第5話
死体回収業務は真似っこさん
⻆谷 春那
CASEK.1
真似で救われる人生
第5話
「・・・にしても、羊皮紙なんて。
久々に見たわ。」
「やっぱり、変?」
「『変』、と言うより…
『珍しい』、ね。
紙の方が安いし、丈夫だし。
今となっては、芸術・嗜好の分野くらいかしら。
・・・あの男―貴方を紹介した男―も、ただの紙だったわよね?
なんで、そんなもの、持って来ているの?」
「・・・羊皮紙の方が、インクの染み込み具合で、分かるらしい。」
「何が?」
「俺が、捏造していないか。
俺、筆圧が濃いから。
俺が書くと、インク溜まりがすぐにできる。」
「・・・普通の紙でも、変わらないんじゃないの?」
「それはそう。
・・・お前の妹、名前、何て言うの?」
「あぁ。まだ、言っていなかったわね。
・・・そこからは、貴方が書くの?」
「そう。」
「ドレミア=ハイト。」
「ドレミア=ハイト・ワーガーネス?」
「そうよ。
・・・貴方、それ、何語?」
「あぁ。上司の、母国語。」
「あぁ。【極大陸】の、言葉ね。」
「まぁ、そんなもん。」
「・・・それで、誰を連れてくれば良いの?」
「・・・。」
「ひょっとして、疑ってる?
・・・まぁ、それも、そうか。
俺の上司、胡散臭いし。」
「・・・貴方も、なかなかの怪しさよ?」
「・・・え、俺も?
・・・まぁ、【怪物】だから。」
「・・・私としては。
と言うか、科学が発展した現代に生きている私からすれば。
中世じゃないのだから、【怪物】【怪人】と言う概念すら、疑わしいものよ。」
「・・・まぁ、最近の貴族世代でも、そう言う人が増えてるね。
ある程度生活が困窮している層になると、
神様とか悪魔とか、今でも信じている人が多くなるの、不思議だよね。
聖職者とか貴族とかも、多いのに。」
「・・・貴方は、貴族が嫌いなのかしら?」
「・・・別に。
俺個人は、支配者が嫌いなだけ。
・・・これ、誰だろう。
・・・ひょっとして、お前かな。」
「・・・何を言っているの?」
「・・・俺、近くにいる人間の、理想を【模倣】する怪物だから。
お前、貴族社会とか、身分制度とか、嫌い?」
「・・・まぁ、有名な話よ。」
「あ、そんなに嫌いなんだ。
意外…
・・・あ、結局、誰を連れてきて欲しいの?」
「話を、有耶無耶にしたって、疑念は晴れないわよ。」
「・・・でも、お前は俺を探してたんでしょ?
信じてたんじゃないの?」
「存在はある程度は許容しているけど、貴方が信用に足るかは別よ。
・・・私はただ、愚妹のために探しているだけなのよ。」
「・・・どうしたら、信じてくれるの?
お前は俺に、何をして欲しいの?」
「・・・貴方、自分の事を【怪物】だって、言うんでしょ?
噂通りの、『死者に化ける怪物』『死体を連れて来る怪人』だって。」
「まぁ、そうだね。
そう言う噂に、なってるみたい。」
「・・・じゃあ、化けてみなさいよ。」
「誰に?」
「私に。」
「・・・嫌だ。」
「なんで?
一番簡単な、証明でしょう?」
「・・・せめて、あの妹の方にして。
・・・本人に会うと、いよいよぶれる。」
「・・・何が?」
「・・・俺個人の、人格が。」




