第6話
死体回収業務は真似っこさん
⻆谷 春那
CASEK.1
第6話
怪物が、目を閉じる。
「人格が『ブレる』」
と言う発言の意味を理解していない、令嬢を蚊帳の外に追いやったまま。
「・・・妹よりさ。
こっちの方が、お前は喜ぶし、信じるんじゃない?」
ぐにゃりぐにゃりと、肉が変わる。
蜘蛛が、幼気な子供にバラバラにされる程、残酷に。
雲が、風に吹かれて崩れていく程、呆気なく。
一度の崩壊と、一度の構築を。
幾度も繰り返す。
先程の言葉も、目の前の光景も、令嬢は理解していない。
だからこそ。理解させないからこそ。
「怪人」は、【怪人】たるのだ。
「・・・だからさ?
あんまりの無茶ぶりは、よしてくれよ?
レミィ?」
「・・・え?」
黒髪の、背の高い男に変わる。
令嬢は、この男を、知っていた。
「俺も、出来ればやりたかないんだよ。
色んな人を真似すればする程、どんどん、ぶれていくんだよ。」
飄々とした態度―この男の話し方で、【怪人】の言葉が紡がれる。
少し肩を竦め、形だけの困り眉をしながら。
少し相手に、非を感じさせるような―この男の、言い回しで。
「・・・つまり、リスクがあるって事?」
「そう。俺の模倣、ただの模倣じゃ無いんだぜ?
そんじょそこらの狐狸の話とは、訳が違う。
それこそ、そっくりそのまま、その本人の人格を模倣する。
だから、俺、常に多重人格みたいな状況になってるって、訳。
こんな風に。」
そう言って、右側だけ、令嬢の顔になってみせる。
「・・・だから、貴方、がらりと印象が、変わったのですね。」
「そう?まだ、一回しか変わっていないとは思うけど?」
ハーフ&ハーフの歪な顔のまま、屈託なく笑う。
「・・・既視感が、あるのですが?」
ぐにゃりと歪み、再び全面が男の顔となる。
「あはははは!こうして俺と話しているって事はさ。
・・・俺の言った事、信じてくれた?
ね、レミィ?」
そう言って、令嬢の肩に手を置く。
「まぁ、今となっては、信じない訳にはいかなくなりましたよ。」
そう言いながら、手を払う。
「まさか、貴方との関係があるなんて、知っている人は居ないでしょうし。
・・・それに、私をそう言う風に呼ぶ人は、貴方しかいませんよ。」
「と言うか、まだバレてないんでしょ?凄いね!!」
「まぁ、そうですね。
貴方くらいですよ、見抜いた人。」
「光栄だね。俺は君たちにとって、ある意味オンリー・ワンと言う訳だ。」
「・・・分かったわ。
貴方が噂の【怪人】だって、信じるわ。」
「お、そう?もう?
ま、カイラによろしく~。」
「待って。
・・・貴方、今、どこにいるんですか?」
「さぁ?あっちに聞けば、教えてくれるんじゃない?
知らんけど。」




