第2話
死体回収業務は真似っこさん
CASEK 1
真似で救われる人生
第2話
「成程成程。
心中お察し致します、えぇ本当に。」
「・・・それ、本心?」
正直、この男にお悔やみを言われても、胡散臭さの不快感しか勝たない。
不快感のせいか、やけに愛想が良すぎるせいか、どちらかは分からないが、本心とは思えない。
昼間なのに静まり返ったカフェに響き渡る、男の声が、酷く憎たらしい。
物語の中には、衝動的に殺人を犯してしまった者も登場する。
その者達の気持ちが、今初めて分かる気がする。
正直、この男以外に「真似っこさん」の手がかりが無ければ、私はこの男を冷やしていたかもしれない。
そんな私の内心に構わず、男はこれまた逆鱗を逆なでするような仕草で答える。
「えぇえぇ、そんな、滅相も御座いません。
お嬢様は下名がそんな、血も涙も無い男に見えられるのですか?」
オーバーリアクションが、蠅の羽音のように、もはや本能的な不快感を与える。
噴水から水が湧き上がるように、舗装されていない道路を通る馬車の乗り心地が悪いように。
必然的に生まれる不快感。
「果てさてお嬢様。
御依頼内容は、
『妹君の婚約者様』
で、宜しいでしょうか?」
「えぇ、構わないわ。」
「有難う御座います。
それではお嬢様、これにて当方とお嬢様の間の縁は正式に結ばれ、お嬢様は当方のお客様となります。
大変恐縮なのですが、お嬢様のお名前、御住まい、
妹君のお名前、妹君の婚約者様のお名前・御職業、
その他お嬢様の身の回りに関します御質問をいくつか、
契約に差し当たりまして御伺いしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「・・・構わないわ。」
「有難う御座います。」
「私は…」
流石にいくら人気が無いとは言え、ここで言うのは憚られる。
そこで私は、
「一応念のために」
と、持って来た短剣を思い出した。
腰に下げた短剣に手を掛けても、男は眉一つ動かさなかった。
「絶対に私には殺されない。」
と言う自信でもあるのか、それとも余程戦闘能力に自信があるのか。
意に介さないと言ったところが、何故か下に見られているような気分にさせて、これも不快だ。
「拝見致します。
・・・おや?
・・・これはまた。
・・・失礼致しました、お嬢様。」
「話は付けておくわ。
・・・三日後に来なさい。
そこで、それにサインもするわ。」
「承知致しました。
・・・ですがお嬢様。
大変恐縮なのですが…」
長ったらしい前置き。
イラつきは次乗的に増えるばかり。
「・・・下名がお嬢様の御予定に合わせるべきなのでしょうが、
何せ之を待ち望む御仁は後を絶ちません。
・・・お嬢様の御立場もありますでしょうし、此処で契約を完全に成立致します事は難しいでしょうが、
お嬢様には契約を結ぶ意思が十二分にあらせられるとお見受け致しております。
・・・どうでしょう?」
「・・・まぁ、その通りよ。」
見透かされているようで、気分が悪い。
「そうでしたか。
其れは結構な御心構えに御座います。
・・・いかかでしょう?
【死体回収担当】を向かわせようと思うのですg
・・・いかが致しましたか、お嬢様。
急に立ち上がられて。
何か、御気分を損ねるような事、下名は申しましたでしょうか?」
「・・・それって、例の、噂の。
・・・【真似っこさん】が来る、と、言う、事?」
「えぇ、はい。
全く持って、その通りに御座います。
・・・何かご不都合な点が、御座いましたでしょうか?」
「・・・いえ、無いわ。
・・・分かったわ。
その通りにしなさい。」
「有難う御座います。
それでは、三日後の昼過ぎに向かわせましょう。
・・・貴女の行く末と歩いた道筋の、確約された良縁に祝福を。」
そう言って、中年の細い男は立ち去った。




