第2話『復讐の羽音』 (後編)
「……こうなったら、最後の砦を作るしかない」
加奈が、部屋のドアをバタンと閉めながら叫んだ。
妖精たちは空を飛び回り、壁や天井をつつき、攻撃の機会をうかがっている。
通気口からはまだ補給部隊がにゅるにゅると侵入中。完全に籠城戦の様相を呈していた。
「梨花! バリケード作るぞ!」
「わかった。ぬいぐるみと教科書どっちを盾にする?」
「使えるもの全部!! 制服の夏服も犠牲にしていい!!」
二人はベッドをドアに押し付け、クローゼットの板を外して補強。
机や衣装ケースを積み上げ、即席の要塞が完成した。
「ふぅ……。なんとか……防げてる?」
「たぶん。今のところ正面から来てないし」
その時、部屋の外から――
「制圧完了まで、あと……6分」
「え!? カウントダウン始まったんだけど!? タイムリミットある系!?」
「これはあれだ。完全にラストステージ前のイベント戦だ」
「嫌なリアリティ出してこないでえぇぇ……!!」
加奈は床に崩れ落ち、スナック菓子の空袋を抱きしめた。
もう一歩で現実逃避ゾーンに沈みそうだった――そのとき。
──ピンポーン♪
「……え?」
インターホンの電子音が、玄関から響いた。
二人が顔を見合わせる。
「こんな状況で……来客……?」
加奈はおそるおそる、のぞき窓のモニターをつけた。
そこには――
スキーゴーグルを額にかけ、赤ジャージをたなびかせ、木刀を背に背負った少女の姿があった。
「……美穂……!!」
インターホン越しに、力強く叫ぶ。
「我が盟友よ、ついに共に戦う時が来たな……!」
「いや絶対、話聞いてなかったでしょ!? なんで“盟友”扱い!?」
「扉を開けよ! 我が運命を共に刻まん!」
「詩的に言えば乗り切れると思うなぁぁぁああああ!!!」
部屋の天井では妖精たちが陣形を組み始めていた。
小さな剣がきらりと光り、火球が浮かび、空気がぐぐっと重くなる。
加奈は叫ぶ。
「美穂! 入ってきてぇぇ!! 残り……あと5分っ!!」
──果たして、芹沢美穂は妖精軍団に通用するのか!?
次回、バリケードの中で戦いが始まる!
→ 第3話『第一防衛線・押し入れ前線』へつづく!