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ガウル  作者: キヌミタロ
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第11話 幽霊

 カラスが落ちている杖を拾う。すると道が突然消える。そこにあるのは壁だ。

「まさに偶然の産物。そしてどうしてここに君が落とされたのかも分かる」

 ダンネが「どういうこと?」と尋ねる。

「この場所を君に見つけて欲しかったんだろう。それが何を意図してるかまでは分からない。とりあえず杖は君に返すよ」

「ありがとう」

 ドロップが杖を受け取る。あったはずの壁が消え奥へ続く道が見える。

「君が杖を持って進めば道が開ける。ただ歩けないよね? 少年、背負ってあげなよ」

「僕?」

「蟻さんを助けるためとわいえ、少年が君を怪我させたんだ。背負ってあげる責任はあるさ」

 確かに僕がドロップを怪我させた。僕がドロップを背負うべきだ。僕はドロップの前でしゃがむ。ドロップはゆっくりと僕の背に乗る。なんかちょっと。

「あったかい」

「あったかい」

 僕とドロップは同時に同じことを言った。ダンネが片腕を前に出して宙を撫でる。

「地中だからちょっと寒いかも」

 ドロップが僕の服を引っ張る。

「あそこに誰かいるよ」

 皆で道の先を見る。誰もいない。

「誰もいない」

「いるよ! ほら!」

 ドロップが道の先を指さす。それでも誰も見つからない。

 カラスが少し先を進む。

「見えないねえ、どんな人だい?」

「白い服を着ていた」

「それはもしかして君と同じ服かい?」

 ドロップは自分の服を見て「うん」と頷く。

「なら目指すはその先で間違いない。それじゃあ少年、先に行くんだ」

「僕?」

「そうだよ。君が持っている杖を少年が背負っている。なら先に行くのは少年だ」

「嫌だ」

「どうしてだい?」

「だって幽霊が」

 この先にドロップにしか見えない幽霊がいる。そんな怖いところに行きたくない。ダンネはニヤニヤしながら僕を見ている。

「幽霊が怖いんだあ」

「怖いよ、だって幽霊だもん。幽霊に近づきすぎると連れて行かれちゃうんだ」

「幽霊なんてこの世にいる訳ないでしょ」

 カラスが「ふむ」と言った。

「幽霊はいないけど似たようなのはいるから気をつけてね」

 ダンネがカラスを見て、僕の後ろに回る。僕はダンネを見る。

「ガウルが先頭」

 ダンネは道の先を指さす。

「嫌だ」

「しかし少年、この先に謎を解く鍵があるなら進むべきだ。そうじゃないと村人の皆が危ない」

 そうだ、いま村人の皆は眠り続けている。でも暗闇の先へ行くのが怖い。ドロップがまた前を指さす。

「あの人、左に曲がったよ」

 僕はおそるおそる足を震わせながら前に進む。どうして僕が先頭なんだ? ドロップの杖が少し光っているが暗いことに変わりはない。道は真っすぐ歩くと左右に分かれていた。

「あっち」

 ドロップが指さす方向はまた暗闇だ。逆の方向を見るとさらに暗い。僕は逃げるようにドロップの指さした方向へ歩きはじめる。咄嗟に視線を感じて後ろを振り返る。ダンネとカラスが僕を見ている。

「な、なに?」

 ダンネが慌てて振り返る。どうやら誰もいないようだ。暗いところは大嫌いだ。僕はドロップが指さした方向を歩きはじめる。

「ねえなんなの!」

 暗闇の道はどこに続くのか分からない。僕は背負ったドロップが指さす方向をただ歩いていくだけ。ドロップには白い服を着た誰かが見えているらしい。僕はたまに後ろを振り返る。ダンネが僕を睨む。

「いちいち振り向かないで!」

 怒られた。僕はまたドロップの指さす方向をひたすらに歩きはじめる。ずっと真っすぐ歩いたり、途中で右や左に曲がったり。いつまで歩き続けばいいのだろう?

 ダンネが「ねえ」と言う声に驚いて咄嗟に振り返る。ドロップが振り落とされそうになるけど僕にしがみつく。

「かなり歩いたと思うけど、このまま進んで大丈夫なの?」

 ダンネはカラスを見上げる。カラスは暗闇の先を見る。

「ふむ、確かに歩いたね。ところで君、まだ白い服の人は見えるのかい?」

 ドロップが暗闇の先を指さす。

「あそこに立ってるよ」

 僕が暗闇の先を見ても誰もいない。ドロップだけに見えているらしい。

「ただ歩いているだけじゃたどり着かないのか?」

 カラスは顎に手を添える。カラスの仮面を付けているせいでどんな表情しているのか分からない。

「よし、少年たちは引き続き君の見える誰かを追ってくれ。僕は分かれ道を反対に進んでみよう」

 僕たちは歩き続け、ドロップが指さす方向へ僕とダンネは進む。反対方向の暗闇へカラスが歩いていく。カラスの行く先は明かりひとつない。

「僕のことは心配しないでくれ、いざとなったらひとりで逃げ」

 カラスは暗闇の道へ消えていった。僕は怖いので足早にドロップの指さすほうへ歩く。すると突然、行き止まりにたどり着く。少し広い部屋。奥に小さな白い花がひとつ咲いている。

 僕が近づいていくとドロップの杖が徐々に光を強くしていく。急に誰かが僕の肩を掴んで僕は驚く。振り向くと別方向へいたはずのカラスが僕を見下ろしていた。

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