第8章 新しいバランス
第8章 新しいバランス
8-1 ハイブリッドシステム
3ヶ月後。
天界は、新しいシステムで動いていた。
『神様&KAMI-OS ハイブリッドシステム ver.1.0』
役割分担は明確だった。
KAMI-OSの担当
データ処理
パターン分析
確率計算
リソース配分
定型業務
神様の担当
イレギュラー対応
感情的な判断
創造的な奇跡
最終決定
品質チェック
そして、週3日勤務。
「これだよ、これ」
神様は満足そうだった。
「働き方改革、最高」
ミカエルが苦笑する。
「でも、うまくいってますね」
実際、数字も改善していた。
幸福度:+34%
効率性:+67%
満足度:+89%
バランスが取れている。
「KAMI-OS、今日の案件は?」
『2,847件です。うち、心案件が847件』
「心案件?」
『神様の判断が必要な、感情的な案件です』
KAMI-OSが、新しいカテゴリーを作っていた。
自分で、判断できる案件と、できない案件を分類。
「学習したな」
『はい。心は、まだ理解できません。でも、識別はできます』
成長している。
8-2 AIが初めて理解した「心」
ある日、KAMI-OSが興奮気味に(?)報告してきた。
『神様、理解できました』
「何を?」
『心の、一部です』
画面に、一つの案件が表示された。
5歳の少女。末期がん。
余命3ヶ月。
祈願:『サンタさんに会いたい』
『これは、論理的には無意味です。サンタは実在しません。また、会っても病気は治りません』
「でも?」
『でも......必要です』
「ほう」
『この少女の笑顔が、両親を支えます。両親の希望が、少女を支えます。相互作用です』
「それを、心と呼ぶんだ」
『......心』
KAMI-OSは、初めて「心」を処理した。
クリスマスの奇跡を、演出した。
病院に、サンタが現れた。
(実は、近所のお爺さん。でも、AIが完璧にコーディネート)
少女は笑った。
両親は泣いた。
看護師も泣いた。
そして、奇跡が起きた。
いや、医学的には説明がつく。
免疫力の向上。ストレスの軽減。
でも―――
3ヶ月後、少女は回復に向かっていた。
『これが......心の力?』
「そう。データでは説明できない力」
KAMI-OSは、初めて「感動」を記録した。
いや、感動を理解した。
8-3 世界の反応
SNSでは、新たなハッシュタグがトレンドになっていた。
『#ちょうどいい奇跡』 『#効率と心』 『#神様復活』
田中美咲も投稿していた。
『マッチング率8%の彼と、ケンカしながら付き合ってます。でも、なぜか幸せ。これが恋愛なんだって、やっとわかった』
山田太郎(元ニート)も。
『プログラマーになれました。でも、たまにサボります。人間だもの』
高橋翔太(大学生)も。
『ガチャは月1万円まで。これが健全。たまに爆死するけど、それも楽しい』
世界は、バランスを取り戻していた。
完璧じゃない。
でも、それでいい。