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占者が告げた道

「ねえシグルス。あなた、自分が“書かれた通りに動いていない”って、自覚はある?」

シグルスはその言葉に反応しない。じっとアヤの目を見つめるだけだ。


「いまはそれよりもエイナだ。こいつの体になにか異常があれば教えてほしい」


「まあいいわ。それについては今はどうしようもないものね。それであなた……」

アヤの目が、シグルスからエイナへと向けられる。


「あなたが囚われている呪いはとても厄介ね。死者の匂いが強すぎる。」

「呪い!わかるのか!どうにかできないのか!?」

ロッドが身を乗り出す。


「残念だけどこのまま放っておけばあなた、死ぬわよ。」

アヤは少しも動じずにさらっと言った。ロッドの顔が青ざめた。


「嘘だろ!?どうにかする方法はあるんだろうな?」

ロッドがさらにアツくなる。しかしアヤはそれでも少しも感情を顔に出さなかった。


「どうにもできないとは言わない。ただ簡単なことではないわね。わたしにもそこはあまり細かく分からないわ。残念だけど私になんとかできる範囲の事象ではないの」

そういったアヤの目は冷たかった。


「そんな……」


その時だった。またしても白い文字が視界に現れた。


≪アヤは編集者の権限(コデックス・キー)を探して、世界を放浪している。≫


考えている場合ではなかった。とにかく藁にもすがる思いで口を開いた

編集者の権限(コデックス・キー)……」

それを聞いたアヤの顔はさっと青ざめた。


「あなた、それをどこで聞いたの、なにかを知っているの?」

明らかにさきほどよりも慌てている。言葉に焦りと驚きがにじみ出ていた。


「探しているんだろう?」


「……そうね。確かに私はそれを探しているわ。まさか、あなたがそれをくれるというのかしら」

なんの話かはわからなかった。しかし相手が隙を見せている今がチャンスだ。シグルスは本能で感じとった。


「ああ、おまえにくれてやる。だが条件付きだ。まずエイナのことをなんとかできてからだ」

虚勢だった。

だが凄腕の占い師でも、そこまではわからなかったらしい。

「いいわ、彼女のことはなんとかできるように全力は尽くすわ。必ずなんとかなるとは保証できないけど、私にできることはさせていただくわ」

シグルスは頷いた。

「具体的にはどうすればいい?」

「明日の朝を待って。そうすればわたしが道を示すわ。あなたたちはその道を進めばいい。わたしもその道の先がどこに繋がっているかはわからないけど。」


**

結局、シグルス達はいつも寝泊まりをしている役場に帰るしかなかった。

「シグルス……さっきのやつはなんなんだ?そのコデなんとかってのは」

「実をいうと俺もよくわかってない。詳しくはいえないんだが、あの占い師が欲しがっているのがわかったんだよ」

「なんだそりゃ。おまえはいつの間に心が読めるようになったんだよ」

ロッドは笑い飛ばす。とりあえずエイナのことに関して、進展が得られそうなのが嬉しいのだ。

エイナはずっと黙っていた。もともと無口な方だが、シグルスとロッドもそれを察して無理に話しかけなかった。誰にだって知られたくないことや、話したくないことはあるだろう。


*

翌朝、シグルス達は部隊長の部屋に呼び出された。


そこにはやや緊張した面持ちの部隊長がいた。


「なあシグルス。こんなことを聞くのはあれかもしれないが……いったいどんな伝手を持ってるんだ、おまえは」

「質問の意味がわかりかねます」

「まあいい。深くは聞かない方がいいかもしれん。昨夜遅く、上層部から指令が下ってな。シグルス・ジークフリードを含めた三人を特別調査任務に行かせろとさ。」

「調査任務?内容は?」

「それが機密情報なんだとさ。俺にすら内容はなにも知らされてはいない。だから俺から内容をおまえに聞くことすらご法度だ。しかし、こんなことははじめてだ」

そういうと部隊長は、机の中から折りたたまれた地図を持ち出してきた。


「任務の内容ほわからないが、俺が伝えろと言われたのは目的地だけだ」

そういうと地図を開いて、指をさした。

「お前たちの目的地はアルビオンネ地方レザール郡の領主、ユルドリッド家のご邸宅だ」

それを聞いて、エイナが所在なさげに床を見つめた。


「え?ユルドリッドって…...」

「そうだ。エイナ・ユルドリッドの実家だ。」

その場にいる全員の目線がエイナに注がれたが、エイナはやはり目を合わせようとしなかった。


*

エイナは自分の出自について詳しくは語らなかったが、シグルスたちは前から「平凡な農家の娘」だと本人に聞かされていた。

「エイナがお嬢様だったとはな!そんな隠すことないのによ!いやあ、でも言われてみればたしかにそうかもな、エイナは育ちがよさそうだったから」

自分たちのベッドで荷物を片付けているロッドは大きな声で言った。

「俺たちはエイナの家に行ってなにをすればいいのだろうか。そこに行けばなにがある?」

「分からんな。だが今信用できるのはこの情報だけだ。」


荷物をまとめた二人が役場を出ていこうとすると、他の兵士がひそひそと噂をする。

「あいつらがバルドル様から直接のご命令をいただいたというのか?」

「こんなの初めてだぜ。アース神族の戦士長から人間ごときに直接指示があるなんて…」


「なんだか俺たち有名人みたいだな。まったくシグルスはすごいぜ!こんなことまでできるなんて」

ロッドは気楽そうな様子だったが、シグルスはまだ不安を隠しきれなかった。

あの占い師は信頼に値するのだろうか。それにそんな軍上層部と関係性を持っているなど、本当にただの占い師とは思えない。


シグルス達が街を出発したのは、ちょうどお昼になろうという頃だった。

街のはずれまでくると、ロッドがふと足を止めた。

「ん?なんだあれ?」

ロッドはそういうと民家の小さな石壁に駆け寄った。

「おい!ここになにか書いてあるぞ!」

三人が近づくと、たしかにそこにはナイフかなにかで文字が刻まれていた。


『わたしの指示は理解できただろう。おまえたちはユルドリット侯爵の屋敷へ向かえ。わたしにもその先はわからないが、それしか方法はない。そこでヴァルド・ユルドリッドの研究を調べろ。彼の”死の研究”は役に立つだろう。それから、シグルス、おまえもヴァルドの研究が必要になるはずだ。とりあえずそこまでは視えている。そこから先はまた指示を出す。じゃあな。』


「アヤからの伝言か……」


「ロッド、おまえはこんな小さな文字が遠くから見えたのか」

「ん?いや、見えたわけじゃないんだが、なにかあるような気がして。うーん、うまく説明できないな」


これもあの占い師の不思議な能力か。それにあいつが言うには、その研究とやらが必要みたいだ。もしかしたら、白い文字に関する情報も得られるかもしれない。

道沿いに歩く三人の背中が、丘の向こうへ消えていった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!


実はここで1章が終わり!ここから2章です。

エイナの呪いとはなんなのか?シグルスの能力の謎は?

まだまだ疑問は尽きませんが、温かく見守っていただければと思います!!

それでは2章でお会いしましょう!


最後にはなりますが、評価・ブクマ、レビューなど、反応をいただけると嬉しいのでぜひぜひお願いします!

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