特徴に合致する人物は居るが、あんな顔してたっけなぁ……

 ん? なんか女の人が来て寄り添ったぞ? え? 彼女か奥さん紹介するつもりなん?

 俺、何も聞いてないんだけど?


 声をかけようか悩む俺を嘲笑うかのように、これみよがしなドヤ顔を浮かべる見知った顔が、少し遠くから登場してきた時は笑うしかなかった。


 そんな彼との出来事を思い出してニヤけている自分に気づく。ちくしょうめ。

 そっちはどう? そんな何気ない文章をメールで送った。


 その日にメールの返事は無かった。


 まぁ、数日くらい返信来なかったり、返さなかったりは普通にあった気がする。



 メールの返事がない。どーした?


 メールの返事がない。忙しい時、俺もそんな感じか。


 休めてる?大丈夫ー?


 メールの返事がない。携帯無くして変えちゃった?


 おーい、元気かー?


 メールの返事がない。俺、なんか要らんこと言ったかなぁ?


 メールの返事は無い。


 ……

 …


 学生の頃からの友人はいるが、社会人になってからの友人はキミだけだ。

 同じ業界の話を、主観以外で見つめることができる貴重な時間をくれる友人だ。

 酒の席でも悪人を作らない、負の感情に振り回されない貴重な友人だ。



 まぁ、俺もメールの返信めんどくさがって、そのまま年始の挨拶まで無視し続けたことあるしな。そんな感じかな?


 ……

 …


 なぁ知ってる? 最近は留守電に残された言葉って、文章に起こしてくれるんだな。


 知らない番号からの電話なんて出ないじゃん?

 だから、そんな番号からの留守電残ってても基本的に消す。


 あー、留守電だ。消そ。


 ……不思議と指がもたついた。

 んで、目に入った。見覚えのある名前と、その身内ですって文章。


 こんな形でキミの状況を知りたくなかった。


 これまで幾度となく直面してきた不安。そんな時は幾つかのネガティブなパターン考えてさ……でも、挙げた中の最悪に当たることって、一度もなかったんだよ。



「……で、年行ったせいか、悲しいのに涙も出ねぇ俺は、なんか間違ってる?」



『知らねぇ〜w w w』


―――


「キミは写真とか嫌う人間だったから、すでに顔も朧げなんだが?」


『顔は忘れるって言うね』


「匂いは長く記憶に残るって」


『匂い? 俺の?? 気持ち悪っ!? サブイボたったわ……』


「いや、何考えてんだよ……俺も貰いサブイボだわ……」


 んはははは


『俺、いい声してたと思うんだよね』


「おー、職場でそれ言われたの覚えてるわー。んっふふふふ……」


『いらん事言ったぁ……』


「声か。今でもちゃんと浮かぶよ」


―――


「俺らって男同士だからさ、プレゼントの贈り合いなんて無かったじゃん?」


『あっはっは、おい? ……それは物議を生むんじゃ?』


「世間を敵に回すつもりはないし、これ主題じゃないからね?」


『……んだよ、じゃあ早く本題に入れよ』


「んはは。俺の部屋さ、神棚っぽいのあるじゃん?」


『おー。あるね』


「そこにキミにまつわるもの祀って、週末にはお酒供えようと思ってんだよ」


『いいじゃん。やってやって!』


「でさ」


『……何よ? あー……俺にまつわるものが無いって話になんのな』


「それがあるんだよ」


『んだよ、あんのかよ!? なんの前振りだよ!』


「――“注文してたの忘れて二個あるから”っつって送ってきたゲームぅ!――」


『……』


「……」


『ンフッ、それ祀(まつ)んの?』


「……悩むでしょ?」


『もうそれ、そのゲームの推し活してるだけじゃんwww』


「キミとのメール見返してて、唯一たどり着いたのがコレなんだよなぁ……」


『暇してんなぁー……』


「暇じゃないよ」


―――


「んっふっふ……」


『うっわ何? 気持ち悪っ』


 んはははは


『いや、何が面白いんだよっ』


「まぁ聞くといい。そして刮目せよ!」


『うっぜ』


「んふふ……ジャァァァーン! キミと交換した名刺ぃ〜!」


『いや、それ俺が昔いた会社(とこ)のじゃん』


「別に、なんでも良かったんだよ」


『何処見てんの? あー……』


「週末をお楽しみに」


『いや、今から祀るんなら、今ちょうだいよ?』


「よくばりさんだなぁ? 仕方ない、梅酒で良いかな?」


『普段せかせかしてんのに、ゆっくり丁寧に動くのウッゼ!』


「いやいや、いつも通り、せかせか丁寧にやってんだよ! コレこぼしたら大惨事だからね??」


『あっはっは!』


「笑うとこじゃねぇー!」


―――


「あー……」


『なぁに、なぁにぃ? なんか機嫌悪いの?』


「はぁー……いや、何というか……はぁ……悪いね」


『ホントだよ、お供えしてもらった後にンな顔見せられたら呑み難いだろぉ?』


「んふっ……あー、もう。はいはい乾杯!」


『うっわ適当ぉ』


「……ぶ、この梅酒、甘っま!? これはちょっと……」


『あー、もったいねぇ。何か知らんけど、漢なら受け止めろよぉ?』


「……それ、どっちの話?」


『あっ、俺も世間を敵に回す気はないんでぇ、今の発言は表に出さないでもらえるとw w w』


「出しても俺が責められるヤツぅ」


 んははははは


「……ズルくない?」


『何? キミのクソ真面目さが? えぇ? もしかして俺ぇ?』


「他に何があるんだよ……」


―――


「ウチの爺ちゃん婆ちゃんが亡くなって、しばらくは写真が掛けてあったんだよ」


『うん? 何、突然?』


「その写真がさ、片付けられててさ」


『は? 仏間にある写真が?』


「いや、ウチに仏間とかなかったから、普通に壁に掛けてあった」


『絵画かよ……』


「んふっ……いちいち笑かすな」


『サーセンw』


「ふぅ……」


『いや、続き早(は)よ!? 俺巻き込んでんのに、勝手にひと段落するのやめてくんない?』


「んふふ……何の話だったっけ?」


『おっ前ぇ……』


 んははははは


「そう、“写真、なんで片付けたんだ?”って聞いたんだよ」


『おう。やっと戻ってきたぁ』


「そしたらさ、“いつまでも写真置いとくと、成仏できないんだって”って、言われた」


『……そーなん?』


「いや、どーなん? 仏間とかにある遺影とか、代々受け継がれてんのによ? それで成仏できないなら、仏間どーなってんだよ? ご先祖様だらけかよ?」


『知らねぇよ! いやキミ、ちゃんと調べた?』


「えぇ〜? コレって調べて答え出るもんなん?」


『出る訳ねぇな』


「……写真じゃないけどさ、俺もキミの名刺祀ってんじゃん?」


『お酒、ご馳走様でーす』


「ふふ……これのせいでキミ、成仏できなかったりすんの?」


『……最悪、キミが死ぬ時には一緒に成仏できるだろ?』


 …………………………………



 馬鹿野郎



「……ふふ。ほら、俺は子供いるし、遺影飾られちゃうかも知れないし?」


『ちくしょうめ! w w w』



 んははははは


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