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死体回収業務は真似っこさん  作者: ⻆谷春那
CaseK.1 真似で救われる人生
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第4話

死体回収業務は真似っこさん

⻆谷 春那

CASEK.1

真似で救われる人生

第4話


ドアが開き、金髪の少女が部屋に入る。


「・・・?」

「・・・本当n。」

「そう。本当に。

俺は御依頼者様・・・・・が聞いた、噂の怪物・怪人。

噂に出て来る、怪人寄り怪物。

・・・信じて、くれない?」

「・・・いや、信じるわ。

少なくとも、今、この状況下においては、信じざるを得ないわ。」

「そんな、何か強制したつもりはないんだけど…。」


若干の困惑の表情も、無い。

全く、表情が動かない。


生糸で編まれた、刺繡糸。

そして、その糸で縫われたような、美しい色合いの眉。

王宮の女官の刺子のような、凛々しく、美しい眉。


そして、グレーとも水色とも言い難い、美しく光沢を魅せる生糸に囲まれた、

猫のような模様の、金色の宝石―クリソベリル・キャッツ・アイ。

一遍の濁りも無く、細める事も無く。

令嬢を見据える。


対照的に、相対する金髪の少女は、険しい顔をしている。

後ろに控える老婆は、目を閉じ、決して口を出さず、ただただ静かに見守っているが。


「・・・そうだ。名前。」

「・・・貴方の?」

「違う、御依頼者様・・・・・の。

上司から、聞いてこいって言われて来た。

いつもは、向かう前に、教えて貰えるんだけどね。

何故か今回は、苗字も教えてくれなかった。

『お前が聞いて来なさい』って。」

「は?!」


一気にずかずかと、距離を縮める少女。

勿論、心理的距離は、反比例的に遠ざかっているが。


「ふざけないで!」


その道すがら、壁に飾ってある、古い剣に手を取る。


「下賤で下品で、下世話な下民風情が!!」


余談だが、これは第7代当主の持ち物だったらしい。


「馬鹿にしているのかしら!!」


そして金髪の少女は、今「怪人」に剣を突きつけ、立派な「怪物退治の絵面」をしている。

そしてとある金髪の高貴・・な生まれの令嬢は、「趣味硝子」と同じく、あまり気に入っていないらしい。

「古臭い」「非実用的」と。


「・・・ふざけているのかしら。

不敬罪に処しても、私は一向に構わないんだけど?」

「・・・封建制度を、『非現代的』と批判していた人物の台詞とは、到底思えない。

・・・そうは、思いませんか?」

「・・・貴方、知っているんじゃない。」

「・・・お前の事は少しも知らない。

だから、これは多分、お前の理想。」

「・・・は?」

「俺は、理想を叶える怪人・・だから。

これ、お前の深層心理じゃない?」

「・・・そんなに、死にたいようね。」

「どうせお前は、俺を殺さない。

・・・どうせ俺が、最後の希望と言ったとこだろ?」

「・・・それも、私の理想とでも、言いたい訳?」

「いや。これは珍しく、俺自身の持論。

今までの奴、皆そうだったから。

・・・そろそろ、退けてくれない?」

「・・・私は、本当に殺せるのよ!!

それに、殺人罪にも問われないわ!!」

「・・・こう言って欲しいの?

『どうせ、殺せないくせに。』って?」

「っ!!!」

「お嬢様。」


いよいよ「怪人」が流血しだした頃合いで、老婆が止めに入る。


「ローリー!何?!」

「・・・お嬢様、御召し物が汚れてしまいます。」

「・・・分かったわ。

・・・ローリー!

この無礼な女を縛りなさい!!

・・・貴方。

着替えに行ってくるけど、逃げるんじゃないわよ。

帰ってきたら、直々に処刑してあげるから、覚悟なさい!!」


大きな音を立てて、ドアが閉まる。


そして三分も経たない内に、金髪の少女が入って来た。


「・・・着替えるんじゃ、なかったの?」

「あれは、妹よ。」

「あぁ。あれが。

お前も、大変だね。」

「えぇ、そうでしょ?」

「・・・お前の、御依頼者様の名前を教えろ。

替え玉じゃ、駄目だ。」

「別に、逃げるつもりなんて無いわ。

ただ、会わせておきたかったのよ。

御免なさいね?

・・・悪かったかしら?」

「『御引き合わせ人』の名前は、『御依頼者様』から聞く。

例えそれが本人であっても。

そう言う決まり。」

「そうなのね。面倒ね。」


「怪人」は外套から、一枚の羊皮紙を取り出す。

別に、紙が無い時代でもないのにも関わらず。


「これに、サインして?」

「分かったわ。」


そして令嬢は、渡されたペンでは無く、愛用の万年筆で名前を書く。


そして書き終わり、「怪人」に羊皮紙を返すのだが、その名前を見て初めて、「怪人」は目を細めた。


その名前の一点を、ジッと見る。


「・・・ねぇ。これ、何て読むの?」


「怪人」が指指している場所には、正直、考古学の博士が必死に解読しだしそうな、

見た事の無い文字が書かれていた。


「・・・ごめんなさいね。

最近、タイプライターばかりだったから。」


文明の利器の偉大さを、改めて肌で感じる。


「・・・いや、俺、この国の字、読めない。

何て書いてあるの?」


真実か否か。

それを語るのは、藪である。


「・・・ありがとう。」

「・・・え?何で?

・・・それより、これ、何て書いてあるの?」


フォローではなかった可能性も浮上してきた。


「・・・貴方、名前は?」

「・・・え?」

「いや、ここだけの話じゃなくて、この大陸に共通する習慣なんだけどね?

基本的に、貴族は後に名乗るのよ。

身分が低い方から名乗るから。

王族は例外で、最初に名乗るけど。」

「・・・それ、本当?」

「そうよ。この大陸は初めて?」

「いや。この国以外ならあるけど…

・・・こんな風習、言われた事ないんだけど?」

「まぁ、廃れた貴族社会の風習なのよ。

だからあまり、今は言う人はいないわ。」

「・・・俺の、名前?」

「そうよ。先に名乗らせるなんて、失礼よ。」

「・・・『モストロ』。」

「あら?それ、そのまま『怪人』と言う意味じゃないの。

貴方、私をからかってるの?」

「・・・企業秘密。」

「え?」

「俺は『死体回収業務担当』。

本名は企業秘密。

と言うか、匿名希望。

プライバシー。

だから『モストロ』。」

「・・・まぁ、良いわ。

ちょっと私も、悪ふざけが過ぎたわ。

ごめんなさいね。」

「・・・本当に、これだけはよして。

肝が冷える…」


珍しく不服そうな雰囲気をしている。

顔は相変わらず変わらないが。


「・・・何?」

「いや。別に。

何でも無いわ。」

「・・・それより、お前の名m」

「カイラ。

カイラ・ワーガーネス。」

「お嬢様は女爵にあらせられるのです。」


老婆が口を開き、補足をする。


「えっと…

レディ・ワーガーネス?」

「左様で御座います。」

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