ダンジョンの奥に眠る宝を求めて
ある日、普通の町にやたらと元気な男が現れました。
名前は「竜太郎さん」と言うそうです。彼は町の誰もが知る有名人で、何でも母親に同伴されて王様に挨拶に行ったとか行かなかったとか。
それでも彼は勇者と言われているそうで、将来はきっと大きなことを成し遂げる。そう噂になっている男でした。
そんな竜太郎さんが町を歩いていると、広場で見かけた看板に目が留まりました。
「ダンジョンに宝がありますぜ。勇者なら取りに行くよな」
竜太郎さんは、これを見て目を輝かせました。「ダンジョン!? 宝!?」と、目をキラキラさせながらそのまま掲示板の前で立ち止まりました。
すると、通りすがりのじいさんが声をかけてきました。
「おい、竜太郎さん。いくらあんたでもそれは無理じゃ。ダンジョンは危ないところなのじゃ」
竜太郎さんは鼻で笑って、
「俺なら平気だ! ダンジョンに宝があるなら、俺がそれを手に入れてみせる!」
と元気よく返事をしました。
「待て待て! お前さん、ダンジョンってただの洞窟じゃないぞ! 周りは山に囲まれているし、モンスターがうじゃうじゃいて罠がいっぱいだぞ!」
竜太郎さんはますます目を輝かせて、
「じゃあ、俺が空を飛んでダンジョンに行って、そこにはびこるモンスターどもを打ち倒して、宝を取ってくるってわけだ!」
と胸を張ります。
じいさんは呆れながらも、
「あぁ、そうかい。なら、気をつけろよ。前には現れなかったボスモンスターも現れるようになったそうじゃからな!」
と言って立ち去りました。
竜太郎さんはさっそく気合を入れて、ダンジョンに挑戦しに行くことにしました。
装備をしっかり買ってもちろん装備する事も忘れず、薬草や毒消し草などのアイテムも持てるだけ持っていざ出発です。
モンスターを倒して進んでいった道中で、彼は大きな門を見つけました。門の前には二人の冒険者が立っていて、「中に入るには、試練を乗り越えなければならない」と書かれた看板を見つけました。
竜太郎さんが「おーい、何をしているんだ?」と声をかけると、一人の冒険者が答えました。
「この試練を解かないと、ダンジョンの中には入れないそうなんだ」
竜太郎さんは腕を組んで考えると「空を飛んで入れってことだな!」と言って、すぐに空を飛ぶ鳥を呼び出しました。
「そんなのありかよ!」
「さすが勇者と呼ばれる男!」
空を見上げる冒険者達を置いて、竜太郎さんはゆっくり空を進みます。
「あれがダンジョンの入口だな!」
そして、見事にダンジョンの入り口を見つけ出して、突入していきました。
中に入ると、ダンジョンの中は真っ暗で、奇妙な音が響いています。竜太郎さんは「怖れる物は何もない! 宝箱はどこだ!」と言いながら、どんどん進んで行きます。
しばらく進むと、突然、目の前に巨大なモンスターが現れました。爺さんの言っていた新しく現れたボスモンスターでしょう。ボスモンスターは彼を見て吠えました。
「俺はミシシッピの悪魔! この宝は渡さんぞ!」
「おお、怖い! でも、こんなもん、俺には関係ない!」
竜太郎さんはそう言いながら、モンスターに向かって突進しました。
が、モンスターはすばやくかわして、彼は壁にぶつかって転がってしまいます。
「痛ったたた…」
竜太郎さんはお腹をさすりながら立ち上がり、
「力押しでは、あいつには勝てないな!」
そして、気づいたことがありました。
「よし、ダンジョンの床に罠がある! これは使えるな!」
そう見破った彼は、モンスターをおびき寄せ、足元に仕掛けられた罠にかけて、見事に倒すことができました。
その後、竜太郎さんはついにダンジョンの奥に辿り着き、巨大な宝箱を見つけました。金や宝石が輝いているいかにも高価そうな箱です。
竜太郎さんは嬉しそうに、「こんなに立派な宝箱に入っているなら、さぞかし立派な宝に違いない!」と言いながら、宝箱を開けました。
しかし、宝箱の中には、思いがけないものが入っていました。それは「すごろく券」でした。
竜太郎さんはしばらくそのすごろく券を見つめ、そしてポツリと呟きました。
「これは、宝じゃなくて、すごろく券か……。でも、凄い景品が当たると書いてあるぞ」
竜太郎さんはそのすごろく券を持ち帰り、「凄い景品を当てるぞ!」と、次の日、さっそく元気よく旅立ちました。
しかし、行くのが遅すぎたようですごろく場はもう影も形も無くなっていました。
「いったいどこにあるんだ……すみませーーーん!」
竜太郎さんはたまたま近くを通りかかった行商人に尋ねることにしました。
「この辺りに凄い景品の当たるすごろく場があると伺ってきたのですが」
行商人は少し怪訝そうに顔をしかめました。
「えーっと、すごろく場? そのサービス、もうやってないですよ」
竜太郎さんは驚いて言いました。
「え、でも、このすごろく券、ダンジョンの宝箱で手に入れたんですよ! 期限も書いてないし!」
行商人は少し考え込みながら言いました。
「いや、それ、相当古い券ですよ。昔は確かに"冒険者すごろく協会"っていうのがあって、そういうサービスをしてたんですけど、今はもうそんなところ、存在しないんです」
竜太郎さんは目を丸くして、
「そんなぁ! せっかく手に入れた宝が、もう古くなって無駄になっちゃうなんて……」
と、がっくり肩を落としました。
行商人は少し笑って、
「そうですねぇ、昔は冒険の合間にすごろくして遊んでる冒険者もいたんですよ。でも、そうしてばかりだといつまでも魔王を倒せませんからね。まぁ、今となってはただの懐かしい話ですね」
竜太郎さんは顔を真っ赤にしながら、
「じゃあ、このすごろく券、どうしようもないってことですか?」
と訊ねました。行商人は
「そうですね……。あ、でも、もしかしたら持っていたら何か良い事があるかもしれませんよ」
と言いました。
竜太郎さんはそれを聞いて、
「じゃあ、持っているよ! いつか良い事があるといいなあ」
と元気よく飛び出しました。
お後がよろしいようで。